働くために必要な「観察力」を開花させるには?
~相手の背景を汲み取る大切さについて
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2023.4.14
私は、ある体験をしたことで、「なぜ、相手はそんな言動をしたのか?」という背景が少しずつ見えてくるようになりました。
これは、コミュニケーション能力が高い人が無意識にやっていることではないかと思います。
今回は、相手を理解するために必要な「観察力(人の背景を汲む力)」を私がどのように身につけたのかをお話しします。
執筆:中川 夜 Yoru Nakagawa
きっかけは、ある日、先輩が気付いてくれたこと
私には以前、「物事を悪い方向に考えてしまう」という困ったクセがありました。
「なんでそんなに悪い方に考えるの?」
ある日、一緒に仕事をしていた先輩に聞かれたことをきっかけに、自分でも「なんでだろう?」と考え、そのことについて先輩とも話し合うようになりました。やがて先輩に
「中川さんには、ネガティブな方向に考える習慣ができてしまうだけの『原因や背景』があるのだから、仕方ないよ」
と言われた時、とてつもないほどの衝撃を受けました。
同時に、とても嬉しくて、安心しました。その時のことは今でも忘れられません。
「なぜ、嬉しかったのか?」
「なぜ、あんなに安心できたのだろう?」
その後、折に触れては何度も何度も回想して、「ほんとうにどうしてなんだろう?」と答えを探していました。
その答えは3年後、突然わかった
それから3年ほど後、全く別の場所で、同じような経験をしました。
その頃、私はある人の言動が気になってしょうがないことがありました。お互いの腹の探り合いや早合点が重なり、関係が気まずくなってしまったのです。
「どうしよう?」と悩み、いろいろと考えた後で、彼の言動や振る舞いの一つ一つを「なぜそんな行動をしたのか?」と、とことん振り返りました。これまで交流した時間の中から、可能な限り、想像を働かせました。
その結果、導かれた憶測から、
「おそらく、彼にはこういった事情や経緯があり、今の考え方になったのでは。その結果、私に対して警戒するような言動をするのは仕方がないかもしれない」
と納得しました。この想像がどれだけ合っているかは推してはかるのみです。
でも、その仮説を踏まえた上で、
「本音を言うと傷つきましたが、今は気にしていない。むしろ、誤解させるようなことをしてごめんなさい」
と伝えました。
伝えた後から今現在も、彼との関係は悪くはないので、私の憶測は間違ってはなかったのだと思います。それどころか、彼からは(勘違いではなければ)、嬉しそうな笑みを向けられることが増えたのです。
「ひょっとしたら、私が背景を理解しようとしたことが、それほどに嬉しかったのではなかろうか?」
かつての自分が、先輩から背景を汲んでもらったことで「絶対的な安心感」を得たのと同じように。
その後も変わらず、彼は私に対して、笑顔で接してくれています。
そして、「観察力」が開花した
今でも、3年前の「先輩が自分の背景を汲み取ってくれたことが、なぜそんなに嬉しかったのか?」ということの説明ができません。
「ただただ嬉しかった!」という事実だけがあって、「なぜだろう?」と思いを巡らせている間に、別の一人の人を喜ばせることができました。
その二つの事実の関連は、私の中で何にも代え難い大切ものになりつつあります。
偶然かもしれませんが、私の中では「やっぱり、先輩がしてくれたことは自分だけではなく、どんな人にとっても嬉しいことなのかもしれない」と更なる思いが深まりました。
それ以降、「相手は今までどんなことがあって、今に至っているのか?」という視点を持つようになりました。
見た目から、表面上の印象で決定するのではなく、一つ一つの行動にも、その人を形作る「今」があるのだと思うようになりました。
もちろん、そこに至るまで、数々の失敗もありました。トライ&エラーで試行錯誤の日々でした。
それでも、いろんな思いを経験して生きたデータが積み重なって、その上に、二つの経験が重なるという偶然を経て、私の「観察力(人の背景を汲み取る力)」が開花したのではないかと推測しています。
「観察力」は働く上で、必ず武器になる
私の場合は、先輩のおかげなどで「観察力」が開花しましたが、もしかしたら誰にでも、その力はあるのかもしれません。
飽くなき探究心で「なぜ、この人はこういう言動をしたのだろう?」と突き詰めて想像をすることで、見えてくる背景がきっとあります。
それは、相手との信頼関係を築く上でとても大切なものです。そして、どんな職場でも活かされるのではないでしょうか。
参考になれば幸いです。