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社会人デビューされる障害者の皆さんへ 全盲の私から伝えたい「お好み焼き精神」の話

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2023.3.16

4月から社会人になられる障害者の皆さん。今、期待と不安に胸を高鳴らせていらっしゃる頃ではないでしょうか。そこで先天性全盲の私から、ぜひエールを送りたい。そんな思いでこのコラムをつづります。私が働く中で感じた大切なことを共有してみようと思います。

執筆:山田 菜深子

4月から社会人になられる障害者の皆さん。今、期待と不安に胸を高鳴らせていらっしゃる頃ではないでしょうか。

そこで先天性全盲の私から、ぜひエールを送りたい。そんな思いでこのコラムをつづります。私が働く中で感じた大切なことを共有してみようと思います。

のほほんと日々を送ってきた私の意見なので参考になるかどうかわかりませんが、よろしければお付き合いください。


私たちもお好み焼きのように

突然ですが皆さん、お好み焼きは好きですか?私は大好きです。今、大阪に住んでいるのですが、大阪のお好み焼きってやっぱり最高なんですよねー!

フワフワの生地。シャキシャキのキャベツ。カリカリの豚肉。プリプリのエビ。そして香ばしいソース。まろやかなマヨネーズも欠かせません。もう想像するだけでお腹がすいてきませんか?

味も食感も違う具材たちがそれぞれの役割を果たし、絶妙なハーモニーを醸し出しているお好み焼き。その1枚に、美味しさや楽しさがいっぱい詰まっている。何と素晴らしい料理なのでしょうか!

って、どうしてこんな話を始めたのか、不思議に思われましたよね。実は私、会社員として働いていた頃、ふと思ったんです。そうだ、私たちはお好み焼きのように働けばいいんだ、と。


得意なことをしっかりやろう

目が見えない。光も全く感じない。そんな要素を持つ私には、苦手なことやできないことが本当にたくさんあります。

それでも何とか会社員になることはできたのですが、最初は自信が持てませんでした。周りに迷惑ばかりかけてしまうのではないか。要らないと思われてしまうのではないか。とにかく心配だったんです。

でも、働くことに慣れてくると、私の内面は大きく変化しました。大切なことに気が付いたからです。

大切なこととは何か。それは、「得意なことをしっかりやればいい」ということでした。以前のコラムで「自立」について書きましたが、その考え方と同じでいいのだと確信できたわけです。

会社では、さまざまな障害を持つ仲間と一緒に働いてきました。話を聞いてみると、彼らもみんな苦手なことやできないことをいろいろと持っているようでした。ただその分、強みや魅力的なところもたくさん持っていた。

話すのが得意な人もいれば、話を聞くのが得意な人もいる。場を盛り上げる力を持っている人もいれば、集中力を発揮して1人で黙々と細かい作業に取り組める人もいる。

一人ひとりがそのキラッと光るところを存分に活かして働けば、何が起きるか。とってもよいものが生み出せるんです。日々の仕事をこなす中で、そのことを学びました。

いろんな性質を持つ人が、それぞれ得意なことを一生懸命やる。これってまさに、お好み焼きと一緒ですよね!

みんな違うからいい

お好み焼き。それは、多種多様な具材が混ざり合うからこそ美味しくなる料理。みんなそれぞれに存在感があるけれど、お互いにその魅力を引き立て合っていて、食べる人に満足感を与えています。

私たちもそうですよね。働く上で「みんな同じでなければ」「何でもできるようにならなければ」と考えがちですが、それが正解とは限らない。私は、みんな違うからこそいいのだと感じています。

できないことがあれば、できないとはっきり伝えればいい。助けを求めればいい。そして胸を張って自分の役割を果たせばいいと思うんです。

「苦手を克服して今の自分を変えるんだ」と努力するのも1つの手ですが、そのままの自分を輝かせるのも素敵なことだと思うんです。

私はそう考え始めたことでとっても気が楽になりました。できることを一生懸命やり、できないところはお願いする。そうすれば楽しいし、達成感も大きい。役に立てている、必要とされていると感じられる。その喜びは格別です。

会社員としての仕事は1年前に辞め、別の道に進んでいる私ですが、この「お好み焼き精神」は今も変わりません。よいことばかりではありませんでしたが、会社での経験は有意義なものだったと思っています。


社会人だからこそ得られる心地よさがある

社会人として生活していく。これってやっぱりエネルギーの要ることだと思います。でもその一方で、それまでとは違う心地よさがあるのも確かです。

さまざまなことを自分自身で判断し、選ばなければならない。学生の頃よりもそんな機会が増えます。その責任は重大。でもその分、自由です。自分自身で判断して選んでいいのだから!

一度きりの人生です。やりたいことに向かって、強みを活かせる場所に向かって、自分のペースで進んでいってくださいね。応援しています。皆さんの社会人生活が充実したものになりますように!

1987年生まれ。先天性全盲。「必死に頑張らない」がモットーであるが野望は大きく、世界を変えたい思いでライター活動を行っている。Amazon Kindleにてエッセイ集『全力でゆるく生きる~全盲女子のまったりDays~』を配信中。またブログやYouTubeで全盲当事者のリアルな日常を発信中。

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