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採用企業向けウェビナー第7弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーを開催しました。

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2023.3.10

こんにちは。多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねる代表の中塚です。
採用企業の皆さまの声をもとに開催された第6弾 「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーに続き、2月15日に開催された第7弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。

執筆:パラちゃんねる運営事務局

はじめに

多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねるは、「誰もが特性を活かせる、多様な選択肢がある社会」を目指し、障がい者雇用の活性化を図ることで「働く」側面から社会課題の解決に挑戦しています。

2022年1月からスタートした求人サイトでは、日々、全国の採用企業の皆さまより「当事者のリアルな現状をもっと知りたい」という声が寄せられています。

  • 当事者の障がい特性が正直わかっていない
  • 当事者が実際にどのようなポイントで求人を見ているのかリアルを知りたい
  • どんな働き方をしているのか、直接聞いてみたい
  • 今働いている社員には聞けないし、、、

今回は、第6弾となる「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。

>ファシリテーター
NPO法人Collable(コラブル)の代表理事 山田小百合さん。障がいのある人たちや多様な人との共創の場をつくるCollable(コラブル)は、ワークショップを通じて「インクルーシブデザイン」の普及や、障がいの有無をこえた場作り、それらの啓発活動を行っています。

>登壇者①
発達障がい(ADHD、ASD)のある、マーチンさん。新卒で入社した後に発達障がいの診断を受け、障がい者雇用として卸売業へ転職。その後、営業事務、配送業務、倉庫作業と9年間の就業を経て現在は就労移行支援事業所で支援員を勤めています。

>登壇者②
身体障がい(左半身麻痺、高次脳機能障がい)がある、山田稔さん。30歳で脳出血により中途障がいとなり、入院・リハビリ生活を経て障がい者雇用として大手建材メーカーで働きながら、3人の子育てに奮闘中です。

セミナー当日は匿名開催ということもあり、障がい者雇用に関わるさまざまな方々に参加いただきました。

  • はじめて障がい者採用をするので当事者の方の生の声を知りたい
  • 求人票や選考プロセスで印象的だった事例を知りたい
  • 求人票や選考プロセスで印象的だった事例を知りたい

障がい者雇用を推進している企業の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

マルチタスクに見える営業事務が可視化でシングルタスクに。

マーチンさんは新卒で農協へ入社しジャガイモの種芋やコメの配送や資材の販売促進事業などに携わられた後に発達障がいの診断を受けています。診断を受けるに至った経緯を教えてください。


農協を退職する2ヶ月ほど前に診断を受けました。複数の種芋や資材を顧客の注文に応じて最短ルートで配送することが求められる中で優先順位付けが上手くできず配送物の過不足が出たり、配送を忘れたりなどのミスを繰り返していて働き続けることに不安を感じていました。以前から発達障がいという名前は気になっていたのでネットで「岐阜県 発達障がい」で検索して見つけた障がい者就業・生活支援センターに相談した結果として精神科に繋がったという流れです。


発達障がいの診断後、就労トレーニングを経て障がい者雇用として営業事務として入社しています。卸売業での発注・仕入れ業務と聞くと、大量に届く注文伝票をシステム入力しながら営業や顧客と納期や在庫について電話対応があるイメージが浮かびます。完全なマルチタスク業務で特性に合っていないのでは、と感じてしまいますが実際はどうでしたか?


障がい者雇用のため予め操作マニュアルはありましたがやはり不安でしたね。ただ、業務に入ってみると前職と異なり明確な納期があり優先順位付けに迷うこともなく、注文伝票も紙ベースでチェックしながら処理ができたり、対応済みのハンコもあって業務が可視化しやすく、結果的に長く働くことができました。


その後、部署異動により配送業務の経験を経て現在の就労移行支援事業所の支援員として転職をされています。前職と比較して現職の働きやすさはいかがでしょうか?


職場は自分の意見を頭ごなしに否定されることなく、貴重な意見として参考にしてもらえるため心理的安全性はかなり担保されています。また、先輩方のロールモデルがあるため将来像もイメージしやすく、日々刺激を受けながら前向きに働けています。以前までは質問に対しネガティブな反応をされることも多く、日々不安感を抱えていましたが、現在は質問や意見は全て事業所の改善に繋がるとしてポジティブに捉えてもらえるため落ち込んだり苦しむ機会が減った気がしています。


発達障がいの特性から一見すると苦手そうな業務だけど、やってみると意外と支障がなかった。障がい特性への先入観がもたらす潜在的な職域の減少があることを改めて認識する機会となりました。

時間単位の有給制度が重度障がい者にとっての働きやすさに。

山田稔さんは30歳で脳動脈奇形(AVM)が原因とする脳出血により左半身麻痺と共に高次脳機能障がいになっています。中途障がいとして働く中での困りごとは何があるのでしょうか?


高次脳機能障がいは脳出血の部位により発症する障がいがかなり異なります。私の場合は、短期記憶障がいと注意障がいが顕著に見られ、短期記憶障がいは例えば電話応対で保留ボタンを押すと同時に誰からの電話で誰宛かも忘れてしまい取次ぎができないなど直前の記憶が出なくなり、注意障がいは左側が認識しづらくなり、食事などもご飯の左側半分に気づかずに完食したつもりになるなど日常生活でも仕事でも困りごとばかりです。


リハビリから2年間の職業訓練校を経て障がい者雇用として福祉学校の運営会社へ入社、その後に大手建材メーカーに転職をされています。転職までの経緯を教えてください。


1社目は高次脳機能障がいの特性について理解がなく、また、私自身も障がい特性についてまだ気づけていない点もあり、電話応対など至るところで怒られていました。10名ほどの少人数の事務所だと一人でも障がいに対して理解がないと心が挫けるんですよね。そんな中でハローワークが主催する合同面接会の機会があり応募したという流れです。


転職した大手建材メーカーではどのような業務に従事されているのでしょうか?


現在はフル在宅で建材商品を工場から出荷する際に同封する商品証明書、品質証明書の作成と送付を随時対応しています。高次脳機能障がいは100点がとれない障がいとも言われており、業務においては常にミスを想定して同僚にダブルチェックをしてもらいながら従事しています。


現在の大手建材メーカーでは障がい者雇用として7年目を迎えています。長く働いている要因はどのような点にあるのでしょうか?


従業員数1万5千人以上のため既に障がい者雇用の基盤があり、上司が受け入れ前に障がいについて勉強してくれたことや前職の失敗を踏まえて何ができて、何ができないかを明確に話し合えたことは働きやすさに繋がっています。また、時間単位の有給制度は突発的な通院や子どもの用事にも対応しやすく長く働きたい動機付けになっている気がします。


重度障がいのある当事者を会社として受け入れるときに自立ではなく共同を前提とした組織づくりが求められ、障がい者雇用と一括りにはできないと改めて感じました。

採用担当者のぶっちゃけ質問

セミナーでは参加された採用企業の皆さまからも多くの質問がありました。

Q.早期離職を予防するためのアドバイスがあれば教えてください。
>山田稔さん
重度障がいだと病院とは切っても切り離せない生活をしています。主治医のスケジュールもあって明日通院しないとということも多く、有給が利用しやすい制度設計は大きな要因になる気がします。

>マーチンさん
障がい者雇用求人はざっくりとした募集が多く、得手不得手のミスマッチが発生しやすい気もします。例えば事務職なら業務や役割において何を期待しているのかなど採用枠の意図があるとミスマッチも減るのかもしれません。また、積極的にフィードバックがあるとモチベーションも保ちながら前向きに仕事ができますし、就労移行支援などの外部の専門家も巻き込めると定着率は上がっていくと思います。

登壇者からのメッセージ

さいごに登壇者より感想をいただきました。

>マーチンさん
心地よくパフォーマンスを発揮しやすい環境についてお話しさせていただきました。現実では突然障がい者になったり、実は既に障がい者だったということも無いとは言い切れません。そのため、働きやすさの課題は障がい者だけでなく社会全体で考えていく課題だと思います。職場での配慮は障がい当事者だけでなく、介護・育児・病気やケガで通院しながら働く人にとっても有難い配慮なはずです。誰にとっても働きやすい社会になることをこれからも心より願っております。


>山田稔さん
自分自身が障がい者雇用で働き始めて7年という節目を迎え雇用当初の自分が会社にとって役に立つ存在なのかと悩み、苦悩したことをもっと軽い気持ちで障がい者雇用の採用する会社にとっての大きなメリットとして伝えられたらと思い登壇しました。言葉ではうまくつたえられなかったかもしれませんが、多様な人がいるからこそ新しいものが生まれるということが伝わったらうれしいです。障がいは個性だということをわかっていただきたいです。

セミナー参加者のアンケート結果

■セミナー満足度
良かった:66.67%
普通:33.33%

セミナー満足度の理由をお聞かせください。

  • 当事者の方のリアルな声を聞くことができた点です。
  • それぞれの方がお話されている際に記事も見ることができたので、より理解が深まりました。
  • 時間単位の有給取得の背景に病院主体の通院タイミングがあることを知り、非常に驚きました。
  • 「時間単位の有給があれば早期退職が少なくなるだろう」のように、障がいのある方が何を会社に望んでいるのかに時間をより多く割くと、リスナーである人事担当者の満足度がより高くなると思います。
  • 障害者雇用で働くにあたり、やってほしいことや、失敗などの実際にあった話を聞けて良かった。

パラちゃんねるでは、採用企業の皆さまと障がいのある当事者と共により良い障がい者雇用の機会を増やしていきたいと願っています。

困りごとがあればお気軽にご質問ください。当事者の意見をもとに回答をさせていただきます。
障がい者採用の困りごとを質問【ロクイチ掲示板】

第8回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」

障がい者雇用担当とはいえ、十分な知識や経験がある方ばかりではなく、担当になったばかりの方々も多くいます。ネットや参考書にある情報だけにとらわれた雇用促進では、当事者とのミスマッチを助長し兼ねず、働きがいのある雇用促進と本質的な多様性の広がりは実現できません。

次回セミナー(無料)の申込はこちらから
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第8回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」

日時:2023年3月15日(水)12:00-13:00

ファシリテーター:NPO法人Collable 代表理事 山田小百合
■ゲスト:
>山田菜深子さん(視覚障がい)
先天性の全盲で、障害者雇用でフル在宅にて8年間テープお越し業務を経て現在はフリーランスとして活動中。「必死に頑張らない」がモットーであるが野望は大きく、世界を変えたい思いでライター活動を行っている。
執筆コラムはこちらをクリック

>月尾いるさん(広汎性発達障がい:ASD)
24歳で広汎性発達障害の診断を受け、愛着障害の特性もありHSPのような症状が出ることも。現在は障害者雇用でフル在宅にてオウンドメディアでのライティング業務に従事している。
執筆コラムはこちらをクリック



セミナーは匿名・画面表示なしでの参加を推奨しております。
肩書にとらわれず、気軽に自由に質問できる場を提供しています。
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私たちパラちゃんねるは、当事者とのリアルな対話の場を提供することで採用担当者と共に障がい者雇用を促進していきます。ご参加お待ちしております。

多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。

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