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第2回「障がい者雇用のあるある座談会」~上司や職場の人間関係(理解・配慮)~

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2023.3.12

こんにちは!パラちゃんねる運営事務局です。
障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」への情報提供として、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として2023年2月26日(日)に第2回「障がい者雇用のあるある座談会」を開催しました。当日は、Twitterスペースに153名の方に参加いただきました。

執筆:パラちゃんねる運営事務局

はじめに

2022年1月にオープンした求人サイト「パラちゃんねる」では、これまで3000社を超える障がい者雇用担当者と対話を続けてきました。

  • 障がい者雇用のはじめ方がわからない
  • 業務の切り出し、受け入れ部署の開拓ができない
  • 相談する場所がない
  • 新卒採用と兼業で手が回らない
  • 社長・役員が障がい者雇用にネガティブである etc

障がい者雇用担当者は、役員と現場の狭間で理想と現実のギャップに日々悪戦苦闘しています。教育課程での構造的分断がある日本においては「働く」を通じた共生社会の実現が求められ、旗振り役となる障がい者雇用担当者の積極的な社内活動が必要不可欠です。

私たちは、障がい者雇用担当者を後押しするチームとして障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」を形成し、職場での雇用促進に向けて全面的にサポートすることとしました。

今回は、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として開催された第1回「障がい者雇用あるある座談会」の活動報告に続き、第2回「障がい者雇用あるある座談会」となります。

>中塚翔大(パラちゃんねる オーナー)
多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」を運営し、障がい者雇用を軸に誰もが特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を目指し活動している。

>山田小百合(NPO法人Collable 代表理事)
障がいのある人達の社会参画と、障がいの有無を超えた学びと共創の場づくりを手掛け、インクルーシブデザインの普及や、障がいのある学生のキャリア学習支援事業を運営中。

>豆塚エリ(詩人・エッセイスト 兼 介護事業経営者)
16歳で飛び降り自殺を図り頚髄損傷(車いすユーザー)に。現在は「死にたい気持ちが消えるまで」の書籍を手掛け、詩人・エッセイストとして活動する傍ら介護事業の経営も行う。

当日はTwitterスペースに153名の方に集まっていただき、様々なコメントを頂きました。当日の音源はYoutubeでも配信しています。

どこから「わがまま」でどこからが「配慮」?

職場の人間関係における課題や困ったと思うエピソードはありますか?


>豆塚エリ
どこからがわがままでどこからが求めても良い配慮なのかがいつも悩みますね。人それぞれ基準が異なり、甘えやわがままと思われないように申し訳なさを前面に出し続ける必要がある場合や当たり前だよと対応してくれる場合もあって、過去の職場でしんどかったのは上司がわがまま、甘えだと言ってしまう人でした。足手まといになってるのでは、甘えてると思われたくない、できるだけ障がい者として見られないように接しないと当事者は精神的に負担になって退職することも多いはずです。


>山田小百合
わがままと配慮の問題もそうだし、配慮と遠慮の違いもありますよね。


>中塚翔大
コミュニケーションが可視化されているかどうかと環境設定で捉え方が180度変わる可能性があるよね。日常のドタバタしたオフィスの会話だとわがままと伝わりやすいけど、個別面談なら全く同じ言葉でもすんなり受け入れてもらえたり、メールとかテキストだとまた違う感情が生まれるし。


>豆塚エリ
結果的に当事者が常に伺いながらタイミングを選ぶ必要があって、間違えると互いに良い思いをしないんですよね。


>中塚翔大
障がい者雇用の場合、当初は合理的配慮への義務感があるから擦り合わせが行われるけど、職場で働く中での気づいた必要な配慮は追加でお願いされたと受け止めがちでわがままと伝わる可能性が高いかもしれない。上司や同僚に当事者性があると働く中での配慮も含めて変わっていくと理解できるけど、そうでないとルールに乗せて判断しようとしちゃうだろうね。

定義やルールよりも「当事者性」がキーワードに。


>豆塚エリ
キーマンが1人でもいると全然違うのはある。私から伝えるとわがままだけどキーマンが伝えるとスムーズに通るとか。全員が当事者性を持つことは難しくて、現状は宝くじのような状態になってしまっている。


>山田小百合
障がい者雇用に関わらず理解ある上司を囲うというのは物事をスムーズに運ぶために定説化されている気がするけど、思いやり、気遣いってスキルセット何?となって漠然としてしまうんですよね。


>中塚翔大
非上場のオーナー企業あれば世間に従う必要もないし、法律や倫理観などの概観を語っても限界があって、現状の日本において障がい者雇用がスムーズに進むか否かは当事者性がキーワードになる気がする。人事担当が当事者性のある上司や同僚を把握できていたとしたら配属後の定着も大きく向上していくんじゃないかな。


>山田小百合
自分の苦しさや困りごとを他の人のバックグラウンドに照らし合わせれる人は増えたほうが良いよね。共働き、外国人、シニア層とか今後職場に当たり前に増えていく中で、ちょっとしたすれ違いや手間は増えることがあるけど笑い話にできるか、コストだなと思えるかで全然働きやすさは変わっていく。


>中塚翔大
わがままや配慮は定義づけると判断軸ができて安心するけど、一方で定義から外れる人が出るんだよね。例えば、バリアフリー設備がないから車いすは受け入れできないと決めてしまうと当事者の可能性に目が行くことはないし、漠然としておくことで調整がしやすいこともある。定義付けすると対象者においては解決できるけど、全体感でみると大幅にズレていくことになることが多いかも。


>豆塚エリ
障がい知識がないからお断りとなることが多いけど、まずは挑戦させてよと思う。ただ、漠然としてると思いやりある人、ない人問題が登場するからバランスが難しいですよね。そもそも中小企業だと環境配備がないからソフト面に頼ってしまうし、経営的に人員の余裕がないから障がい者なんてとネガティブな感情になりやすいこともあるはず。

その人と働きたいかではなく、その人を受け入れれるか

>山田小百合
人間関係と配慮を結び付けて考えたときに、障がい者雇用においてはコミュニケーションのスタートが配慮事項から始まるのが既定路線な気がする。通常の採用はスキルや経験、貢献できることを中心に合否が判断されるけど、障がい者雇用の場合、配慮事項の確認の方に多いし、学生支援でも顕著で自分がどう働きたいとか、どんなことに挑戦したいとか意志が出てくることが少ないと感じる。


>中塚翔大
確かにどの人と働きたいかではなく、受け入れ可能な人かどうかで面接してるかも。例えば、新卒採用で9月卒業の留学生からエントリーがあったときに、面接後に10月1日入社を認めるか否かの判断をするか、4月1日入社をルールとしてエントリー時点で不合格にするかで可能性は大きく変わる。日本企業は従来的に後者が多いからね。


>山田小百合
こういう障がい種別の人を受け入れたいけど集まらないと相談を受けることも多いけど、本来的には障がい種別は関係なくて、この会社で働きたいと思う人を増やす必要があるよね。


>豆塚エリ
どれだけ自己研鑽をしても、前提として車いすが難しい、トイレが難しい、通勤が難しいとなってしまうとスキルがあっても全く活かせないし、スキルを見てから在宅を許可してもらうだけで可能性がかなり広がっていくと思いますね。

働く障がい当事者同士の多様性の在り方

■リスナーさんのコメント
障がい者同士の関わり方に悩んでいます。

>中塚翔大
働く当事者側の課題も今後増えるだろうね。身体障がいと精神・発達障がいの間でどちらの方が辛い論争が起きるように当事者だからと言って多様性や受容性が高いかどうかは別の話だから。


>豆塚エリ
私が入所した施設も50名中ほとんどが頚髄損傷の括りでたまに脊髄損傷の方がいるくらいで、そうなると同じ障がい同士で集まりがちだし脳性まひの方に対して差別的対応も見てきたし、男女間での差別意識も存在していた。私はそれが嫌でコミュニティから離れたというのもありますね。


>中塚翔大
特例子会社でも障がい種別を分けて働いているところもあれば、一緒に働いているところもあってそれぞれの苦労は伺えますね。評価制度や管理のしやすさ、業務適正などを考えたときにどの手法が一番効率的かというのを思考錯誤している印象はあるかな。

体力が想像以上に落ちている。職場復帰で気を付けたいポイント。

■リスナーさんのコメント
脊髄腫瘍で休職となり復職の相談をしているが技術開発職から事務での復帰を上司が認めてくれず、これまでと同様の業務で同様の働きぶりを求められている。

>中塚翔大
上司が良く理解できておらず、否定していることは多い気がする。一度、職場に訪問して状況を見てもらうなり、定着支援などの外部機関を利用しながらプレゼンしていくことは求められてしまうのかも。


>豆塚エリ
中途障がいで職場復帰するパターンを見ていたが、車いすになって何ができて、何ができないかなど見える範囲では理解できていても、体力面が相当落ちているという視点に本人が気づいていないことも多くて退職に至るケースをよく見てきている。職場復帰の段階で本人も体が以前と異なる点は意識することが大切で、周囲に合わせなきゃ、頑張らなきゃで疲弊することにならないように注意して欲しいな。


>中塚翔大
職場復帰の時って不安もあるけど、業務をやりたい良くも強いはずだよね。できる・できないを可視化して上司に渡すことが第一段階かもしれない。

まとめ

第2回の障がい者雇用あるある座談会は「上司や職場の人間関係(理解・配慮)」について議論を交わしました。

わがままと配慮、配慮と遠慮の違いの感覚的難しさ。障がい者雇用にある採用枠に収めた雇用スタイルや面接の在り方、職場復帰の課題など知らないために起きるコミュニケーションや人間関係のズレなど、障がい者雇用である前に人と人の関わり合いにおいて細かな人間関係の調整の連続が必要であると改めて認識する機会となっています。ルール化しきれない日常の連続を「当事者性」というキーワードが補っていくのかもしれません。

なお、第1回からの障害者雇用あるある座談会の様子はnoteにも纏めていますのでそちらもご確認ください。
次回は、「良い上司、良い職場の共通点は何?」について2023年3月26日(日)に開催をしますので、ぜひ興味のある方は気軽にご参加ください。

多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。

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