PARA CHANNEL Cage

主治医とギクシャク…「カテーテル検査」を受けるメリットとリスクの狭間で迷って

1 1

2023.5.10

超音波検査やX線検査、心電図などでは発見することが難しい心臓・血管の異常を見つけることができるカテーテル検査は画期的なものだと思う。だが、受ける時には少なからずリスクが生じる。だから、受けるメリットとリスクの間で、いつも迷ってしまう。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

信頼していた元主治医はカテーテル検査のリスクを避ける方針だった

先天性心疾患者へのカテーテル検査の勧め方には、医師によって違いがあると感じる。20年以上、診てくれていた元主治医は「よっぽど安全だと思うけど、リスクはやっぱりあるから」と、あまり勧めなかった。

だから、私が最後にカテーテル検査をしたのは、小学4年生の頃。単心室・単心房症の場合、最終ゴールだと言われている「フォンタン手術」の後だった。

超音波検査やX線検査、時には、検査室に用意されている小さな階段を昇り降りして心臓に負荷をかける「運動負荷心電図」も行いながら、元主治医は「諭香ちゃんの心臓は優秀。心配ないよ」と太鼓判を押してくれた。

何か異常が見られたら、リスクを受け入れ、カテーテル検査をしようという元主治医の方針が私はすごく好きだった。

カテーテル検査推進派の新しい主治医とギクシャク…

30歳を間近に控えた頃、主治医が変わり、最初の診察で「長い間、カテーテル検査してないね。今は2~3年に1回くらいするのが当たり前だよ」と言われ、カテーテル検査を勧められた。

私は、前向きになれなかった。カテーテル検査は入院が必要なため、仕事のスケジュールを調節して手術に臨まなければならないからだ。最近では2~4日で退院できると言われているが、体力があまりない私は昔、カテーテル検査後の回復に時間がかったため、余裕をもって仕事を休む必要がある。

私は有給休暇などがないフリーライターであるため、休んだ分、収入がなくなり、生活が苦しくなってしまう。

それに、自分自身が体に違和感を覚えておらず、他の検査でも特に目立った異常が見られないのに、リスクが少しでもある検査を受けることに納得がいかなかった。

自由に体が動くうちは、なるべくベッドにいない生活を送りたい。幼い頃から入退院を繰り返し、フォンタン手術前は息切れして行動範囲が狭かったからこそ、そんな想いが自分のなかにはある。だから、こちらの気持ちに一切耳を傾けず、「元担当医の頃とは時代が変わったんだ」と言い、カテーテル検査を勧められることが嫌だった。

新しい主治医はその後も定期健診のたびに、カテーテル検査を勧めてきた。過度に強要されているように感じた私は耐えきれなくなり、何度目かの定期健診で「受けたいと思ったら、私のほうからお願いするので、それまでは検査の話を出さないでもらえますか」と言ってしまい、主治医とギクシャクしてしまった。

もちろん、主治医が言うように、定期的にカテーテル検査を受け、異常を早期発見できるようにすることにも意味があるとは思う。だが、カテーテル検査の頻度が増えることは、リスクにさらされる回数も増えるということだ。

もし、リスクとされていることが自分の身に降りかかり、カテーテル検査を受けたことを後悔してしまったら…と、私はどうしても考えてしまう。

なお、違う県の病院へ通っている同じ病気の子にカテーテル検査について、担当医からどんな指示を受けているか聞いたところ、その子の場合は「リスクがあるから極力しなくてもいい」と言われているようだった。それを聞き、改めて、カテーテル検査に医師の対する考えは様々なのだなと思った。

医師の意見が分かれていると、私のように主治医が変わった時に方針の違いに悩んだり、病院を変えた時に迷ったりする。先天性心疾患者の症状は個人差が大きいため、なかなか難しいかもしれないが、こんな状態になったり、こうした心配ごとがでてきたりしたら、カテーテル検査を受けてほしいなどのガイドラインのようなものを作り、医師間の意見を統一してほしいと思う。

また、持病を抱えているからこそ、これ以上、体をリスクにさらしたくないという患者の想いにも目を向けてくれる医師が増えてほしい。医師にとっては、“慣れたカテーテル検査”かもしれないが、患者にとって1回のカテーテル検査は、とても重いものだ。

私は「受けたくない」という気持ちを説明しても、主治医に半笑いで流され、悲しかった。そういう想いをする人が減る医療現場にしてほしい。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

このライターが描いた記事

障がい者雇用特化型の求人サイト「パラちゃんねる」新規登録受付中!!

マンガで分かる!採用担当者必見、採用前・面接・採用後など場面別のポイント全部解説! ADHD編

マンガで分かる!採用担当者必見、採用前・面接・採用後など場面別のポイント全部解説! 車いす編

マンガで分かる!採用担当者必見、採用前・面接・採用後など場面別のポイント全部解説! ASD編

LINE 公式アカウント友達募集中! ID:parachannel