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フォンタン患者の最長寿命を目指したい!自分の命が同じ病気と向き合う人の希望になると知って

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2023.5.24

自分の命なんて、どうでもいい。その思考は幼少期から、ずっと頭の中にあった。フォンタン手術を受けた人の最長寿命は50歳くらいだと親や医師から聞いた時から、どうせ長く生きられないのなら、いつ死んだっていいと思うようになった。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

「どうでもいい」と思っていた自分の命への向き合い方が変わった

「死にたい」「消えたい」と口にする誰かには「一緒に生きよう」と声をかけられるのに、自分自身に対しては「生きていこうよ」という言葉をかけられず、命をずっとぞんざいに扱ってきた。

大切な人から「生きてほしい」とどれだけ言われても、自分をないがしろにする気持ちが頭と心から消えない…。それが自分にとって当たり前の日常であり、これから先も抱えていかなければならない苦しみだと思っていた。

だが、数ヶ月前、自分の命に対する想いが少し変わる出来事があった。めずらしく、取材をするほうではなく、受けるほうになり、先天性心疾患者の就労に関して話すことになったのだ。

その際、記者からお子さんが私と同じ単心室・単心房症で内臓逆位であることを聞き、親近感を覚えた。まだ生後間もないその子は私がこれまでに辿ってきた治療と似た道を歩んでいくようで、私たちは記者と取材対象者という垣根を超え、当事者と先天性心疾患の子どもを持つ親という関係性でも繋がることができた。

その記者は一見、健常者のように見える私の姿に自身の子どもの未来を重ね合わせたようで、元気で生きていることを、とても喜んでくれた。その日、私は自分が生きているだけで同じ病気を持つ親や当事者の希望になれることを初めて知り、感慨深い気持ちになった。どうでもいいと思っていた自分の命に、少し価値があるように思えて。

“自分の人生“は誰かの希望になるかもしれない

自分や家族が重篤な病気であることが分かると、ネットの情報や医師の言葉をどれだけ見聞きしても不安が募る。生涯、一緒に生きていかなければならない病気であればなおさらだ。たとえ、「日常生活は普通にできるようになります」と言われたとしても、どのくらいの程度が“普通”なのか、仕事はどうすればいいのか、家庭は持てるのかなど、色々なことが心配になる。

けれど、同じ病気を持っている人がちゃんと生きて生活をしている姿に触れられたら、そうした不安は少し和らいでいく。もちろん症状に個人差はあるけれど、「こんな風に元気な人がいるのなら、自分orうちの子も大丈夫かもしれない」と希望が持てる。そんな小さな希望に、私はなりたいと思った。

そのためには、ちゃんと健康でい続けられるよう、自分の命との向き合い方を変える必要がある。どうせ長く生きられないから…と諦めながら生きるのではなく、誰かの希望になれるよう最長寿命を超えてやろうという意気込みで人生を送っていきたい。

そもそも自分自身に価値を見出せない私にとって自分のために生きることは苦しいことだった。だが、誰かに夢や希望を与えるためだと思えば、自分を今までより大切にできそうな気がする。

ただ、生きているだけで誰かの希望になることがある――。それはきっと、私だけでなく、あなたも、だ。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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