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採用企業向けウェビナー第8弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーを開催しました。

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2023.4.5

こんにちは。多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねる代表の中塚です。
採用企業の皆さまの声をもとに開催された第7弾 「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーに続き、3月15日に開催された第8弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。

執筆:パラちゃんねる運営事務局

はじめに

多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねるは、「誰もが特性を活かせる、多様な選択肢がある社会」を目指し、障がい者雇用の活性化を図ることで「働く」側面から社会課題の解決に挑戦しています。

2022年1月からスタートした求人サイトでは、日々、全国の採用企業の皆さまより「当事者のリアルな現状をもっと知りたい」という声が寄せられています。

  • 当事者の障がい特性が正直わかっていない
  • 当事者が実際にどのようなポイントで求人を見ているのかリアルを知りたい
  • どんな働き方をしているのか、直接聞いてみたい
  • 今働いている社員には聞けないし、、、

今回は、第8弾となる「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。

>ファシリテーター
NPO法人Collable(コラブル)の代表理事 山田小百合さん。障がいのある人たちや多様な人との共創の場をつくるCollable(コラブル)は、ワークショップを通じて「インクルーシブデザイン」の普及や、障がいの有無をこえた場作り、それらの啓発活動を行っています。

登壇者①
>登壇者①
視覚障がい(先天性全盲)のある、山田菜深子さん。大学卒業後、緊急雇用創出事業にて点字図書の仕事に関り、その後、障がい者雇用にて教育関係の企業にて完全在宅勤務で文字お越し業務を担当。8年間の勤務を経て現在はフリーランスでライター、点字講師などを勤めています。

>登壇者②
広汎性発達障害と精神障害(うつ)のある、月尾いるさん。17歳で鬱を発症、24歳で広汎性発達障害の診断を受け、宅急便・メール便の配達、仕分け経験を経て、フリーランスでライティングの仕事に従事。現在は障がい者雇用にてオウンドメディアなどライティングをしています。

セミナー当日は匿名開催ということもあり、障がい者雇用に関わるさまざまな方々に参加いただきました。

  • はじめて障がい者採用をするので当事者の方の生の声を知りたい
  • 求人票や選考プロセスで印象的だった事例を知りたい
  • 現場配属後の配慮について質問したい

障がい者雇用を推進している企業の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

法定雇用率ありきの採用が齎す弊害とは?

山田菜深子さんは、大学卒業後に文字お越し業務をフリーランスで経験された後に教育関係の企業へ障がい者雇用として就職をされています。転職活動はどのように経緯で決断されたのでしょうか?


大学卒業後、都道府県の緊急雇用創出事業にて点字図書に携わる期間限定の仕事を勤めた後に文字お越しの仕事を開始しました。しかし、収入面が安定せず悩んでいた時に、たまたま知人からの紹介があり転職を決意しました。


障がい者雇用として8年間勤務されていますが、具体的な仕事内容を教えてください。


人事部付で在宅勤務プロジェクトがあり、視覚障がい、精神障がい、身体障がいのある7名がネットリサーチチームと文字お越しチームに分かれて業務に従事していました。私の主な業務内容は、社内会議の議事録作成や社内報に掲載するインタビュー記事の文字お越しなどでした。


在宅勤務の場合、上司や同僚とのコミュニケーションが希薄になりがちです。実際に働く中で困りごとはあったのでしょうか?


コミュニケーションの課題とそれに起因して業務量の課題がありました。当初、1ヶ月に1回の定期面談が設けれられていましたが、慣れと共に徐々に頻度も下がってしまいました。また、業務量も濃淡が激しく、暇な時間もありましたが、コミュニケーションが希薄になっていたために業務量や業務の幅を広げていくような能動的な相談ができなかったと感じています。結果的に退職を決断しましたが、ライター活動や点字講師など発信する立場になりたいという動機の反面には暇なのに出勤しなくてはいけないという心理的負担がかなりあったとと考えています。


在宅勤務の場合、社内の状況を把握できず、能動的な行動が起きづらい実態があります。個人の業務を完遂するだけでなく、同時にチームの一員としての献身性や自主性を育んでいく必要があるのかもしれません。

長期就労に欠かせない心理的安全性とは

月尾いるさんは24歳で広汎性発達障害と診断され、現在は障がい者雇用にてオウンドメディアのライティング業務に従事されています。広汎性発達障害との診断を受けるまでの経緯について教えてください。


高校3年生の時にうつ病を発症しており、大学進学を果たしたものの結果的に中退することになりました。その後、保育士を目指して保育補助のアルバイトをしながら再度大学へ進学したのですが筆記試験は受かるのになぜか実習だけが合格できずに自分に違和感を覚えて診断を受けたという経緯です。


保育の仕事はマルチタスクの連続で特性から臨機応変な対応ができず違和感を覚える方も少なくないのかもしれません。発達障害の診断後はメール便・宅急便の配達、仕分け業務に3年間従事し、その後フリーランスのライターを経て障がい者雇用にて現職へ就職されています。


2社目までは障がいを公表せずに働いていましたが、視覚優位な特性は理解していたため、業務上の指示はメモを取り、自宅で復習をしながら対応していました。ただ、年々人間関係で辛くなることが増えたため、退職してライティング業へ挑戦するに至りました。


現在は完全在宅勤務で勤務されていますが、これまでと比較して働きやすさはいかがでしょうか?


テキストによるコミュニケーションが主なため、読解力により齟齬が生まれてしまう場面には苦慮しますが、業務以外の人間関係で擦り減ることがないので働きやすい環境です。また、障がい者雇用というのも安心感に繋がっていると感じます。在宅ではありますが、雑談チャットというグループもあり、業務に支障のない範囲で自由な交流もできるため気を遣っていただけていると感じます。

採用担当者のぶっちゃけ質問

セミナーでは参加された採用企業の皆さまからも多くの質問がありました。

Q.入社後のギャップを減らすためにあると嬉しい情報はありますか?
>山田菜深子さん
知人が既に働いていたので事前情報もあり入社後のギャップはほとんどありませんでした。ただ、今思えばもう少し会社を知る機会があれば嬉しかったです。


Q.フリーランスで働く障がい者の方は多いのでしょうか?
>パラちゃんねるオーナー 中塚翔大
コラムサイトの状況としては精神障がい、発達障がいのある方がフリーランスで働かれている印象を受けています。ただし、自ら望んで挑戦するというよりも企業側の受け入れ態勢の不足や求人数の無さを原因としてフリーランスでの就労を選択せざるを得なかったという方が少なくないように感じています。


Q.障がいに対して理解がある企業と感じる場面は、具体的にどういったポイントから実感するのでしょうか?
>月尾いるさん
私は聴覚情報に弱く、咄嗟の質問に対応できないことが多くあります。そのため、面接で予め質問を教えていただき、紙にまとめて回答することが許された企業においては、やはり配慮がある、理解があると感じました。

>山田菜深子さん
在宅勤務では企業から支給されたパソコンを利用することが多くありますが、セキュリティや企業独自のシステムの影響で音声読み上げソフトが上手く適用しない場合があります。自身のパソコン利用を許可していただけると有難さを感じます。

>パラちゃんねるオーナー 中塚翔大
補足ですが、障がいについて「理解する」という言葉を追求すると難しさがあるかもしれません。あくまでも人と人のコミュニケーションなので、当事者の側に立って一緒に働くために、成果を出すために必要なことは何かを一緒に悩んでいただけると良いかもしれません。

登壇者からのメッセージ

さいごに登壇者より感想をいただきました。

>山田菜深子さん
大切なのは、コミュニケーション。今回お話しさせていただき、改めてそう感じました。雇う側も、雇われる側も幸せ。そんな障がい者雇用の事例が増えていくことを願っています。私の体験をお伝えすることが、そのきっかけになれば嬉しい限りです。


>月尾いるさん
今回登壇させていただいて感じたことは障がい者だけでなく、障がい者を雇用する側にも別の角度からの困りごとや悩みごとがあるのだと知りました。昨今、障がい者に限らずマイノリティ側の人間が徐々に受け入れられつつある社会になってきており安心する反面、行きすぎた要求を行う一部の方々がいるのも事実です。それが障がい者雇用の面でも「障害者はとっつきにくい」という印象を与えてしまう原因なのかもしれません。「相手を知る」にはお互いが話し合い歩み寄ることが大切です。そこに障がいの有無は関係ないと考えておりますので、受け入れ先の企業様側は恐れずに一人ひとりと話し合っていただきたいです。そして、さまざまな企業が一人ひとりの特性を理解して長所を活かせる社会になってほしいと願っております。

セミナー参加者のアンケート結果

■セミナー満足度
非常に良かった:20.0%
良かった:80.0%

セミナー満足度の理由をお聞かせください。

  • 各当事者の経歴の具体的な変遷や転職活動、その時に感じた課題について直接聞けたのが良かった。
  • 在宅勤務を実施されている当事者の声を聞くことができた点が良かった。
  • 障がいの面からすると在宅勤務は働きやすいが、入社後のコミュニケーションや活躍という面からすると課題が多いためです。
  • 他企業で勤務している障がいをお持ちの方の意見を直接聞くことができてよかったです。
  • 生の声が聞ける点が良いです。

パラちゃんねるでは、採用企業の皆さまと障がいのある当事者と共により良い障がい者雇用の機会を増やしていきたいと願っています。

困りごとがあればお気軽にご質問ください。当事者の意見をもとに回答をさせていただきます。
障がい者採用の困りごとを質問【ロクイチ掲示板】

障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)

私たちは、2022年の1年間で全国3000名以上の障がい者雇用担当者と対話してきました。

  • 障がい者雇用のはじめ方がわからない
  • 業務の切り出し、受け入れ部署の開拓ができない
  • 相談する場所がない
  • 新卒採用と兼業で手が回らない
  • トップが障がい者雇用にネガティブである  etc

障がい者雇用担当者は、役員と現場の狭間で理想と現実のギャップに日々悪戦苦闘しています。教育課程での構造的分断がある日本においては「働く」を通じた共生社会の実現が求められ、旗振り役となる障がい者雇用担当の積極的な社内活動が必要不可欠です。そこで、私たちは、障がい者雇用担当を後押しするチームとしてコミュニティを形成し、職場での雇用促進に向けて全面的にサポートすることとしました。

2023年1月に設立された障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)はFacebookの非公開グループにて障がい者雇用を推進する役員、採用担当者、受け入れ部署の上司など興味・関心のある方々が集まり運営しております。

今後の「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーにつきましては、運営主体をFLAT(ふらっと)として開催を継続いたします。ご興味のある方はぜひパラちゃんねるまでお問い合わせください。

多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。

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