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第3回「障がい者雇用のあるある座談会」~良い上司、良い職場の共通点は何?~

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2023.4.11

こんにちは!パラちゃんねる運営事務局です。
障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」への情報提供として、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として2023年3月26日(日)に第3回「障がい者雇用のあるある座談会」を開催しました。当日は、Twitterスペースに130名の方に参加いただきました。

執筆:パラちゃんねる運営事務局

はじめに

2022年1月にオープンした求人サイト「パラちゃんねる」では、これまで3000社を超える障がい者雇用担当者と対話を続けてきました。

  • 障がい者雇用のはじめ方がわからない
  • 業務の切り出し、受け入れ部署の開拓ができない
  • 相談する場所がない
  • 新卒採用と兼業で手が回らない
  • 社長・役員が障がい者雇用にネガティブである  etc

障がい者雇用担当者は、役員と現場の狭間で理想と現実のギャップに日々悪戦苦闘しています。教育課程での構造的分断がある日本においては「働く」を通じた共生社会の実現が求められ、旗振り役となる障がい者雇用担当者の積極的な社内活動が必要不可欠です。

私たちは、障がい者雇用担当者を後押しするチームとして障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」を形成し、職場での雇用促進に向けて全面的にサポートすることとしました。

今回は、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として開催された第2回「障がい者雇用あるある座談会」の活動報告に続き、第3回「障がい者雇用あるある座談会」となります。

>中塚翔大(パラちゃんねる オーナー)
多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」を運営し、障がい者雇用を軸に誰もが特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を目指し活動している。

>山田小百合(NPO法人Collable 代表理事)
障がいのある人達の社会参画と、障がいの有無を超えた学びと共創の場づくりを手掛け、インクルーシブデザインの普及や、障がいのある学生のキャリア学習支援事業を運営中。

>豆塚エリ(詩人・エッセイスト 兼 介護事業経営者)
16歳で飛び降り自殺を図り頚髄損傷(車いすユーザー)に。現在は「死にたい気持ちが消えるまで」の書籍を手掛け、詩人・エッセイストとして活動する傍ら介護事業の経営も行う。

当日はTwitterスペースに130名の方に集まっていただき、様々なコメントを頂きました。

「寄り添う」に愛情や好奇心は必要?

豆塚さんは個人の文筆活動をされる傍ら、介護事業も経営されています。良い上司、良い職場で思いつくエピソードはありますか?


>豆塚エリ
やっぱり言動と行動が首尾一貫している人は安心感があると思います。現在の介護事業所の代表は69歳のおじいちゃん社長なんですが、年齢的、仕事的な未熟さなどから混乱したり、アクシデントもあっても、まず整理して物事の考え方をいつも同じ態度で教えてくるんですよね。若い女性とか障がい者とか何かしらのレッテルがあるとどこかで蔑ろにされていたり、腫れ物扱いに成ったりすることも多かったが、社長は尊重しつつも指摘してくれるので、役に立てているという有用感を与えてくれる気がします。


>山田小百合
コミュニケーションの土台が信頼関係を築けていることが伺えます。障がいがあると配慮と遠慮の境目に混乱しがちで、結果的に対話を諦めたり、面倒くさくてサボるみたいなことが起きえてしまいます。


>豆塚エリ
私も健常者の時があったからわかるけど、障がい者と接点を持つ時に良い人にならなきゃという潜在的な刷り込みがあると思うんです。私の上司は、良い人とか思いやりのある人ではなく、上司としての役割を全うしてるに過ぎないと発言してくれるので、合理的で私としてはとても受け入れやすいんですよね。


>山田小百合
良い人が職場にいるかどうかって運ですよね。一緒に働く前の段階でそういった良い上司、良い職場を見極めるための共通点ってあると思いますか?


>豆塚エリ
まず関心を寄せてくれている人がいる職場は良い気がします。明るく挨拶をしてくれる、雑談がある、リラックスさせようとする、打ち解けようとしてくれる人は良いと思います。障害があることで、「あなたには何ができる?」と聞かれる場合も多いけど、ネガティブな印象があって、まずは仕事を任せてもらいながら調整してフィードバックくれる人はすごいなと思う。


>山田小百合
人に好奇心を持てる人の素養は大事かも。私はその人のルーツや考えに興味があるので、そこを入り口としてなら興味が持てるんですが。


>中塚翔大
働くうえで関りにおいて愛情があり過ぎると恩着せがましくなったり、仲間意識を強要することもあると思っていて、個々に働き方も違うから、それぞれの働きやすさを実現するためにどうするかと考えることが必要だよね。


>豆塚エリ
たしかに中塚さんは仕事だからやってるというのが分かるから気が楽です。実は今パラちゃんねるのSNS更新をお手伝いしているんですが、事前に仕事のレクチャーもあって、ミスがあったらすぐに知らせてくれて安心感があります。


>中塚翔大
東京と大分で完全に遠隔だから丁寧に準備したところはあるかもしれない。豆塚さんは本業がある人だから月1回の打ち合わせで状況見ながら業務量を調整しているよね。


>豆塚エリ
打ち合わせもカウンセリングっぽいと思っていて、体調のこと、本業のこと含めてざっくばらんにコメントをもらえるので頭が整理されて新たな視点も得られるのでありがたい機会です。


>中塚翔大
豆塚さんとぼくはもともと関係性もあるからある程度の阿吽の呼吸が成立する気がする。障がい者雇用だと受け入れ側の認識も甘かったり、そもそも相性は運があるから歪みが生じやすい構造にあるはず。ただ、障がい者雇用で充実して働いている人もいるのが事実で、人由来ではなく、環境由来の判断軸が可視化できると良いなと思っている。例えば、先ほどの話だと業務の指示書がある、ミーティングがある、フィードバックがある、そういった機会があるというのは働きやすさの要素なのかもしれないですね。


>豆塚エリ
フィードバックはすごく大切だと思う。NHKのハートネットの生番組にレギュラー出演していた時ですが、まず求められる役割が明確にあって、経験が無くても挑戦の機会もあって、毎回さらっとフィードバックもありました。緊張感とリラックス感の両方があって心地よさを感じていたのを覚えています。


>山田小百合
コミュニケーションの頻度以上にプロセスが一緒に共有されていて、それが成果に繋がっていることが重要なのかも。だけど、個人に余裕がないとできなさそうな印象を受けてしまう面もあるよね。


>中塚翔大
コミュニケーションで補おうとすると人由来だから難しいよね。週1回ミーティングとかルールとして機会を作ることから始めると良いと思う。日常はドタバタしているし上司は忙しそうで話しかけづらいものだし、場を設定することで「あとで言えば良いか」と安心感にも繋がるはず。


>豆塚エリ
私たちの会社はお茶会って言って、三時のおやつの時間を作っています。ミーティングだとやらなきゃと義務感になって面倒くささも出るけど、美味しいものがあって楽しいイメージだと参加しやすいんですよ。私は根詰めて仕事をしてしまうタイプでピリピリ感も漂ってしまうらしいので楽しいと思える場づくりがあるのが助かっています。

自己開示=自己受容?働きやすさのカギはルール設定にある。

>中塚翔大
基本的に面接の場は業務上の話に集約されていくと思うんだけど、業務内容の合う合わないだけが入社の判断基準になってしまうと結局、良い職場かどうかは運勝負になってしまう。見抜ける要素を作ることが大切だと思ったんだけど、面接で良い職場かどうかを判断するための質問って用意してありますか?


>豆塚エリ
そういったことは考えたことなかったです。内定を取ることに精一杯で、選ぶ側に回ったことが無いので、入れてください、何でもしますとなってしまう。


■リスナーさんのコメント
同じ日本語を話していても共通の言語が共有できていないかも(伝わっていない)という感覚が多くあります。


>山田小百合
近しい課題を感じることがある。同じ言葉を使っても背景や解釈が違って結果的にズレている場面があるかも。


>豆塚エリ
他者に対する思いやりとか、差別は良くないという言い方をしている人は多様性に到達していないと思っていて、それを言っている本人はマジョリティ前提でマイノリティになることを理解していないと感じます。だけど、多様性やインクルーシブという言葉を多用していていたり。


>中塚翔大
営業だと相手の口癖や所作を真似すると心理的に親和性が高まるというのがあって前提として個々に少しずつズレは合って、だからこそ歩み寄る姿勢を持つというのは大切だよね。自分とは異なる独特な言い回しが頻出する面接は、ズレが多い職場としての判断基準になるかもね。


>豆塚エリ
分かろうとしてくれているというのは伝わりますよね。そもそも価値観が合致することはないしね。


>中塚翔大
今後、障がい者雇用の面接は質問が一問一答のように定型化されていくはず。受入れ側に知識や経験、想いはまだ生まれていないけど、リスクヘッジはかけたいから事務的に熟す企業は増える予感がある。だからこそ働く側が見極める目を持つことが大切になってくる。


■リスナーさんのコメント
私は「足が悪いのでこれは遠慮させていただきたい」と申し出た時に、「やれることをやってくれたら良いから」と言われたことがあって、足が悪い人に物を運ぶことを頼むということがどういうことかが伝わっていない気がしました。障がいがあるからやりたくないと言ってるわけではなく、相手の期待することに対して自分のできることのギャップが埋めれないから伝えているんですよね。自分で何でもできてきた人と助けてもらうを前提にできてきた人との違いなのかなと感じました。上司も余裕がなくてそういう言葉になってる場面もあるのもわかるけど、積み重なってしんどくなっていくことがあります。


>中塚翔大
「できることをやってくれれば良い」ってものすごく多い言葉ですよね。面倒くささがあって言ってることが多い気がして、企業向けセミナーで身体障がいの方も同じ言葉を使っていたが、その職場では「できる、できない」を全て可視化して、その中で「できることをやってくれれば良い」だったので同じ言葉でも全く違う結果になっている。


>豆塚エリ
私も努力したら何でもできるんでしょと思ってた人間だったから常々思います。挫折の経験があるかどうか、理不尽な世界があることを知っているかどうかで全く違いますよね。私は「みんないろいろあるから」と言われたことがあったな。


>中塚翔大
やっぱり働いてみないとわからないことが多すぎるよね。コミュニケーションは上澄みでしかないから、良い職場を見極めるためにできることは障がい者雇用の実績があるかどうか、体制作りがあるかどうかになってしまうのかな。前提として求人の母数が少ない中で、通勤範囲や設備面、希望の職種など条件を入れていくと求人はごくわずかになってしまう現状があるし、だけど、最後は自分の責任で見極めて決断しないと後悔してしまう。やっぱり入社の前段階で何かしらのフローを入れる必要があると思うんだよね。


■リスナーさんのコメント
企業側にこちらの気持ちを察してというのは限界がある。企業側も障がい者側も双方に分かり合えるようにコミュニケーションを取っていくしかない。


>豆塚エリ
自分の困りごとを言語化して伝えるのが苦手・不安な人も多いと思うけど、敢えてちゃんと出してみて場所の判断をする経験も必要かもしれない。バリバラに出演した時にテーマが「障がい者の女性の恋愛の悩み」で、ある女性がマッチングアプリで障がいを隠して出会うと結局、障がいがわかった段階でいなくなってしまうと話していたんだけど、後日談でプロフィールや写真で障がいを開示したら上手く出会えたみたいなんです。


>中塚翔大
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)のセミナーで企業担当者が自己開示ができるかどうかをすごく見てると言ってましたね。受かりたいという想いから開示しない人も多いけど、「自己開示できない=自己受容できていない、把握できていない」という確率も高くなるから、働いた後に無理が来て支障をきたしやすいと。


>豆塚エリ
そういう風に言ってもらえると話しやすいですよね。


>中塚翔大
つまりは企業側が面接の段階で場づくりのルール設定をすれば良いってことですね!障がい者雇用の場合、自己開示への不安点もあるし、求人数が少ないからどうにかして受からなきゃという心理的な動きもでやすいから、企業側のメッセージがあると良いね。


>豆塚エリ
まさにそうだと思います。障がいがあると日常的に受け入れてもらえる場と受け入れてもらえない場の差がすごくあるんです。外食でお店に平気で断られることもあって、設定が異なる場面が多すぎて、常に適用しよう、明るく接しよう、いらないことを言わないようにしようとか考えてしまう。自己開示できるけど、して良いかどうかわからない場面が多いんです。


>中塚翔大
障がいに関する受け止め方も人それぞれだから、引かれたらどうしよう、攻撃されたらどうしようとか考えてると面接が終わってしまうからね。企業側にとってもルール設定は安心感、心の準備にもなるから良いと思うな。

外資系と日系、どちらが働きやすい?

■リスナーさんのコメント
私は精神疾患で統合失調症と診断されていて、B型作業所に通所しています。精神疾患においては海外の方が進んでいると考えていて、外資系と日系だと雇用の差があるのかなと感じました。


>中塚翔大
外資系と日系の差は大きくあると思います。そもそもの働き方がジョブ型で個々の責任の範疇も明確なため休みが取りやすかったり、国籍も多様ですし、文化的・宗教的観点で交われないのが前提で設計されているので、障がい者雇用においても取り組みは進みやすいのかなと思います。

リスナーさんからのその他コメント

時間の関係上、すべてのコメントを取り上げられませんでしたが、多くのコメントを頂きましたので一部を紹介します。

  • 面接以前に履歴書執筆と提出でバリアだらけ。身体障がい、視覚障がいは準備が大変で無事に書類が到着したかの不安も。それなのに不採用の連絡はメールであっさりとというのは力関係があまりに不均衡に感じる。
  • 就労移行支援所も障がい者雇用も健常者に近いどころか健常者以上の健康管理をバリアだらけの障がい者に求めるのはおかしい。
  • 障がい者に限らず、そこに生まれただけで、たまたま自分だった方などと出会う経験が多かったので人は人としか思えない感覚が強くあり、改めて当たり前を考えさせられました。

まとめ

第3回の障がい者雇用あるある座談会は「良い上司、良い職場にある共通点は何?」について議論を交わしました。

感情的ではなく首尾一貫性の伴う上司が良い上司としての共通点として挙げられる一方で素養や心の余裕など上司側に求められる要件が多く、職場内での面談やフィードバックなどの機会の可視化が働きやすい職場か否かを見極める一つの基準になるかもしれません。

また、障がい者雇用では求人数の少なさから選択できる状況にない当事者がほとんどで、企業側と求職者側とで見極めるための対等な土台が成立していない現状が浮き彫りになりました。企業側が面接において場づくりのルール設定がすることで互いの心理的安全性を確保した中で対話が成されれば相性の良い上司、相性の良い職場を見極める機会に繋がるのではとの考えに至っています。

なお、第1回からの障がい者雇用あるある座談会の様子はnoteにも纏めていますのでそちらもご確認ください。
次回は、「就職活動におけるバリアを探る」です。2023年4月16日(日)に開催をしますので、ぜひ興味のある方は気軽にご参加ください。

多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。

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