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第4回「障がい者雇用のあるある座談会」~就職活動におけるバリアを探る~

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2023.5.8

こんにちは!パラちゃんねる運営事務局です。
障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」への情報提供として、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として2023年4月16日(日)に第4回「障がい者雇用のあるある座談会」を開催しました。当日は、Twitterスペースに123名の方に参加いただきました。

執筆:パラちゃんねる運営事務局

はじめに

2022年1月にオープンした求人サイト「パラちゃんねる」では、これまで3000社を超える障がい者雇用担当者と対話を続けてきました。

  • 障がい者雇用のはじめ方がわからない
  • 業務の切り出し、受け入れ部署の開拓ができない
  • 相談する場所がない
  • 新卒採用と兼業で手が回らない
  • 社長・役員が障がい者雇用にネガティブである etc

障がい者雇用担当者は、役員と現場の狭間で理想と現実のギャップに日々悪戦苦闘しています。教育課程での構造的分断がある日本においては「働く」を通じた共生社会の実現が求められ、旗振り役となる障がい者雇用担当者の積極的な社内活動が必要不可欠です。

私たちは、障がい者雇用担当者を後押しするチームとして障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」を形成し、職場での雇用促進に向けて全面的にサポートすることとしました。

今回は、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として開催された第3回「障がい者雇用あるある座談会」の活動報告に続き、第4回「障がい者雇用あるある座談会」となります。

■スピーカー
>中塚翔大(パラちゃんねる オーナー)
多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」を運営し、障がい者雇用を軸に誰もが特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を目指し活動している。

>山田小百合(NPO法人Collable 代表理事)
障がいのある人達の社会参画と、障がいの有無を超えた学びと共創の場づくりを手掛け、インクルーシブデザインの普及や、障がいのある学生のキャリア学習支援事業を運営中。

>豆塚エリ(詩人・エッセイスト 兼 介護事業経営者)
16歳で飛び降り自殺を図り頚髄損傷(車いすユーザー)に。現在は「死にたい気持ちが消えるまで」の書籍を手掛け、詩人・エッセイストとして活動する傍ら介護事業の経営も行う。

当日はTwitterスペースに123名の方に集まっていただき、様々なコメントを頂きました。

固定観念が可能性にフタをしてしまう。

前回は良い職場、良い上司について議論を重ねました。リスナーさんから多くのコメントを頂く中で、入社に至る前段階での課題感もかなりあることに気づき、今回はそもそもの就職活動におけるバリアが何があるのかを探求していきます。


>豆塚エリ
私は16歳で障がいを負ったので高校は卒業できずに就活が始まりました。ハローワークで第一声に「車椅子の求人は一切ありません。」と言われ、その上で「どういうことをやりたいんですか?」と質問されて「求人が少ないなら、やれることは何でもやります」と答えたら「もっと自分のやりたいことを明確にしないと駄目ですよ」と言われて出鼻をくじかれたことを覚えています。結局、地方暮らしで、運転免許も持たない私に合う求人は現れず、たまたま飲食店で知り合った方の紹介で就職に辿り着きました。それから2年後の転職活動では合同面接会にも参加しましたが、その時も私に合う仕事は見つけられずにフリーランスとして在宅で受けられる働き方に切り替えようと決意するに至りました。


>山田小百合
まっとうに就職活動をしようとすると障がい度合いや自身が持つ条件により不足の部分に焦点が当たりがちだったのが、偶然の出会い、関りから互いのことを知っていく中で就職に至るというのは結果論ですけど良い流れですよね。ビジネス的な面接の場ではないからこそ、互いにフランクに警戒せずに知っていけたんですかね?


>豆塚エリ
確かにそうですね。あと同じ障がいでリハビリ施設にいたOBでもあったというのが余計に話しやすい状況を作ったと思います。面接だと自分の弱みを言うとわがままのような気がしたり、それが原因で不採用になったらどうしようと考えたり、実際の自分より大きく見せてしまう場面もあって、しんどくなってしまうことも多いです。共通項があってリラックスできる場所で素直に話せたというはかなり大きかったと思います。


>山田小百合
合同面接会みたいな場所は自分を出しづらいですよね。


>豆塚エリ
そうですね。どんな人がエントリーしているかも見えてしまいますし、性別や障がい度合いなど見える部分で比較してしまったりネガティブな心境になりやすいですね。


>中塚翔大
ハローワークやソーシャルワーカーのような間に立つ人が可能性を奪う発言をするケースって少なくないと思うんですよね。「車椅子=求人ない」という表現だったり、支援者側の固定観念から他人の気持ちや考えをネガティブに誘導するような。


>山田小百合
繋ぎ役としてちゃんと機能していないのでは、という観点ですが、なぜこの課題は起きると思いますか?


>中塚翔大
個人的かつ直感的な考えですが、有料サービスかどうかというのはあるかもしれない。全てが顧客であり、口コミが大切になると否定形の発言って減る気がする。ただ、転職エージェントができているかというとそうでもなく、結局は人由来であり、営業担当の考えや余裕によって大きく左右されるというのは事実だと思います。

善意に混乱⁉苦手なことでも資格は取るべき?

豆塚さんは、ハローワークや合同面接会で苦い思いをされていますが、反対に良い支援者に恵まれたと思える経験はありませんか?


>豆塚エリ
20代前半の就職活動の時もやっぱり難しさがあって、就職は難しくてもデザインなどの委託なら受けられると思って合同面接会では履歴書を持って営業して回ったんですよね。その時に出会ったB型作業所の理事長が中途障害の方(脳卒中からの半身不随)だったのですが、テープ起こしとかデータ入力とか通えなくても一度見学においでと誘ってもらえて、結果的に在宅でできる仕事をいただけたという成功体験はあります。


>中塚翔大
結局のところ、当事者性になっちゃうんですよね。日本の採用プロセスにおいて当事者性ではなく、可能性を見出す仕組みがないと当たりはずれのある就職活動から脱却できないと思うんです。


■リスナーさんコメント
間の人自体が一般の会社に対して疑念を持っているのはあると思います。社会をそもそも知らないがゆえに、もしその障がい者が障がいのことを理解してなさそう、または受入れ側の環境が整っていないと感じた時点でここに就職すると辛い思いをさせることになるかもしれないなどの憶測が働いているのでは。


>山田小百合
あり得ますよね。相性が良いと思って繋いだ結果、失敗したみたいな経験があると石橋を叩いて渡っちゃう可能性もありますし。


>中塚翔大
良かれと思って繋いだら、環境が合わなくて求職者からクレームが入ったりとかもありますよね。そういう支援者側にある見えない背景まで鑑みると最終的には第三者に頼り切れない前提に立って自分でどう仕事を探して選択していくかっていう頼らないツールを見つけていくことが重要になっちゃいそうですね。


>豆塚エリ
私も経験から同感です。就活が難航していた時に施設のソーシャルワーカーさんが履歴書や面接のアピールになればと車椅子マラソンを薦めてくれたんです。結果的に狙い通りでメディアにも取り上げられたんですが、そもそもスポーツ少女ではなく文学少女だったので勘違いされた評価が独り歩きしてしまったんですよね。車椅子テニスや陸上のオファーだったり、実際の私とのミスマッチがあって、ただ、期待に応えなきゃと断れずに頑張った結果、体を壊したりと自分にマッチしたものを見つけないと続かないとものすごく実感しましたね。


>中塚翔大
簿記やパソコン系の資格とかも同じですよね。強みとなる資格をみたいな風潮って日本にあるし、アドバイスを受けたい当事者とアドバイスしたい支援者の関係が社会に存在する気がしますね。マジョリティを前提とした社会がある中で情報が可視化されていないから当事者は漠然とした不安を抱き、アドバイスを求めて動く必要があって、弱者を助けましょうみたいな一方通行のお節介文化が知識も経験もなく善意だけでアドバイスをする周囲を作り出し、結局当事者は情報が錯綜して混乱してしまう。


>豆塚エリ
まさに私は混乱してましたね。どんどん周囲からのアドバイスはあるけど、実際の現実は上手くいかないし、社会に出るんだからみたいな圧もあって、やりたくないこともやらなきゃいけないんだよって言われ方をしたこともあって、無理して自分を追い込んでいたところはありましたね。


>山田小百合
やっぱり間をつなぐ人に頼らない可能性も持っておいた方が良いんでしょうね。新聞記者を志望していた視覚障がいの方のエピソードで運転免許の応募要件が満たせず門前払いだったところを求人媒体を通さずに直接電話営業をして結果的にメディア関係に就職できたという話があるんです。ただでさえ不採用通知ってショックですし、直接応募ってかなり勇気がいる作業だと思うんですが、人を介さず直接動いても良いんだという選択肢は知っておくと良さそうだなと。


>中塚翔大
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)のメンバーで聴覚障がいの方もホームページから直接問い合わせして経営企画室で働いているよね。日本の就活文化は独特で2000年代からは求人媒体を介さないと就活できないくらいのマインドセットが浸透している気がします。実際はSNSが浸透する中で企業と個人が出会うチャンスは無数に存在しているので求職者も求人企業も互いの努力によって出会える確率は上がっているはず。今から転職活動をする方は今の時代だからこその就活スタイルがあるってことを選択肢として持っておいた方が良いのは事実だろうね。

面接前にある就職活動のバリアとは?

豆塚さんは四肢麻痺で指先に麻痺がありますが、就職活動で手書きの履歴書を提出したり、SPIなど適性検査は受けたことありますか?応募までの労力的なバリアって感じたことはありますか?


>豆塚エリ
履歴書は書いたことありますが、適性検査はないですね。障がい者なんだけど、健常者とやり合いますみたいなマインドセットが刷り込まれてたから当たり前に慣習を踏んでいくって感じでしたね。


>中塚翔大
手に麻痺があると手書きの履歴書は応募までに時間を要すし、視覚障がいがあるとスクリーンリーダー対応がないと申し込めないとかプロセスに多くのバリアが存在していると思うんですよね。


>山田小百合
アクセスに必要な環境が整っていないということだと思うけど、学校現場だと言われる頻度増えてますね。発達障がいがある生徒に対して手書きかタブレットを選べるみたいな。


>中塚翔大
適性検査って「何分以内に回答してください」って仕組みだと思うんだけど文字認識が苦手とかキータッチに時間がかかるとか個々の特性を鑑みたアクセシビリティ対応ってできてないよね?新卒・中途採用の流れをそのまま適用している企業も多くあるので不具合は各所に見られる気がする。


■リスナーさんコメント
適性検査がアクセシビリティの問題でキーボードで操作できないと嘆きのツイートを目にしたことがあります。


>中塚翔大
これはありそうですよね。けど、これは企業が知れば改善されていく話だと思うので、しっかりと調査していきたいですね。パラちゃんねるで調べて報告していきます。

手書きの履歴書は何のためにある?

■リスナーさんコメント
【私にとってのこれがバリア】
①履歴書が手書きじゃないとダメな業種がある。
②短期・早期離職にネガティブなイメージを持ち過ぎ=過去の経歴に重きを置きすぎて、応募者の現在や未来を見ない印象
③障がい者雇用の給料が少な過ぎて、一般オープンやクローズで頑張るしかない辛さ


>山田小百合
手書きじゃないと駄目な業種って存在するんですか?


>中塚翔大
文章を書く業界は手書きを見たがったり、年賀状とか送付状が手書きというルールのある会社も同様だよね。単純に「手書きの労力=熱意の表れ」と捉えてフィルタリングの一つとして利用している可能性もあるのかな、後付けな理由な気もするけどね。


■リスナーさんコメント
PCスキル云々とも言われるのに履歴書は手書きという矛盾を感じる。賃金も考えるとクローズにするしかないけど、ハローワークからはやめてほしいと言われる。後天的な障がいで今までの経験を生かせないとなると未経験の分野にしか応募できなくなる。


>山田小百合
就職活動におけるバリアは色んな場所にあるんだろうけど、障がい者雇用に限らず共通する課題と障がい者雇用だから生まれている課題があるんでしょうね。


■リスナーさんコメント
福祉サービス事業所から教わった履歴書の書き方は手書きオンリーでした。応募職種は事務でしたが、パソコンで書くのはあまりよくないと。田舎あるあるなのでしょうか?


>中塚翔大
田舎とか地域も関係するかもしれませんね。あと、オーナー企業かどうかも関係するでしょうし、福祉業界はそもそもアナログ文化なのでそういった影響もあるかもしれません。


>山田小百合
履歴書とか面接以前の問題がたくさんあるんだなと今日気付きました。面接は面接官との相性だったり運が評価を左右するみたいな領域があると思うけど、その手前部分なら改善できるのではと思えましたね。


>豆塚エリ
なんか削れていく感覚があって、気持ちが続いていかない部分って結構あると思います。


>中塚翔大
就活ってそもそも新しい場所を探す行為で労力が相当かかるんですよね。面接からが本番なのに辿り着くまでにハードルがあるとモチベーションは保てないですよね。求人も少なく、そもそも選択肢があるわけでもなく、プラスして給与も低いとなれば前向きな思考は奪われて行って当然だよね。

働く側も雇用側も自己理解が重要

■リスナーさんコメント
障がい者も受入れ側も互いに自分たちのことを知っていないことが多い気がします。自分を知って説明できるようになることが重要なのかなと思いました。


>中塚翔大
日本の場合、自分と向き合う初めての機会が就活になると思っています。ただ、障がい者雇用においては就活のステップが仕組み化されておらず、自己理解を深める工程が抜けていることも多いのかなと。事故や病気などで身体障がいがあると自分と向き合う機会もあると思うんだけど、どうだろう?


>豆塚エリ
確かに中途障がいだと自分と向き合わざるを得ないとは思います。だけど、就職しようとしたときに障がい者としての経験値が少ないから結局どうして良いのかわからないとなっている人も多いように思いますね。一番痛感したのがとにかく体力が続かなくて、健常者に合わせなきゃという想いも相まって疲弊して倒れてようやく考え方を変えなきゃと理解しました。障がい特性がある中で自己分析をしていくというのは何年もかかるんですよね。


>中塚翔大
なるほど。確かに。雇用側も健常者の就活と同様の感覚の中で面接をしてしまうと総じて自己分析が不足しているという評価になってしまう可能性も秘めているかもしれないね。雇用側もこれまで通りの面接ではなく、障がい者雇用に合わせた意識変革を求めていかないといけないね。

リスナーさんからのその他コメント

時間の関係上、すべてのコメントを取り上げられませんでしたが、多くのコメントを頂きましたので一部を紹介します。

  • 自力就活の方が往々にして上手くいく例は多いので、障がい者分野においても自らが望む環境を探せた方が上手くいきそうな気がする。
  • 内部障がいだと相手に伝わらず、自分でも自身の障がいをうまく説明が出来なくて困る事が多い。
  • 脊髄損傷を患い車椅子生活ですが、就労出来るのか常にストレスを晒されている。
  • 日本って健常者の方々が「自分で精一杯」になってる感じがする。余裕が無いから障がい者にも優しく出来ない、理解や共感もする暇がない。そんなモヤモヤした空気感を今後、払拭出来ればって思っている。
  • ”障がい者”を採用するのではなく、”一人の人”を採用するようにはならないのか。そこに、なにより”障がい”を感じる。
  • 障がい者だと言ったって十人十色、好きとか得意とは限らないですよね。確かに、現実や社会に合わせるのも大事かもだけど。
  • 看護師13年務め、うつ、発達障がい診断受け療養中。オープンで今後働きたいのですが、PC操作など事務作業も未経験。看護のことしか勉強してこなくて今後どうしようか困っている。
  • 「社会で生きる」という意味で、健常者の世界を障がい者側が知る必要はあるかなと思う。

まとめ

第4回の障がい者雇用あるある座談会は「就職活動におけるバリアを探る」について議論を交わしました。「支援する・される」という上下関係や「障がい=弱者」などの無意識に根付く社会構造が当事者を混乱させていく現状が垣間見えると共に履歴書や適性検査など面接以前のアクセシビリティに大きな課題があることも浮き彫りとなりました。

また、従来から続く求人サイトや転職エージェントなどの就活システムを活用するだけでなく、間の介在させずに自ら企業に対してアプローチをするなどの自ら状況を打破する行動の可能性についても気づきがあり、自分軸で取捨選択をすることの重要性を改めて認識する回になったと思います。

第1回からの障がい者雇用あるある座談会の様子はnoteにも纏めていますのでそちらもご確認ください。次回は、「障がい者雇用のキャリア形成とは。~将来を考える必要ある?~」です。2023年5月14日(日)に開催をしますので、ぜひ興味のある方は気軽にご参加ください。

多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。

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