PARA CHANNEL Cage

もし人生をやり直すことができるのならば。私にとっての2つの分岐点。

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2023.6.6

今回は、編集部とのやりとりの中で「もし人生をやり直せるなら、いつ何をしたいか」という面白いテーマが思い浮かびました。「たられば」や、今までの生き方もふまえた都合の良い内容になりそうですが、自分でもよく考えていたことなので、そのことについて書いていきたいと思います。

執筆:市川 潤一

私はこれまで、自身の障害のことや、障害者になってからのことなどをこの「パラちゃんねるカフェ」で書いてきました。

今回は、編集部とのやりとりの中で「もし人生をやり直せるなら、いつ何をしたいか」という面白いテーマが思い浮かびました。「たられば」や、今までの生き方もふまえた都合の良い内容になりそうですが、自分でもよく考えていたことなので、そのことについて書いていきたいと思います。


私は自分の人生の中で「別の選択肢を選びたかった」と思うことが2つあります。

1つ目は、高校卒業時に大学を受験せずに、就職するか、専門学校にするか、早めに手に職を付けたかったということです。

そう思ったきっかけは障害者になってから、無理やり誘われて行った小中学校の同窓会です。

同窓会の中で「小中の頃にあれだけ成績よかったのに、何があるかわからないものだな。自分は高校卒業後に自衛隊に行って公務員になった。たぶん、途中で障害を負っても組織に守られてなんとか仕事はできると思う」と言われたことがありました。それを聞いて、「たしかにそうだな」と思いました。

「東京の広告や出版関係の学科がある専門学校に行って、きちんと勉強したかったな」という思いは今でもあります。私は学生時代から某音楽雑誌が好きでした。そこで書いているライターさんたちのことをすごく尊敬していたこともあり、当時からぼんやりと「こういうライターや書く仕事ができたらいいなぁ」とも考えていました。

大学卒業後、ライターの仕事を始めてから、ライターになりたい学生から相談されることがよくありました。その際、私は「どこでもいいから新聞社に入ったら、文章の書き方や言葉の使い方、仕事の仕方を覚えられるんじゃないかな」と答えていましたが、本心としては、「卒業後にできれば地方じゃなくて都会の専門学校に行って勉強してきたら」でした。

都会では地方よりもはるかに多く書く仕事がありますし、その分ライターや編集者の仕事も多くあるでしょうし、センスも磨けると思ったからです。

2つ目は、心筋梗塞で倒れて救急搬送された先の病院で、カテーテル手術をすぐに受けず投薬治療をしておけば、障害者になることはなかったのではないかということです。

倒れた際、私は心臓の冠動脈三本ともにステントを入れる必要がありました。1回目のカテーテル手術はカテーテルを刺したときに血栓が脳の血管に飛んで脳梗塞となり、死にかけたのです。

おそらく、病院側は緊急搬送された後、様々な検査をしていたので手術の危険性はわかっていたのではないでしょうか。1回目が失敗していることもあり、2回目のカテーテル手術は病院側も慎重を期して、血糖値や血管のコントロールを万全にしたあとに行われました。

2回目のカテーテル手術が無事に終わったときに「最初からこうしておけば脳梗塞を引き起こすことはなかったのではないか」という憤りと「医者にすすめられても、すぐに手術の同意書にサインをしなければよかった」という後悔がありました。

「人生の中で別の選択をするとしたら」というのは、たらればの可能性の話です。

今回挙げた2つの場面では、どちらもその際にその選択をし、それが現在の自分に繋がっています。違う選択をすれば、もしかすると良い方向に進んだかもしれませんが、まったく別の人生になっていたかもしれません。

「別の選択をしても、決して良いことばかりではないのだろう」と思います。

私は大学に行ったことによって、モラトリアムの時間をもらえていろんな人に出会い、いろんな経験をし、結果としてその後の自分の生き方に繋がったことも多いです。

また、障害者になったからこそ「すべての人にとって生きやすい環境とは」ということを考えるようになりました。障害者になったからこそ知り合えた人もいたり、逆に断捨離ができた人間関係もあったりします。

その昔、「置かれた場所で咲きなさい」という本が話題になりました。置かれた場所があなたの居場所なのですという内容でしたが、「恵まれた環境で産まれ、生きてきた人の戯れ言だ!」と大嫌いな言葉でした。

しかし、最近では、さまざまな経験や事件を経て今の自分ができあがったのだと感じ、大嫌いの度合いも薄れていってきたかもしれません。今の自分を肯定しながら、より生きやすい方向に生きていくことが、大事なんだろうなと感じています。

1975年生まれ。長崎県佐世保市出身・在住。愛媛県でライター・編集者・カメラマンなどとして活動していたときに脳梗塞になり、左半身麻痺の身体障害者となる。取材活動ができなくなり、ライターを廃業。障害者雇用の在宅ワーカーとなり現在に至る。障害者の仕事の仕方や見つけ方など自分の経験を紹介していきたいと思います。

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