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全盲の私が使う仕事での連絡ツールとその工夫

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2023.6.8

私は現在、視覚障碍者支援団体でIT支援の仕事をしています。今回は、全盲の視覚障碍者の私が仕事でどのような連絡ツールを使っているのか、ツールを使う上での工夫をご紹介します。

執筆:小川 誠

私は現在、視覚障碍者支援団体でIT支援の仕事をしています。

仕事をする上で、日常的に電話やメール、ビジネスチャットなど様々な連絡ツールを使っていますが、全盲の私はそれぞれに使いづらさを感じることがあります。

今回は、全盲の視覚障碍者の私が仕事でどのような連絡ツールを使っているのか、そして、ツールを使う上での工夫をご紹介します。

電話をする際は、点字でメモをとる


仕事の連絡ツールとしてよく使う電話。電話そのものは問題なく使えますが、工夫が必要になってくるのは、電話の内容を書き留めておくメモです。

視覚障碍のない方、いわゆる晴眼者の方たちは、職場の固定電話にかかってきた電話をとるとき、片手で受話器を持って、もう片手でメモをとるのではないでしょうか。

全盲の私も同じように電話をしながらメモをとります。ただし、メモは点字でとります。

点字のメモは点字盤と呼ばれる道具を使います。クリップボードのような板に紙を固定して、紙の上に点字を規則正しく打つための枠である定規を置きます。先端が鍼のようになっている点筆で紙に突起をつけて、点字を書いていくのです。

ピンディスプレイと呼ばれるデジタル機器を使って、メモを取る場合もあります。ピンディスプレイも片手で使用することができます。

固定電話にかかってきたときは片手しか使えないため点字でメモをとりますが、スマートフォンの場合はまた別の方法にしています。私はスマートフォンをイヤホンにつないでいるので、通話中でも両手が使えます。両手が自由になる場合は、パソコンにメモの内容を打ち込んでいくようにしています。

メールはスクリーンリーダーで操作しやすいアプリを使用する


次に、使用頻度の高いメール。私の場合、メールのやりとりは、現在でもかなりのウェイトを占めています。

私はパソコンを使用する際、音声読み上げソフトであるスクリーンリーダーで操作しています。

パソコンのメールも例外ではありません。私にとっては「スクリーンリーダーで操作しやすいかどうか」が、重要になります。最近ではほとんどのアプリやサイトがスクリーンリーダーに対応しているようになってきましたが、それでも完璧とは言えず、相性の良し悪しはあります。

私が実際に使用して、スクリーンリーダーで操作しやすいと感じたメールアプリはOutlookです。Outlookだと、ファイルを添付する作業が簡単で、送りたいファイルや画像をコピーして、メールの本文に貼り付けるだけで添付ができます。

私はOutlookをおすすめしていますが、他にも各種スクリーンリーダーと相性の良いメールアプリはあります。

Web会議のアプリは、最初の設定が大事


コロナ渦の影響で急速に普及してきたWeb会議ツール。視覚障碍関連の会議や打ち合わせも、オンラインで開催することが増えてきました。私もZoom、Skype、Google Meetなどを使用したことがあります。

使ってみて感じたことは、初めて使用する際の設定が大事だということです。これはどのアプリを使うときでも共通しています。会議のリンクを押せばWeb会議を始めることができますが、その前に、各アプリでのアカウントを作成して、アプリにログインしておくと通話が比較的スムーズに始められます。

パソコンでZoom、Skype、Google Meetなどを使用する際は、Tabなどで操作をします。可能であれば、マイクのオンとオフの切り替えなどのショートカットキーを覚えておくと便利です。

スマートフォンで使用する際は、スクリーンリーダーの音声を聞きながら、指のスワイプなどで操作することができます。

これまでの経験上、各種Web会議ツールをスクリーンリーダーで操作していて難しいと感じることはあまりありませんでした。Web会議ツールとスクリーンリーダーの相性は比較的よいと感じています。

ただ、視覚障碍者が参加しているオンライン会議の場合、チャットの使い方には注意が必要です。チャットでメッセージやデータを送ったりすると、スクリーンリーダーの音声と実際の人の会話が重なってしまい、聞き取りづらくなるので、あまりおすすめはできません。

チャットツールで打ち合わせや書類のやりとり


ビジネスチャットを使用して、打合せや書類のやりとりをすることもあります。

私がよく使っているチャットツールは、Chatworkというサービスです。基本的に無料で利用することができて、パソコンとスマートフォンにおけるスクリーンリーダーとの相性もよいです。シンプルな構成になっていますので、音声ガイドを頼りに使うことが十分可能なツールだと感じています。

まとめ

今回は、視覚障碍者にとって、電話・メール・Web会議ツール・チャットツールの4つの連絡ツールを使用する際の工夫や注意点についてお伝えしてきました。

電話は、早めに内容を伝えておきたいときなど、緊急時に使うことが多いです。メールは長文のお知らせや報告を送るときに使っています。チャットツールでも長文を送ることはできますが、この二つの使い分けは職場によってちがいます。

職場がチャットツールを導入しており、社内の連絡ツールとして使用している場合はチャットツールを使っています。

そのため、内容の緊急度や、長さ、職場の環境によってこれらの方法の使い分けをしています。

どの方法で連絡することが多いかは組織によっても異なるでしょう。ただ、電話以外の3つは、パソコンやスマートフォンを介するため、視覚障碍者にとっては音声読み上げソフトであるスクリーンリーダーが必須です。

Text by
小川 誠 twitter note

視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。

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