障害のある学生の就職活動前における5つの社会課題。解決への突破口は「社会経験」と「自己有用感」
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2021.3.16
障害や生きづらさを抱えた学生が、自分自身のキャリアを考える機会をつくる。私たち「GATHERING」は、YouTubeチャンネルの運営やイベントの企画、インターンシップの機会提供などを通じて、活動しています。
その中でも、今、注力しているのは「障害のある学生のインターンシップ機会の創出」です。障害の種類や程度を問わず、多くの障害のある学生に社会経験を積む機会を提供できればと考えています。
執筆:GATHERING ギャザリング
ウェビナーで聞いた、障害のある学生の悩み事
「GATHERING」を立ち上げようと思ったきっかけは、障害のある学生を対象としたウェビナー(就活前の準備講座)のときに聞いた悩み事の数々でした。
「障害が原因なのか、アルバイトやインターンシップの選考や面接がなかなか通らない。」
「大学の友人(健常者)と比較すると、社会経験が足りないな、積みづらいなと思っている。」
「自分の障害でできる仕事・できない仕事の判断が難しい。」
「障害者といってもいろいろな種類の障害があるから、自分と同じ障害の学生に会ったことがない。話を聞いてみたい。」
参加した学生から挙がってきた声に「なるほど」と感じました。
障害の種類や程度もありますが、大学に通うだけで精一杯で学業と学外活動の両立が難しい場合もあれば、自身の障害理解・受容の状況によって行動を起こせるかどうかも変わります。
また、企業論理からすれば「障害者雇用」と「学生アルバイト」は別モノですし、限られた枠を争うインターンシップであれば、見えないところで障害の有無が左右されているかもしれません。
これは社会課題なのか、その判断に迷いました。
障害のある学生の社会課題
障害のある学生の「生の声」を聞いたからには、実際のところはどうなんだ?と考え、大学の「障害学生支援機関」にヒアリングを行うことにしました。
コロナ禍でもあり、飛び込み営業のように足を運ぶわけにも行かず、多くの方々に協力を仰ぎながら、いくつかの大学からご回答いただきました。
そこで出てきた「障害のある学生の社会課題」をまとめると、以下の5つに集約されました。
- 障害のある学生は、社会経験を積みづらい。
- 障害のある学生は、自身の障害と向き合い、理解する機会が少ない。
- 社会で活躍する障害者のロールモデル(あの人のようになりたい)が少ない。
- 多様な人との接点や交流が少ない。
- キャリアの選択において、判断材料とサポート体制に学校差・個人差がある。
私たちだけでこの①〜⑤をすべて解決することはできません。ただ、その一部の課題を解決に導くお手伝いはできるのではないかと考えました。
「GATHERING」プロジェクト概要資料より
大切なのは「社会経験」と「自己有用感」
解決の突破口になると考えているのは「社会経験」と「自己有用感」です。
社会経験が必要か必要でないかと言われれば、ほぼ100パーセント必要だと回答するでしょう。ただし「なぜ?」と問われると、案外、答えに詰まるかもしれません。
学生(特に大学生)にとっては、アルバイトやインターンシップといった企業や団体との関わりで生まれる社会経験もあれば、部活動やサークル活動で生まれる社会経験もあるでしょう。
自分が今まで関わりのなかった人たちとの活動、他者の役に立つために自分の力を使うことが社会経験です。言い換えれば、自分以外の誰かとの関わりの中で積むものです。
うまく関わりを築き、コトを円滑に進めるためには、自分の障害を説明し、必要なサポートや配慮を受けることが求められます。そのためには、自身の障害を理解し、分かりやすく説明できる準備ができていなくてはなりません。
障害の説明の機会が確実に生まれるのが、社会経験なのです。
説明をするためには、自身の障害と向き合わざるを得なくなりますし、障害理解・受容を進めていくことになります。自分に何ができるのか、どのような配慮が必要なのか、少なくともその仮説を立てることができるでしょう。
そこで生まれる、さまざまな感情を知ることも大切です。ただし、その感情は受け容れなくてはならないものではなく、その感情があることを知るだけで十分です。
また、社会経験によって、自己有用感を得ることができます。
自己有用感は「誰かの役に立っている・貢献できている」という感覚です。似た言葉には、自己肯定感や自己効力感などがありますが、自己有用感こそ、障害のある学生にとって大事なものです。
学生の中には、障害をコンプレックスのひとつとして感じている、自己肯定感が低い、孤独感・孤立感・無力感などの感情や状況が生まれているといったケースが往々にしてあります。
「障害は個性だよ」「みんなちがって、みんないい」などの声かけはあまり効果はなく、むしろ状況を悪化させます。自己有用感がなければ、解決の糸口を見つけることができません。
誰かの役に立ったという発見と経験を小さくでもいいから積み重ねることで、自分の可能性に目が行くようになります。ある種の「一筋の光」です。その光を信じ続けるために必要なものが自己有用感であり、行動の機会を作り続けることです。
そもそも、社会経験は、誰かの役に立つためのアクションです。誰かの役に立ったという経験が、自分に何ができるのか、何をやりたいのか、チャレンジしてみたいのかという選択肢を見つけるきっかけになります。
実際のところ、就職活動での企業への志望動機や職種への憧れは、障害の有無関係なく、自己有用感に紐づいた経験にあることが多いでしょう。
社会経験と自己有用感は関連性の非常に強いものです。そして、その機会を作りやすいのが、インターンシップなのですが、文字数が来てしまいました。
・・・その詳細はまた次回、ご紹介します。
Text by
ギャザリング
GATHERING
障害や生きづらさのある学生が、自身のキャリアを考える機会を提供するプロジェクト「GATHERING」。YouTubeチャンネルの運営、イベントやウェビナーの実施、障害学生のインターンシップの機会提供(さまざまな企業とコラボ)などが主な活動内容。