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障害者の職場の働きやすさを導くユニバーサルマナー。株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉さん インタビュー

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2021.4.2

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする企業インタビュー。今回は、自分とは違う誰かの視点に立ち行動する、多様な方々へ向き合うためのマインドやアクションである「ユニバーサルマナー」を届ける株式会社ミライロの代表取締役社長 垣内俊哉さんにお話を伺いました。

ユニバーサルマナーの学びの本質から、障害者雇用へのヒントを教えていただきました。

執筆:株式会社ミライロ

ミライロの取り組み

株式会社ミライロは、2010年6月に設立された、バリアバリューの視点からユニバーサルデザインを提案する企業です(創業は2009年5月)。障害者や高齢者などの多様な方を対象としたユニバーサルデザインの取り組みは、さまざまな課題解決や企業価値の向上に繋がります。

私たちは、環境・意識・情報という3つの軸からソリューションを提供しています。本日詳しくご紹介するユニバーサルマナー研修は意識面のソリューションです。また、ミライロIDやBmapsなどを展開していますが、これらは障害のある方の観点や感性を生かしてサービスを作っています。障害のある当事者モニターが多数登録しているミライロ・リサーチを用いた調査も実施可能です。

ユニバーサルデザインの提案は、障害のない人を前提に作り上げられた社会によって生み出されてしまった困りごとや不便なことの解消がひとつのテーマとなります。

例えば、歩けないことは右利き左利きの違いと同じようなことです。段差や階段があるのは、それに困らない人が多いからであって、足が不自由であること自体が障害というわけではありません。そういった不便を解消することが大切ですし、前提として、不便なこと・困っていることがあるという事実を知ってもらうことも大切です。私たちの取り組みは、障害者への理解を正そうというわけではなく、認識を整理するという部分が強いです。

「認識の整理」という部分でミライロが提供している「ユニバーサルマナー検定」に関して、ここから深く探っていきます。



「できたらちょっと格好いい」ユニバーサルマナー

ミライロが提供しているソリューションのひとつに、自分とは違う視点に立ち、行動するための研修である「ユニバーサルマナー検定」があります。

困っている人を目の前にしても、なかなか一歩踏み出せなかったり、知識がなかったり。そういった課題へアプローチしているのが「ユニバーサルマナー検定」です。

元々は障害者や高齢者など多様な方々への接客研修として開発、展開していたものを、より多くの方々へ広めていきたいという想いから、2013年8月にユニバーサルマナー検定としてリリースし、これまで述べ10万人の方々に受講していただきました。ホテルや結婚式場、教育機関や自治体、省庁など様々な業態で働く方々に提供させていただいています。

障害者や高齢者に限らず、LGBT、外国人、ベビーカー利用者など、多様な方々を街で見かけますが、どのような意識で関わればよいのか、行動を起こせばいいのか。ユニバーサルマナー検定は3級・2級・1級と3段階のカリキュラムで学ぶことができます。

マナーと題しているだけあって、できたらちょっと格好いいよねという落とし込みにしています。また、ビジネスマナーやテーブルマナーのように、誰もが身につけるものとして浸透していけばいいなという想いもあります。3級ではコミュニケーションのあり方、2級では実践的なサポート方法、1級では当事者と触れる機会を通じ、多様性を深掘りした内容となっています。段階的に受講することによって、それぞれの級を取得できます。

ユニバーサルマナー検定は、障害者に限定した内容ではありませんが、ユニバーサルマナーの本質や検定を通じてインプットできるマインドやアクションなどは、障害者雇用の現場で活用することができます。

障害者雇用における障害のある社員の離職を考えたとき、そこにはコミュニケーション不足という背景があるのではないかと考えます。障害者と接することに慣れていない、どのような形でコミュニケーションを取ればいいか案じる。そういった遠慮が、お互いの距離や壁を作り、結果として居心地の悪さにつながってしまうのではないでしょうか。多様な方々と向き合うマインドやアクションを学ぶことで、相手に臆することなく関われるようになっていただきたいと考えています。

法定雇用率の2.3%という数字を職場に反映させてみると、やはり障害者が珍しい存在、少数派であることは否めません。

ユニバーサルマナー検定の学びを生かして、障害のある社員と遠慮することなく関わりを持つことができれば、それは格好いい、頼りがいのある上司、同僚として、障害のある社員からだけではなく、組織全体からの評価を得られるのではないでしょうか。


ユニバーサルマナー検定のサイト(スクリーンショット画像)ユニバーサルマナー検定のサイト


「すみません」ではなく「ありがとう」

ここまで「障害者を受け入れる」という観点で垣内さんのお話を伺ってきましたが、一方で障害者側が遠慮しているという側面はないのでしょうか。

誰かの手を借りたとき、「すみません」と伝えてしまうのが日本人の国民性です。これは障害者に限った話ではありません。どこか謙遜しがちで、それが、頼んでもいいのかな?お願いしてもいいのかな?という遠慮につながります。「すみません」ではなく「ありがとう」と言えるようになると、心持ちが変わるかもしれませんね。

「すみません」ではなく「ありがとう」と伝える。言葉ひとつ違うだけで、そこに付随する気持ちや前向きさが変わります。

ユニバーサルマナー研修の中にも、言葉の使い方の違いからの学びがあります。

3級の学びにあるのですが、「何かお困りごとはありますか?」と尋ねるのではなく「何かお手伝いできることはありますか?」と聞くようにしましょうという箇所があります。前者だと、相手が困っていることを前提とした問いなので、その言葉を受け取る側の気持ちを考えてみると、どう感じるでしょうか。言葉の使い方ひとつなのですが、こういった心遣いが心地よいコミュニケーションにつながります。

ユニバーサルマナーの話を聞けば聞くほど、障害者や高齢者といった方々に限らず、すべての人との関わりにおいて大切な要素が含まれているように感じられます。

それは職場という領域においても同じことです。最後に障害者雇用に対するヒントをいただきました。

障害のある社員の雇用が、お客様を受け入れる対応と同じようになっていませんか?と問いかけてみたいです。障害者雇用では、障害者を受け入れる、障害者のために準備するのではなく、その人を受け入れるという考え方が大切です。多様な働き方が広がりつつある今、障害のある方の働く機会は増えていきます。数字を追う障害者雇用ではなく、経営戦略のひとつとして捉えていただけるといいですね。


障害を価値として捉えるバリアバリューの視点から、誰もが快適に過ごせる社会を提案しています。デジタル障害者手帳の「ミライロID」や「ユニバーサルマナー」など、様々な取り組みを展開中。
ユニバーサルマナー検定はこちら
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