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「働く意欲、働く意義、そして、夢を持つこと」 ヤマハモーターMIRAI株式会社 代表取締役 髙橋愛さん インタビュー

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2021.4.15

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障害者雇用を進める企業インタビュー。今回は、静岡県磐田市に本社をおくヤマハ発動機株式会社の特例子会社であるヤマハモーターMIRAI株式会社の代表取締役 髙橋愛さんに障害者雇用の歩みと取り組みについてお話を伺いました。

執筆:ヤマハモーターMIRAI株式会社

「将来の夢」にむかい生き生きと働く社員たち

―まずヤマハモーターMRAI株式会社の会社概要を教えてください。


ヤマハモーターMIRAI株式会社は、ヤマハ発動機の特例子会社として2016年5月に特例子会社認定を受けた非常に若い会社です。静岡県磐田市のヤマハ発動機の本社の一画に事務所を設けており、35名の障害者が働いています。


ヤマハ発動機は、二輪車、ボート、電動アシスト自転車、などの事業を多軸に展開する創業66年を迎えるグローバルカンパニーで、ノーマライゼーション、ダイバーシティ・インクルージョンの推進、障害者の戦力アップの中核的な施策としてヤマハモーターMIRAIが設立されました。


―働いている障害のある方々の障害種別や仕事内容を教えてください。


障害種別は知的障害・精神障害の方々を雇用し、業務は清掃・部品包装・事務・総務を担当しています。設立当初は清掃と補修部品の包装作業からスタートしましたが、現在ではヤマハ発動機グループの社内報や健康診断キットの封入作業、マイクロフィルムのPDF化や手書きアンケートのデータ入力などの事務グループや2021年1月からは新しく総務サービスグループとして名刺作成や社内便の受付・集配業務など業務領域を広げています。


―ヤマハ発動機内の幅広い業務を担当されていますが、なぜヤマハ発動機内での障害者雇用の促進ではなく、特例子会社として設立を決意されたのですか?


当初はヤマハ発動機内での部門の設置も検討していました。ただ、先進技術やグローバル戦略の企画人材を中心に制度設計がなされた大企業において個別の障害特性に合わせた業務設定や支援員の配置、それに賃金制度、労働時間や雇用契約、労働組合や自動車工業会との調整などと多くの改革が必要となり柔軟性やスピードに課題が多くあります。


その点、特例子会社だと社長に全ての権限委譲がなされており、例えば、労働時間6時間だった障害者の就業状況を見て、翌月から7時間に変更すること等が可能になっています。そういった合理的配慮に対する柔軟性の高さから特例子会社としての設立となりました。


―なるほど。たしかに特例子会社は非常に柔軟性が高いですね。
まったく新しい組織作りにおいて、採用や人材の定着における課題はありましたか?


採用については就労移行支援事業所、特別支援学校、就労継続支援A型事業所など新たな採用ルートを開拓しました。おかげさまで地場のヤマハブランドの強みを活かして採用については順調だと考えています。


設立当初16名の採用を実施し、2018年以降は35名を推移しています。一方、定着については課題があり、当初、障害者の雇用を焦り、働く基盤を整えることができていなかったと反省をしていて、現在は一旦定着の基盤を作ることを目指しています。


―人材の定着に向けた工夫があれば教えてください。


現在は、ジョブコーチ資格を持ち障害者側に立つ支援員とアドバイザーとして実務経験者を配置するようにしています。例えば清掃であれば清掃業者で主任クラスを務めた方を雇用し、仕事をきちっとこなせる体制を作っています。


製本作業の指導を受ける様子


―障害者の定着におけるマネジメントのコツはありますか?


厳しいと言われますが、障害特性の合理的配慮以外は何もしないということです。それ以外はあくまでも企業就労なので仕事をしてもらうことを前提と考えています。やればやるほどダメですね。


―目標管理なども働く意識付けの一つになりますか?


知的障害・精神障害の方にとってもメリハリはとても大切なこと。もちろん褒めることも大事だけど、明確なルールを作ること、目標を作ることで動機づけがしっかりとすると考えています。


―採用段階で重視している点はありますか。


一番大切にしているのは、何のために働くか、将来何をしたいのか。働く意欲、働く意義、そして、夢を持つこと。入社式では、一人ひとりに社会人になったらやってみたいこと、将来の夢を発表してもらっています。それを会社も覚えているし、本人にも繰り返し伝えながら意識してもらうようにしています。


―これまでに印象的なエピソードはありますか?


冊子の封入を担当する入社1年目の社員が早朝に事務所を開けてくださいと出社してきたことですね。冊子の数が合っているかどうか不安で眠れなかったと。入社1年目から責任感を持てるってすごいですよね。この方は家族にご馳走してあげたいって目標を掲げていました。こういった意識が働く意欲に繋がり、定着に繋がっていくと思います。


紙資料のデジタル化業務の様子


「エッセンシャルな存在」をめざすMIRAIの未来

―ニュースレターにエッセンシャルカンパニーを目指すとありますが、このタイミングで業務領域の拡大に踏み切った理由はなんでしょうか。


私は着任当初から危機感を感じていました。それは、支援員への負荷が高く離職率50%と障害者が定着しても周囲が続かない状況だったからです。
支援員は、私がなんとかしなきゃと朝早く出社して仕事の準備、日中はオペレーション、そして、定時後に業務フォローと次の日の準備と、支えることに尽力した結果、疲弊してしまっていました。


やはり障害者を雇用して法定雇用率を守れば良いという軸が強すぎたと思います。当初は障害者の雇用を最優先し、そのための仕事を探しました。

持続可能なためには、障害者雇用ありきではなく機能軸・仕事軸を明確にする必要がありました。そこでヤマハ発動機のコーポレート改革にヤマハモーターMIRAIとして手を挙げることで経営戦略の一役を担おうと決意し、このタイミングとなりました。


―2021年1月より業務拡大に伴い7名が次のステップに進んだと伺ったのですが、現時点での課題などはありますか。


いきなりの異動ではなく社内実習を多用しています。字が読めるか、パソコンが打てるかの確認も必要なので気軽にやってみようとローテーションで回して適性を見極める作業をしています。知的障害や精神障害の方は変化を好まないと思っていましたが、全くの誤解でした。新しことへの挑戦は嬉しいみたいで良い意味で期待を裏切ってくれています。


さいごに

―今後社会に出ていく障害のある方へメッセージをお願いします。


ダイバーシティ・インクルージョンが進むと社会参画の機会が増え、障害特性以外には機会が平等になっていきます。すると共生社会で仲間に入れてくれるという感覚ではなく、当事者が役割を果たすために勉強し努力し続ける事が求められるので、いつ呼ばれても力が発揮できる準備が必要になります。


そのためにも何がやりたい、将来何をしたいという思いを強く持ち、入社して終わりではなく社会に出てからも常に努力をすることが大切かなと。もちろん一人で頑張るというわけではなく、私たちも一緒に頑張っていきたいと思っています。

ヤマハモーターMIRAI株式会社 代表取締役 髙橋愛さん


取材後記

障害特性に合わせた合理的配慮以外は何もしない。法定雇用率を守るための障害者雇用という失敗を糧に着実と歩みを進めるヤマハモーターMIRAI株式会社はまさにエッセンシャルカンパニーと言えるのではないでしょうか。持続可能な障害者の自立を目指し、厳しくも暖かい姿勢は家族のような絆を育み、従業員にとって失敗を恐れずに挑戦し続ける環境と言えるでしょう。

ヤマハモーターMIRAI株式会社は、静岡県磐田市に本社を構え、二輪車、ボート、電動アシスト自転車などで知られるヤマハ発動機の特例子会社。ノーマライゼーション、ダイバーシティ・インクルージョンの推進、障害者の戦力アップの中核的役割を担い、ヤマハ発動機の本社内の清掃、部品梱包、事務、総務を中心に知的障害、精神障害の方々が活躍している。
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