LGBT当事者の働きやすさのために知っておいてほしいこと
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2021.4.12
LGBT当事者は、いろいろなところで暮らし、働いています。自分の周囲にはいないと思っていても、それはオープンにしていないだけかもしれません。LGBT当事者が今よりも少し暮らしやすく、働きやすくなるために知っておいてほしいことをまとめました。
執筆:佐藤 悠祐 yusuke sato
LGBTQやセクシュアルマイノリティという言葉が世の中に浸透してきたのは、体感として、ここ3年くらいのことだ。それまでは、ホモとかオカマとかニューハーフとか、そういう言葉で一括りにされていたように思う。
セクシュアルマイノリティと検索すると、さまざまな概念が出てきて、正直当事者の僕ですらわかっていないものも多くある。
その全てを説明できるわけではないけれど、セクシュアリティには「性的指向」と「性自認」というものがあり、それは別物である、ということは皆さんが知っていてくれたら嬉しいなと思っている。
LGBTとはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字を並べてできた単語で、レズビアンは女性同性愛者、ゲイは男性同性愛者、バイセクシュアルは両性愛者(男女どちらにも好意が向く)。
そしてトランスジェンダーは生まれた時に判断された性別(いわゆる戸籍の性別)と自分が自認している性別(性自認)が異なる、あるいは違和感がある状態の人をそう呼ぶ。
僕はこのトランスジェンダーの中でも、性別適合手術や戸籍変更を望んでいる「性同一性障害」の当事者だ。
簡単に言うとLGBは「どんな人に好意が向くか」で、Tは「自分の性別をどう認識しているか」。どちらもセクシュアリティではあるけれど"完全に独立した別のもの"なのだ。
性的指向が同性だからといって、異性になりたいと望む訳でも、性自認が異性になるわけでもない。
ゲイの人がみんな女性らしい格好や女装をしたい・している訳ではないし、レズビアンだって、みんながボーイッシュな人ばかりではなく、フェミニンな格好を好む人もいる。
また、トランスジェンダーだからといって、全員が僕のように戸籍の性別変更をするというわけではない。
胸だけなくなればいい、社会の中で自分の望む性別だと認識されれば戸籍は変えなくていいという人もいれば、病気や疾患の関係で、戸籍変更に必要な治療を受けることができない人もいるし、お金や手術に抵抗があると、治療を受けることに慎重になる人もいる。
身体的性別は男性で性自認は女性、恋愛対象が女性ならば、この人は「トランスジェンダー」であり「レズビアン」である。
女性を自認している人が、全員男性を好きになるというわけではないし、男性を自認している人が全員女性を好きになるというわけではない。
僕もよく「どんな女の子がタイプなの?」と聞かれるけれど、僕は性同一性障害だとはカミングアウトしているけれど、性的指向(誰を好きになるか)はあまり明言していないけれど【男になりたいのであれば、女性が好きなんだろう】という思い込みがそうさせるのだろう。
見た目じゃ、セクシュアリティはわからないのだ。
「え、私の周りにLGBTの人いないけど…。」というのは、いないのではなくオープンにしていないだけで、もしかしたらあなたの隣で、あなたの学校や会社で、いつも行くコンビニで、たまに行くショッピングセンターで、普通に出会っているかもしれない。
「あいつ、ホモっぽいよな」
「あの人オネェ疑惑あるけど、どう思う?」
「彼氏/彼女いるの?」
「もう30代なの?なんで結婚しないの?」
これらの発言は、気づかないうちに隣の人の心にピリッとした痛みを与えてしまっているかもしれない。カミングアウトできない環境を作ってしまっているかもしれない。
あなたに悪気はないとしても。
LGBT当事者も、いろんなところで暮らしているし働いている。
あなたの職場にも、あなたの家族や友達の中にもいるかもしれない。
その人たちが今より少し「暮らしやすく」「働きやすく」なるために、あなたにできることは必ずある。
これから、僕もそういう発信を心がけようと思う。
Text by
yusuke sato
佐藤 悠祐
1991年生まれ。東京都八王子市にある【訪問介護事業所SAISON】の管理者。性同一性障害当事者。幼い頃から自分は男だと思いながらも誰にもいえずに過ごす。高校生で初めてカミングアウトをして以降「暮らす」「働く」について考え、現在は介護福祉士として障害を持つ人の暮らしをサポートしている。