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知ること、認めること、活かすこと。ダイバーシティ推進の先に見える障がい者雇用とは? 損害保険ジャパン株式会社 田中智子さんインタビュー。

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2021.5.10

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障がい者雇用を進める企業インタビュー。今回は、SOMPOグループのダイバーシティを積極的に進める役割を担う損害保険ジャパン株式会社(以下、「損保ジャパン」)田中智子さんにお話を伺いました。障がい者雇用を進めている企業やこれから働こうとしている障がい者の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

執筆:損害保険ジャパン株式会社

はじめに

自動車保険や火災・地震保険、海外旅行の保険などの損害保険を申し込む際に、お世話になることの多い「損保ジャパン」を中核企業にもつSOMPOグループ。損害保険業界内ではトップクラスのシェアを誇っています。

企業規模が大きくなればなるほど、障がいのある方々が働く数は増え、任される業務内容は多岐に渡ります。採用だけでなく、定着や活躍という点においても、様々な施策や組織体制、企業の考え方が反映されます。

今回は、グループ全体のダイバーシティを推進し、障がい者雇用の役割を担う、損保ジャパン人事部ダイバーシティ推進グループの田中智子さんに、ダイバーシティへの取り組みや障がい者雇用の現状、そして多様な方々とのコミュニケーションのヒントについて話を伺いました。

『パラちゃんねる』がお届けする障がい者雇用を進める企業インタビュー。障がい者雇用を進めている企業やこれから働こうとしている障がい者の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。



ダイバーシティへの取り組み

SOMPOグループでは、多様な価値観を認め合い、それぞれの個性を活かし協働していくことで最大限に力を発揮する「ダイバーシティ」を積極的に進めています。

ダイバーシティ推進のスローガンである「Diversity for Growth」のもと、ジェンダー、障がい、グローバル、中高年、LGBTといった多様な背景を持つ方々が活躍できる環境を整えています。


働く私たちの多様性を認め、活かすことがダイバーシティ推進であると考えています。また、前提として、社会の変化に柔軟に対応し、サービスを提供していくためにはダイバーシティは欠かせないものであるとも思います。目まぐるしいスピードで社会が変化し続けている中、お客様のニーズや環境も多様であり、私たちは今まで以上にお客様のことを想い、サービスを提供しなくてはなりません。徹底してお客様の立場を考えることはダイバーシティの本質に通じるものであり、企業に根付かせるために大切なことだと信じています。


お客様のことを想う気持ち。これは他者について深く考え、知り、受け入れるというアクションとして現れます。

想う対象がお客様から同僚に変わったとき、働き方や職場環境、コミュニケーションや人間関係といった点で働きやすさにつながっていきます。


損保ジャパンではもともと、多様な背景を持つ方が多く働いている会社です。子育てしながら働く女性社員がたくさんおりますし、全国転勤を経て、各地域の土地柄や人柄に馴染みながら生活を重ねていく社員も多いです。互いに認め合うという文化が広がりやすいのかもしれません。


損保ジャパンのダイバーシティ推進は2003年から始まりました。当初から「Diversity for Growth」を掲げ、まずは女性が活躍できる環境づくりに着手しました。


損保ジャパンの女性活躍が、グループ全体の成長につながると考え、2003年から様々な施策が実行されました。振り返れば、大きく4つのフェーズに分けられます。まずは両立支援という切り口で、育児休暇や短時間勤務が導入されました。導入後に、女性が活躍できるフィールドがどれだけあるのか、働きがいを見出せるのかといった議論が上がり、人事制度も改定されました。次に、女性のキャリア支援という切り口で、職域の拡大、意思決定プロセスへの参画などが進められました。


損害保険ジャパン株式会社|ダイバーシティと人材育成(スクリーンショット)
https://www.sompo-japan.co.jp/company/diversity_dev/diversity/


2015年頃に「働き方改革」が話題となったタイミングでは「ワークスタイルイノベーション」として、働き方そのものへの見直しがありました。そして、コロナ禍に見舞われた直近では、場所と時間に縛られない「ニューノーマル」として、自分にとって最も生産性が高く仕事ができる環境はどういったものかを自ら考え、シフトする働き方へと転じていきました。女性活躍の切り口からスタートしましたが、これらはすべての社員に該当するものになっています。ダイバーシティ推進の理想形のひとつですね。


女性社員の働きやすさ、そして活躍できる環境はどういったものか。その課題解決のアプローチを全社員に波及していくことで、社員全体の生産性が上がっていきます。

この展開は、障がいのある社員の働きやすさや価値発揮にも展開していきます。



スキルマッチ、対話重視型の障がい者雇用

女性活躍に引き続き、障がい者が活躍できる環境づくりに着手したのが2010年頃。採用だけでなく、活躍という観点に立って、育成に注力しています。


真のダイバーシティ推進という意味で「活躍」にフォーカスをしています。お客様には障がいがある方もいらっしゃいますし、そのなかでも企業で活躍されている方もたくさんいらっしゃいます。あらゆるお客様の立場を考える点からも、損保ジャパンでは、障がいのある方が活躍できる環境にコミットし、お客様に寄り添ったサービスを生み出しています。ダイバーシティ推進による一人一人の「活躍」は会社成長させると思います。


では、活躍という観点から障がいのある方を採用していく場合、どのような点に着目しているのでしょうか。


私たちはスキルマッチに近い採用が前提です。障がい者採用の多くは中途採用、アソシエイト採用なので、職場で人員が求められている仕事に対して募集をかけます。その期待役割に応えていただけるかどうかが判断基準となります。ただ、どのような経歴があったとしても、当社の仕事は未経験なことがほとんどだと思います。「こういう仕事ですがどうでしょう?」という問いに「やってみたい!」「ちょっと難しいかもしれません」といったコミュニケーションを通じて判断していきます。スキルマッチがベースですが、最後は対話を通じて、お互いに納得した状態が生まれるように取り組んでいます。


損保ジャパンでは、障がいのある社員による勉強会を実施しています。


2018年には、特例子会社であるSOMPOチャレンジドを設立し、多くの障がい者が活躍できる環境が創出されました。

SOMPOチャレンジドには、障がいのある社員へのサポート経験が長い有資格者が多く在籍していることもあり、グループ全体の障がい者雇用に対するノウハウ提供や悩み相談などに応えられる体制が、さらに強化されていきました。


SOMPOチャレンジドは2018年に設立されましたが、これは幅広い障がい者を採用していこうという意識の表れでもあります。私たちと月に1回ミーティングを開き、障がい者のマネジメントやサポート体制について多くの知恵をいただいています。「つながるチャレンジド」という取り組みも生まれ、不安や悩み事などをSOMPOチャレンジドの相談員とやりとりできるようになりました。最近ではマネジメント側の困りごとの解決に関する相談にも対応できるようになってきました。


スキルマッチ、対話重視の障がい者雇用の採用活動に加え、プラットフォーム型の職場環境整備の施策を打っている点は、障がいのある方が安心して働き、活躍できることの根拠となっているのではないでしょうか。


損保ジャパンには「人材育成の教科書」があり、障害者雇用やダイバーシティ&インクルージョンに関して、学ぶことができます。

「障がい者だから」ではない、お互いが働きやすくなるための配慮

田中さんには、ダイバーシティという観点から職場での同僚とのコミュニケーション(主に障がい者社員との関わり方)についてヒントをいただきました。


私自身、障がいのある方と働いていますが、「障がい者だから」という理由での配慮ではなく、まずはお互いが働きやすくなるための配慮を考えます。「こういう配慮をお願いしたいです」と言われることもありますし、「私もこういう配慮してほしい」と伝える時があります。一方的な配慮だけでは職場環境のバランスは取れません。お互いの仕事の理解と対話があって、初めて公平に働くことができると考えています。


障がい者雇用には合理的配慮という考え方が紐づいており、どうしても障がいのある方への配慮やサポートを第一に考える傾向があります。

ただ、田中さんの言葉通り、障がい者メンバーも働き始めれば、配慮する側・職場環境を整える側になります。その意識はとても重要かもしれません。


ダイバーシティは信頼関係がないと進みにくいものです。そのためには、良い意味でのコミュニケーション上の衝突が大切だと思っています。もともと、バイアスはそれぞれにあるもので、衝突のような機会がなければ、その存在に互いに気づくことはありません。認め合うことは簡単ではなく、価値観や偏見を取り除く努力をして初めてできることです。自分の価値観や偏見を知ることも大切なので、衝突して初めて信頼関係が生まれてくるのではないかと考えています。


ダイバーシティは障がい者に当てられた言葉ではなく、すべての人に該当するものです。田中さんの言う「衝突の大切さ」も障がいのある方へのアプローチに限りません。


私は偏見があると対話の初動が遅くなると考えています。知ること、認めること、活かすこと。この3つがダイバーシティを推進していく上で大切なことだと信じています。いろいろな方の話を聞き、価値観を知ることで、創造性を発揮することができるので、これからも自ら学んで、自ら考えていけるようにしていきたいですね。



取材後記

それぞれの企業に障がい者雇用の歴史があり、軸となる考え方がありますが、ダイバーシティ推進のスローガンである「Diversity for Growth」のもと、対話を重視している文化が障がいのある方の活躍につながっていることが伝わってきた取材でした。

信頼関係を築くための衝突。障がいのある方とのコミュニケーションにおいて、衝突を避ける節がありますが、お互いの意見や考えを臆せずに伝え合うことが重要なのだと気づかされました。

『パラちゃんねるカフェ』で原稿を書いていただいている林力希さんも、損保ジャパンの一員です。働く障がい者側の原稿もぜひご覧ください。



損害保険ジャパン株式会社は自動車保険、火災保険などの損害保険事業に加え、生命保険事業、介護事業など事業領域を拡大しているSOMPOグループの中核となる会社である。
「Diversity for Growth」を掲げ、女性の活躍推進に始まり、現在は積極的に障がい者雇用も進めており、特例子会社ではSOMPOチャレンジドもある。
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