性同一性障害の治療と休暇について
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2021.4.24
性同一性障害の診断がおり、もともと女性の体を持って生まれた僕は「乳腺摘出手術」と「子宮卵巣摘出手術」を受けました。この手術に関して、配慮が準備されている企業はまだまだ少ないのが実状です。自身の体験をもとに、働く上での嬉しい配慮について考えました。
執筆:佐藤 悠祐 yusuke sato
そして20歳の時、性同一性障害の診断がおり、21歳で乳腺を摘出、28歳の時に子宮と卵巣を摘出し、戸籍の性別が変更になった。この辺りはまた詳しく書けたらいいなと思う。
先日公開したコラムに書いていた【治療】についてを、今回は書いていきたいと思う。
僕は2020年3月に、戸籍の性別が男性に変わった。日本では「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」というもが2004年に施行されて以降、以下の5つの要件を満たすことができれば、性別を変更することができるようになった。
- 20歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
- 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
- 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
この4番目と5番目に関しては、外科手術が必要になる。もともと女性の体を持って生まれた僕は「乳腺摘出手術」と「子宮卵巣摘出手術」を受けなければ、戸籍を変更することができない。
“治療すれば戸籍が変更できる”のか“治療しなければ戸籍が変更できない”のか。
同じことでも考え方一つで見え方は違うが、自身が望む性別を生きるために手術を強要しているこの要件は人権侵害にあたるとの声明も出ている。
諸外国では手術を受けなくても戸籍の変更が認められる国もあり、今後日本でこの法律や要件がどのように変化していくのか、注目していきたい。
僕は21歳の時、乳腺摘出手術を国内のクリニックで受けた。入院はしていない。
休暇をもらった2日間のうち、1日目は手術、2日目は血液を廃液するドレーンを抜去するために、1週間後には抜糸をするために通院をした。
手術後の状態は
・腕が肩より上に上がらない(2週間程度)
・胸のあたりが強い筋肉痛になったような鈍痛がある(10日程度)
・傷口もピリピリとした痛みがある(10日程度)
といった感じだった。
もしこの記事を読んでいる企業の方で、当事者から休暇を申請された場合は、1週間は休ませてあげてほしい。2日間だけというのは本当にきつかったから。
そして28歳の時、子宮卵巣摘出手術をタイにある病院で受けた。
全身麻酔を使った手術。いくら症例が多いタイの病院とはいえ何が起こるかはわからない。
僕も血液検査に引っかかり手術が一日遅れた。次の日に無事に手術を受けることができたが、一晩中不安で仕方なかった。
手術後の状態としては
・下腹部に鈍痛がある(5日程度)
・下腹部に力を入れると痛い(笑うと激痛)(5日程度)
・発熱をすることがある
・腸閉塞になるリスクがある
といった感じだ。
性別適合手術は、術式やどの手術を受けるか、国内か海外かによって状況が大きく変わる。
休みがどのくらい必要になるのかは人それぞれなので適宜対応してもらえるとありがたい。
僕の場合、乳腺摘出手術の時は2日間(医師からは1週間は重いものを持たないでと言われたが、職場の人員不足により1日間が限界だった)、子宮卵巣摘出手術の時は約3週間の休暇を取った。
いずれも入社時に会社に「治療のために休暇を取ります」と伝えていたけれど、性別変更のための手術は「自己都合」で、普通の有給休暇扱いになるため、入社以降手術のために必要な日数の有給休暇が取得できるまで、手術は受けられない。
ちなみに、スターバックスは「性同一性障害の人の治療のための休暇」を認めていたり、J・フロントリテイリングには「性同一性障害の従業員が性別適合手術やホルモン治療を受ける際に、過去に失効した有給休暇が使える制度」がある。
このような制度があれば、治療を受けやすくなるだけではなく、有給休暇を他の用途に使用できる。
介護休暇や育児休暇のように、戸籍変更のために“強要”されている治療が「自己都合」という認識ではなくなる日が、いつか来るようにと願っている。