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仕事をするために生きているわけじゃない。心と体を徹底的に壊して気づいたこと。

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2021.4.29

16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車いすに。仕事をするために生きているわけじゃない。でも、仕事をしないと生きていけない。心と体のバランスをどう取ればいいのか。健康を損なわずに済むにはどうすればいいのか。今、心がけていること。

執筆:豆塚 エリ Eri Mametsuka

仕事とはなんのためにするのか。私は人生をより豊かなものにするためだと思っています。

仕事をしなければ生きてはいけませんが、仕事をするために生きているわけではありません。

日々を楽しく生きていくにはまず、体と心が健康でなくてはなりません。健康を仕事で損なわないようにすることが仕事以上に大切なことだと思っています。

逆に言えば、人生を豊かにしない仕事、健康を大きく損なう仕事はしなくていい仕事です。

というのも私は、心と体よりも勉学や仕事を優先して、文字通り2度死にかけた経験があります。比喩ではありません。

一度目は高校生の時、難関大学に合格せねばならないというプレッシャーに押しつぶされ、自殺未遂をしました。

当時の睡眠時間は5時間以下、勉強と部活動でパンパンの毎日でした。片親で貧困にあえいでいましたから、自分のことは自分でしなければなりませんでした。

面倒だったのでご飯をろくに食べず、いつもお腹が空いていました。不思議なものでお腹が空いたのをしばらく我慢していると、空腹を感じなくなります。そのほうが都合が良かったので、あえて食べずにいるなんて馬鹿なこともしていました。

思考力が低下していたのだと思います。なんとか生き残りましたが頸髄を損傷し重度障害者になりました。

二度目は障害者になってからのことで、健常者と同様、1日8時間・週5日働くことを目標に、健常者と同じ職業訓練校に通ったことがありましたが、2ヶ月で身体を壊し、入院しました。

季節は夏なのに節約せねばと思って飲み物を買うことをせず、ご飯も、作ることも考えることも面倒で、袋の即席麺と、魚肉ソーセージとピーマンを炒めたものばかり食べていました。

作家になりたくて、空いている時間は創作活動に当てていました。思うに、創作活動のような生産行為は休息に値しません。

趣味枠ではなく、仕事枠としてカウントしておかないと、心や身体を壊す要因になり得ます。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


障害者になってから、劇的に体力が落ち、頑張れない体になってしまいました。

最初は健常者の頃と同じ感覚で頑張ってしまい、よく体調を悪くしました。たったこれくらいも頑張れないのか、とあまりの踏ん張りの効かなさに情けない気持ちになることもありましたが、今はむしろ身体の不調が休息のサインなのだと割り切って思えます。

というのも、これは健常者の頃の経験ですが、身体がタフだと無理を無理と感じずに頑張ってしまいます。それでやられてしまうのはメンタルです。

メンタルがやられてしまうと、「私」の指揮機能がバグります。

全体の行動のコントロールが効かなくなり、身体も悪くしがちなだけでなく、人間関係をも悪化させることがあります。結果として大きなものを損ねてしまう確率が高くなってしまいます。

とはいえ、納期前や繁忙期のようにどうしても無理をしなければならないときというのはあります。

そのために、普段は楽をする努力をし(これが基本です。普段から頑張ってはいけません。余計な手間は省いて楽をします)、しっかり体調管理をして健康を保ち、無理をした後に体調を悪くしてもそれが長引かないように、致命的にならないようにします。

最近、たまたま納期が重なって忙しかった月がありました。コロナで仕事が減って困っていたので嬉々として働きまくりましたが、睡眠が足りずにぼーっとしていたのか、うっかり車いすから落ちて、足のつま先あたりを骨折してしまいました。

感覚が麻痺しているのであまり困りませんが、これはちょっと頑張りすぎだという身体からのサインだと受け止めています。

頑張れる量は人それぞれです。

身体が健康でいっぱい働ける人もいれば、なんらかの事情があってあまり働けない人もいます。頑張りを人と比べるのは止め、まずは自分の身体を大切にしましょう。

自分の不調に気がつけるのは自分しかいません。身体を壊して困るのは自分自身です(ここは笑うところです)。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


健康管理には、普段から快適に過ごすということが大切です。毎日のちょっとした不快感や不調を見逃していると、それが作業効率に影響するだけでなく、じわじわと身体を蝕むことになっていきます。

ついつい、節約しようと思ってしまいがちですが、快適に過ごすための投資を惜しまないことです。例えば空調や仕事の際に使っている椅子、寝具や食事など。

空調は節約を考えずに自分の快適な温度を設定します。私は自律神経失調障害によって体温調整ができません。

冬はエアコンだけでは足りずに石油ストーブも利用します。光熱費がかなりかかりますが、我慢して作業効率が下がってしまえば稼げないので、本末転倒です。惜しみなく灯油を燃やしまくります。

防寒具も、なるべく性能の良いものを選ぶようにしてから、外出後の体調不良が少なくなりました。

私は車いすに乗って生活しています。もちろん仕事も車いす上で行いますが、長時間同じ姿勢でいることによって、どうしても身体があちこち痛くなってきます。

麻痺で感覚の鈍い背中、そしてお尻に褥瘡を作らないようにするために、標準装備の背もたれやクッションを使わず、ちょっと高価ですが、より身体に良いものにカスタマイズしています。

ちなみに、褥瘡とは床ずれのことで、身体の一部に圧がかかり続けることによって血の流れが滞り、皮膚の細胞に栄養が行き渡らなくなることで組織が壊死して皮膚潰瘍が生じます。この傷は治りにくく、菌が入ると最悪の場合死に至ります。

このクッションのおかげか、お尻に褥瘡ができたことはまだ一度もありません。クッションは1枚6万円しますが、死ぬよりは全然いいです。

寝具も同じ理屈でお金をかけています。慢性的な腰痛持ちでもありますが、これによっていくらか軽減されているように思います。

食事に気をつけるのは当たり前のことですが、栄養のバランスを考えながら食事するのも、案外大変です。

効率よく栄養を取るために、1日1食でも完全栄養食に置き換えてみる、サプリメントを摂取するというのもありです。すると栄養バランスを気にせずに好きに食事できるので、ストレスも減りますし、栄養不足で体調不良になることもありません。冷凍弁当の宅配も便利です。

快適な生活をし、美味しいもの・栄養のあるものを食べ、よく眠れば、大抵の場合、心も身体も最低限健康を保てます。私は健康維持のため1日8時間以上眠ります。

他人から怠惰と言われようがどうしようが、自分のスタイルを貫く強い精神力が、私の仕事に繋がっています。

1993年生まれ。詩人。16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車椅子に。障害を負ったことで生きづらさから解放され、今は小さな温泉街で町の人に支えてもらいながら猫と楽しく暮らす。
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