大人の発達障害の私が苦手な「仕事の優先順位」についての工夫
1 1
2021.5.5
27歳のときに「ADHD(注意欠如多動性障害)」と診断され、いわゆる「大人の発達障害」だとわかった私が、少しずつ自分とうまく付き合うコツをつかみながら見つけた働く上での工夫をご紹介します。今回は、仕事の優先順位についての工夫です。
執筆:森本 しおり Morimoto Shiori
はじめに
よく発達障害のことを「凸凹」と表現します。能力のバラつきがあり、得意なことと不得意なことの差が大きいからです。
27歳で大人の発達障害の診断を受けた私も得意、不得意はハッキリとあります。以前、WAIS-Ⅲテスト知能検査を受けたときに、言語能力は高いけれど処理速度が遅いことがわかりました。仕事が遅ければ、こなせる仕事量は少なくなります。
今回は発達障害の私の苦手な「仕事の優先順位」についての工夫をご紹介します。
① 優先順位に迷ったら、まずは相談する
仕事には優先順位があります。
どの仕事から取りかかるべきか、というものです。
日々の仕事を進めていくなかで「これ、どっちを先にやるべきだろう」「どれから着手すべきだろう」と迷うとき、ありませんか?
どれも大事そうだけれど、自分は一人しかいない。あるいは、優先順位を自分が決めていいのかと迷う時もあるでしょう。
小さな仕事なら自分で決めてしまってもいいかもしれませんが、重要だと思える仕事の判断は上司や同僚に相談することが大切です。
障害特性によっては、複数の仕事を同時進行することが苦手な場合もあり、この判断を誤るとアクシデントを起こす可能性が高くなります。
また、個人が抱えている仕事は、個人のものだけではなく、職場全体で任されている業務の一部です。
「職場全体で見たときに、どの仕事の優先順位が高いのか」
この判断は、自分に仕事の裁量権があれば自分で判断できますが、管理職などの立場でなければ難しいはずです。
仕事の優先順位を相談できる人を、職場に一人確保しましょう。これが仕事の優先順位を間違えず、成果を出すための第一歩です。
② 優先順位の高い仕事に集中する
優先順位の高い仕事に対しては、全力で取り組みます。
当たり前のことかもしれませんが、注意欠陥という特性がある場合、別の仕事に目移りして、優先すべき仕事を置き去りにしてしまうこともあります。
「今、この仕事に集中しています!」と、周りに知ってもらうことは地味ながらも大切で、その日の仕事内容やスケジュールを誰かに共有しておくことで、仕事のモレがなくなります。
また、新しく別の仕事を振られた時には「どちらを優先させますか?」と都度都度確認しておくと楽です。
特性の活かし方でいえば、過集中の使いどころでもあります。優先順位の高い仕事に、過集中を割り当てられたら成果が出やすいかもしれません。
その反面、仕事にムラがあったり、ミスがあったり、融通がきかなかったり、空気が読めなかったりといった、自分にとってネガティブな特性を感じていることもあるでしょう。
しかし、変えられないものに対して、変えようと努力してもあまり効果的ではありません。
だからこそ、大事なところを押さえて、周囲からの信頼残高を稼ぎましょう。そういう考え方も大切だなと最近気づきました。
③ 優先順位の低いものは?
優先順位の高い仕事から順番に取り掛かっていけば、低いものの着手は後ろ回しになってしまいます。
「やった方がいい」と分かっていても、手が回りきらないところは出てきます。
優先順位の低い仕事はあきらめます。あきらめて、忘れます。その日は。
できないことを気に病んでいても仕方がないので、次の日にやろうと頭の中で解釈します。
そこまで重要ではない、緊急ではない、多くのひとに関係する仕事ではない、売上や支出に影響しない、など、優先順位が低い仕事には低いなりの理由があります。
その理由を理解し、自分を責めずに、翌日の仕事へ回すと判断する癖を身につけることも大切です。
発達障害の人と一緒に働く人にお願いしたいこと
あえて、障害の種類で切り分けますが、私に限らず、ADHD傾向の強い人はあちこちに注意力が散漫になりがちです。集中力が途切れたりすることで、ミスも起きます。
ASD傾向の強い人は独自のやり方にこだわったり、急な予定変更があると混乱したりする人もいます。
発達障害の人と一緒に働く人は、事前に「予告」するとお互いにスムーズに仕事をできることが多いと思います。
社会人として自発性を求めることはもっともですが、求めることと配慮やサポートは切り分けていただけるとありがたいです。
例えば、優先順位の高い仕事だけでも、事前に予告してもらえると、心の準備ができて上手く対処できることが増えます。
もちろん、これは強制できません。予告があったらうれしい、くらいのお願いです。
まとめ
私の仕事の優先順位についての工夫でした。
優先順位は、間違えると深刻なトラブルに発展しかねません。一度で信用を失ってしまうこともあります。
なぜ仕事には優先順位があるのか。そこをつかんでおけば、毎日を完璧に振る舞おうとしなくてもいいのではないでしょうか。
Text by
Morimoto Shiori
森本 しおり
1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。