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どのような仕事をしたいか?よりも先に、どのような自分でありたいか?を決める事から始めたい。

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2021.5.13

16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車いすに。自分にとって仕事とは何か、働くとは何か、どのように生きていきたいのか。さまざまな問いを自分に投げかけ、自分なりの答えが見つかったとき、初めて自分に合った生き方や働き方が見えてくるのかもしれません。客観的に自己分析しながら、理想を見つけていきましょう。

執筆:豆塚 エリ Eri Mametsuka

仕事とは何か?という問いに対して、私がよく行く喫茶店のマスターは「テーマ決めとプランニング」と言いました。

抽象的なテーマがあって、それを「いつ・何を・どこで・どうやってすべきか」という締切のある具体的な作業に落とし込んでいくことが仕事だと言うのです。

例えば「本を出したい」という漠然と意思があれば、「内容を書く・編集する・デザインを決める・印刷する」など、工程に分け、それぞれ締め切りを決めていきます。

この工程をさらなる具体的な工程に細かく分けていき、実際に着手できるようにしていく。これが仕事なのだと。

私はこの考え方がシンプルで好きです。

仕事とはテーマを決めて計画をすることの繰り返しで、作業にしてしまえば、それを黙々とこなすだけ。決められた作業をやりきれば仕事は達成されるのだから、できない仕事はないとも言えます。これって結構すごいことだと思いませんか。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


私はデザインをやっているので、なにかやりたいことを思いついたら、よくポスターやチラシを最初に作ってしまいます。

まず広報から考えれば、人に伝えるために具体的なイメージが描けるはずです。

例えばイベントなら、いつどこで何を何のためにやるのか、お客さんはどんな人に来てもらいたいか。想像をどんどん膨らませていけば、あとはもう実際にやるだけです。それこそ、この作ったチラシを撒いてしまえば、やるしかなくなってしまいます。

ちょっと乱暴なやり方に思えるかもしれませんが、こんな感じでイベントを主催したり会社を立ち上げたりしてきました。

政策金融公庫でお金を借りたり、NPO法人をやっていたときに助成金を獲得したりするのも、これにしっかりめの予算計画書をくっつけて面白そうなプレゼンをするだけでした。

大体は自分が面白そうだと思って企画しているので、面白くならない訳がありません。プレゼンはそれを素直に伝えるだけなので、そう難しくはないということもわかりました。

問題は仕事がうまくいかなかったときに、いかに軌道修正していくか、ということです。

うまくいかない原因はプランニングなのか、そもそもテーマ設定自体に無理があるのか。失敗した事実や間違った考えをしていたことと向き合っていくことは苦しいです。

私はよく詰めが甘いと言われました。いつも最終局面で思いもよらなかったアクシデントに見舞われてしまうのです。

本当にちょっとしたミスの積み重ねなのに、大事に至ってしまうのは、何か根本的な原因がある場合が多いです。私の場合はやらねばならなかったことをやり忘れていたり、相手に気を遣いすぎて本来伝えねばならないことだったのに無駄な遠慮をして言えていなかったり。

もともと記憶力は悪いほうではなかったので、記憶に頼りすぎて、予定や用事を手帳に書きとめておく癖がなかったことがわかりました。

今でもついサボりがちですが、週に一回でも手帳をまとめる時間を作るように心がけています。あとは仲の良い人と今日やらなければならないことをお互いに言い合って確認するようにしています。しっかりと言語化することが何よりも大切です。

以前は人に嫌な思いをさせたくない気持ちが強くて気を遣いすぎていましたが、仕事なのだと割り切ることで(歳を重ねるうちに段々と図々しさが増してきたのもあるのか)、だいぶ言いたいことを言えるようになってきました。

やらねばならないことが増えれば増えるほど、比例してミスは増えます。もちろん無いにこしたことはないけれど、ミスを気にして自分を責めすぎてもいけません。

マスターは「落としたタルトは元には戻らない」と言っていました。

どんなに落としたことを悔いても責めても、タルトは戻ってこない。今はとにかく気を取り直しこれを片付けてまた焼き直すしかないのです。また落とすかもしれない、と思って臆してしまえばタルトは焼けません。それでは喫茶店をやっていけません。

仕事への挑戦を恐れないようにするには「まあいっか」の気持ちも大切です。



どうやって生きていきたいか? 
どのような人間でありたいか? 

というのも、案外同じようなことなのかもしれません。

なりたい自分という大きなテーマがあり、仕事も私生活も含めて長期的にプランニングしていく。永遠にたどり着くことのないテーマです。けれどもその過程に生きる実感があるのだと思います。生きる実感こそ、人生を豊かにします。

前回の記事で書いたこととも似ているけれど、仕事とはこれらが入れ子構造になっているのだと思います。そうやっていくと社会そのもの、生きることそのものの全体像が見えてくるのではないでしょうか。

実際仕事をやっていて一番問題になるのは人間関係だと思います。これが厄介で、出来ることなら一番気を取られたくない問題です。

苦手な上司とどうやって付き合っていくか、とか、同僚とどうやったら仲良くできるか、とか…。非常に消耗します。

障害を負っているとなおさら、周りとは違うことでやりにくい部分が出てきます。私は、どこまで配慮を求めていいのか、どこからがわがままなのか、ということをよく悩みました。

以前、仕事とは人生をより豊かにするためにあると書きました。仕事上の人間関係も同じだと思っていますが、仕事の場合、好きで集まっている集団というわけではありません。原則として心や体の健康を損なうことはしてはいけません。



人間関係を良好に保つ基本に、型どおりの挨拶はきちんとすることが挙げられると思います。挨拶は色々考えずにやれることだし、挨拶をして損することはまずないので、ここはちゃんと押さえておきたいものです。

障害も含めて、自分がどんな人間かをはっきりさせることは特に重要です。例えば、障害によって立てないので高いところのものは取れない、子供が居るので仕事よりも家庭を優先する、お酒の付き合いはしたくない、みたいなことです。

「あの人はそういう人」と思ってもらうことが一番楽です。できないことははっきりとできないという態度を示し、多くを期待されず、こちらも期待しないことです。

もちろん、能力を身につけるという意味の努力はいるし、与えられた仕事を一生懸命にやって身につくこともあります。最初から何もかも「できない」ことにしてしまうのは勿体ないと思うし、それをやろうとすれば今度は高い社交スキルが必要になってきます。

私はあまり社交スキルが高いほうでなく、最大愛想ポイントがそもそも少ないので、「できる」を増やすほうに傾きがちです。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


仕事をする中では意地悪な人もいて、立場が弱いといじめを受けやすいです。障害があるというのもやはりいじめのターゲットになりやすいように思います。

何を言ったかではなくて、言い方や立場を気にする人もいます。ただケチを付けたい人、やらない理由を探し続ける人などもいて、私は未だにどう付き合っていいのかわかりません。

お前はわがままだとか無礼だとか言ってくる上司は、大抵自分のわがままや無礼に他人を付き合わせようとしている場合が多いと思っています。そういった職場ではやりがいを持って働き続けるというのは難しいかもしれません。

会社は辞められます。時として辞めることに意義もあると思います。

良い環境に恵まれて同じ会社に長年勤めることができれば、当人にとってそれほどいいことはないと思いますが、今どきそれが社会的な価値になるということは特にないでしょう。

やりたい事業と人材と予算があればいつでも会社を作ることだって可能です。フリーランスで頑張る手もあります。

ホッキョクグマは南国では暮らせないし、クマムシは世界中どこにでもいますが、カモノハシはオーストラリアにしかいません。

自分の居場所を決めるのは自分。自分にとって、より楽により楽しく、より豊かな暮らしができる居場所を見つけましょう。

1993年生まれ。詩人。16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車椅子に。障害を負ったことで生きづらさから解放され、今は小さな温泉街で町の人に支えてもらいながら猫と楽しく暮らす。
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