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トランスジェンダー当事者が働きやすい職場を作るために共有している3つのこと〜個人編〜

2021.5.28

LGBT当事者の働きやすい職場づくりは、まだまだ整備されているとは言いづらいです。トランスジェンダー当事者の私自身が、働きやすい職場を作るために職場づくりにおいて工夫している点をご紹介します。心理的安全性を保つために、あらかじめ発信していることとは?

執筆:佐藤 悠祐 yusuke sato

コミュニケーションというのは難しい。自分が良かれと思って言ったことで相手を傷つけてしまう可能性もあるし、何気ない会話の中で聞かれたくないことを聞いてしまう可能性もある。

「あ、それ聞かれたくないんだけどな…」
「今の言われ方、すごく嫌。」
「その言い方は傷つくな。」

という一つ一つの「嫌」から、職場での居心地や働きやすさは決まっていくのだと10年間働いて感じてきた。

トランスジェンダーの僕が、自分の職場を心理的に安全な場所にするために周囲に共有している「嫌なこと」が3つある。

①身体のことについて根掘り葉掘り聞かないでほしい。
②僕が性同一性障害であることを僕の知らない人に言わないでほしい。(言うなら事前に僕に言ってほしい)
③LGBTについて否定的なことを言ったり、盛り上がるだろうと思って悪ふざけのネタにしないでほしい。

この3つについて、ここからは詳しく説明していく。



身体のことについて根掘り葉掘り聞かないでほしい

1つめは「身体のことについて根掘り葉掘り聞かないでほしい」ということ。この身体のことに関しては、手術のことや手術前のことも含めてだ。

もちろん、当事者から相談を受けるという形であれば、教えられる情報は教えたいと思うけれど、職場において僕の身体がどうなっているかなんて関係ない。

「昔は何カップあったの?」「まだ生理は来るの?」など、僕が性同一性障害だと知った人の中のモラルがない一部の人たちが、ずけずけとプライベートに踏み込んでくるようなことは、少なくない。

カミングアウトしていると、何を聞いても許されるだろうとでも思っているのかもしれないけれど、僕は聞かれたくないから最初に伝えることにしている。



僕が性同一性障害であることを僕の知らない人に言わないでほしい

2つめは「僕が性同一性障害であることを僕の知らない人に言わないでほしい。(言うなら事前に僕に言ってほしい)」ということ。これは「アウティング」という問題が絡んでくる。

アウティングとは、ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーなど(LGBT / LGBTQ+)に対して、本人の了解を得ずに、他の人に公にしていない性的指向や性同一性等の秘密を暴露する行動のこと。

2015年には一橋大学の学生がアウティングされたことがきっかけになり、自殺をしてしまった。とても悲しい事件だ。

これは広く知られてほしいのだけど、当事者があなたにカミングアウトをしたからと言って、その他の全員に知られていいわけじゃない。あなただから、信頼してカミングアウトをしたのだ。

企業に対してはパワハラ防止法の中でアウティング防止策を講じることが義務付けられている。

僕も一度「良かれと思って」アウティングをされたことがある。自分じゃ言い出しづらいだろうから。と一緒に働く職員に無許可で言われてしまった。

しかし、セクシュアリティに限らず、自分が抱えているものを誰かに伝えるのは、自分のタイミングがいいし、性別適合手術などに否定的な意見の人がいて攻撃されようものならそれはもう安全な職場ではない。

アウティングは、絶対にしないでほしいし、もし周りに伝える必要性があるなら、本人と話して許可を取ってほしいと思う。



LGBTについて否定的なことを言わないでほしい

3つ目は「LGBTについて否定的なことを言ったり、盛り上がるだろうと思って悪ふざけのネタにしないでほしい」ということ。これは、主に飲み会の場やちょっと雑談の中で起こることを回避したいからだ。

オカマ・オネェ・ホモ・ゲイというのはネタにされやすい(そもそも使わない方がいい言葉である)。

以前参加した職場の飲み会でも「お前こっち(オネェ)なんじゃないの?」「うわ、気持ちわる〜」という会話が繰り広げられ、みんながゲラゲラと笑っていた。カミングアウトしている僕の目の前でだ。

きっとその発言をした人は場が盛り上がればいいと思っていただろうし、お酒もはいっていたから悪ノリと言われたらそうかもしれないけれど、僕は盛大に傷ついた。

ああ、自分も気持ち悪いって思われてるんだろうな。と。

そのように職場以外の場面でも、当事者を傷つけ、結果的に職場が心理的に安全な場所ではないと認識させてしまうこともある。

これはLGBTだけではなく、障害や特性に関しても同じだ。



僕は以上の3つをあらかじめ共有することで、職場の心理的安全性を高めている。

知らなかった、考えもつかなかった、ということで相手を傷つけてしまうのはもったいない。

それは職場の人にも「相手をなるべく傷つけないで過ごせる」という面でポジティブな効果をもたらすのではないかと思う。

1991年生まれ。東京都八王子市にある【訪問介護事業所SAISON】の管理者。
性同一性障害当事者。幼い頃から自分は男だと思いながらも誰にもいえずに過ごす。高校生で初めてカミングアウトをして以降「暮らす」「働く」について考え、現在は介護福祉士として障害を持つ人の暮らしをサポートしている。

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