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トランスジェンダー当事者が働きやすい職場を作るために共有している3つのこと〜職場編〜

2021.6.14

LGBT当事者の働きやすい職場づくりは、まだまだ整備されているとは言いづらいです。トランスジェンダーの僕が、職場を心理的に安全な場所にするために、LGBTQを「いないもの」にせず、自分のことも周りのことも大切にできるようにし、その人の「言いたくない」を守るための取り組みとは?

執筆:佐藤 悠祐 yusuke sato

僕が10年前に立ち上げたNPO法人Startline. net は【多様性のある福祉社会の実現】を理念に掲げ、LGBTQ当事者が介護に関わることになった時に、理不尽や不利益な扱いを受けないような環境を整えるために様々な活動を行ってきた。

そして2020年6月に、訪問介護事業所を設立した。

前回の個人編に引き続き、トランスジェンダーの僕が、今の事業所を心理的に安全な場所にするために取り組んでいることを3つご紹介したい。

①福利厚生は異性間夫婦だけが使えるものにしない。
②特性や属性を主語にして否定的な話をしない。
③個人について質問をするときは「言いたくなかったら答えなくても構わない」と必ず前置きをする。




①福利厚生は異性間夫婦だけが使えるものにしない。

育児休暇、産前産後休暇、介護休暇、慶弔休暇。結婚や出産の祝金。傷病休暇、傷病手当。福利厚生というのは労働者が使える権利で、様々な場面に合わせたものが用意されている。

しかし、多くの企業は「異性間夫婦」のみを想定して運用されているのだ。

同性パートナー同士でも子供を授かり、育てている人もいれば、パートナーの親の介護が必要になる人もいる。結婚式や葬儀も同様だ。

法的に結婚できるという制度がないことで、LGBTQの存在が「ないもの」にされてしまい、本来労働者として使用できるはずの権利が使えなくなってしまっている職場もある。

弊社ではこの問題を解決するために、すべての福利厚生を同性・異性に関係なく使用できるようにした。何も特別な手続きはいらない。

全ての人が「私も認められている」と感じてもらえたら嬉しい。



②特性や属性を主語にして否定的な話をしない。

介護は対人援助職だから、時に悩みやストレスから愚痴をこぼしてしまうこともある。それは仕方のないことだ。

しかし、もし愚痴や悩みを相談するときは、「車いすの人ってさ」「ALSの利用者がさ」「◯◯な人って」などと大きな主語で語らないようにと社員に話している。

「ゲイってさ」「レズビアンの人ってさ」「LGBTの人は」という大きな主語は、そこにいるけれどカミングアウトしていない人のことを傷つける。

私や家族もそう思われているんだ、自分も否定されるんだ、嫌われるんだ。と誰かを働き辛くてしまう。

そしてそれは、この場にいない同じ特性を持った人を傷つけてしまうことになるだけでなく、いつか自分に返ってくる。

自分が車椅子ユーザーになったとき、自分が難病になったとき、仕事がうまくいかなかったとき、誰かと同じ失敗をしてしまったとき。

自分の中に大きな主語で特性や属性を否定する感情を持つようになってしまうと、自分や自分の大切な人のことを否定する日が来てしまう。



③個人について質問をするときは「言いたくなかったら答えなくても構わない」と必ず前置きをする。

上司や先輩からの質問というのは有無を言わさず答えなければならない、という考えはまだあると思う。

僕も代表になったり、職場での経験年数が多くなるにつれて、自分の意図しないところで「強制力」を持ってしまったと感じている。

面談や雑談の場面で、今後のために聞いておいた方がいいかもしれないと思い質問することはよくあるのだけど、その時には必ず「答えたくなかったら答えなくていい」と伝えている。

プライベートなこと、その人が公にしていないこと、僕の知らない過去。さまざまな事情を抱えた人と働き、暮らしを共にする仕事だからこそ、パーソナルスペースは大事にしたい。

距離感や関係性を大事にしていかないと、介護の仕事は続かないと思っているからだ。



僕は以上の3つを大切にすることで、職場を心理的に安全なところだと感じてもらえるようにしている。

LGBTQを「いないもの」にせず、自分のことも周りのことも大切にできるようにし、その人の「言いたくない」を守る。

そういう職場を今後も作り続けたいと思う。

1991年生まれ。東京都八王子市にある【訪問介護事業所SAISON】の管理者。性同一性障害当事者。幼い頃から自分は男だと思いながらも誰にもいえずに過ごす。高校生で初めてカミングアウトをして以降「暮らす」「働く」について考え、現在は介護福祉士として障害を持つ人の暮らしをサポートしている。

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