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職場で障害のことってどこまで聞いていいの?配慮はしても、遠慮は要らない。

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2021.6.16

「同僚の障害のことってどこまで聞いていいんですか?」という質問を障害者雇用セミナーの中で尋ねられることがあります。「あなたと同僚の方の関係性次第です」とまずはお答えするのですが「躊躇せずに聞きましょう」というのが最終的な回答です。障害者社員に配慮はしても遠慮は要りません。

執筆:佐々木 一成 Kazunari Sasaki

同僚の障害のことってどこまで聞いていいの?

障害者雇用に関するセミナーなどで講演していると「同僚の障害のことってどこまで聞いていいんですか?」という質問を投げかけられることがあります。

その質問に対して、個人的には「あなたと同僚の方の関係性次第です」とまずはお答えします。

同僚の方が障害をどのように捉えているかによっては、言いやすい場合もあれば、言いづらい場合もあるからです。

障害を肯定的に受け止めていれば、障害の種類や状況、障害を負った経緯などを話してくれるでしょうし、障害を受け入れられない状況にあれば、あまり話してくれないはずです。

障害はプライベートなことなので、信頼関係が築けていなければ話してくれません。また、あなた自身の人間性や考え方に左右されるものでもあります。

障害者が自身の障害について話すことはカミングアウトであるという認識を持たなくてはなりません。


「障害について聞いてもいいのか」という遠慮

障害者社員と同じ職場で一緒に働くにあたって、障害に対する配慮やサポートは必要なので、実際のところ、障害について聞かないということは難しいはずです。

障害者社員側が求める合理的配慮も、企業側から見れば、相手の障害を具体的に把握できなければ、提供することができません。

「同僚の障害のことを聞くこと」は、お互いがスムーズに仕事するための最低限必要なコミュニケーションです。

おそらく「障害について聞いてもいいのか」という質問の背景には、障害者にとってはカミングアウトになるだろうという想定があり、職場環境の改善のための質問が、精神的なストレスをかけてしまうかもしれないという配慮なのではないでしょうか。

ただし、それは配慮ではなく、遠慮です。



冒頭では「関係性次第」と述べましたが(関係性が大事であることは間違いありません)、適切な回答としては「この質問をしてもよいのかと躊躇し、遠慮する必要はありません。むしろ聞くべきです」となります。

職場は仕事をする場所であり、ともに働くメンバー同士が、どうすれば効率よく、気持ちよく働けるか、そして成果を提供できるかを追求しなくてはなりません。そのために必要な質問であれば、遠慮する意味はありません。

目の前の障害者社員についてあれこれ考えることも重要ですが、職場全体の生産性を考えすことも忘れてはいけません。これが遠慮と配慮の違いです。

また、採用面接の際に、面接担当者などに障害について説明していることがほとんどなので、実は障害者側も慣れているはずです。

とはいえ、障害者にとってこの質問は、自分自身の内面を伝えるカミングアウトに近いので、精神的に負荷がかかることであり、仕事のしやすさを導く合理的配慮という言葉には「合理的」という文言がある通り、ロジカルなことです。

このズレについては認識しておいたほうが無難です。


配慮と遠慮の違い

障害者に対する関わり方の中には「遠慮」と「配慮」があります。

「障害のことってどこまで聞いていいの?」という質問においても、相手のことを考えると聞かない方がいいのではないのかという関わり方が「遠慮」であり、全体のことを考えると聞いた方がいい(どうやって聞こうか工夫する)という関わり方が「配慮」です。

自分自身や相手自身のことだけを考えると「遠慮」という関わり方に陥りやすく、全体を俯瞰して考えられるようになると「配慮」という関わり方に繋がりやすくなります。

「遠慮」は当人同士の関係性の中では傷つかずに済むという効果がありますが、職場全体で見ると逆効果につながることもあります。

これは障害者側も考えなくてはならないことで、周囲から「遠慮」を集めるような振る舞いは、働きづらさが解消されないまま、互いにストレスが蓄積するような職場環境になってしまいます。

誰に対しても障害についてオープンにしなさい、説明しなさい、というわけではないですが、「配慮」を受け取るためには歩み寄ることも必要です。障害者側も「遠慮」ばかりしては意味がありません。

それぞれが遠慮せずに、配慮し合える職場環境を導いていただきたいですし、それが障害者に限らず、すべての人にとって働きやすい職場となるのではないでしょうか。

1985年生まれ。生きづらさを焦点に当てたコラムサイト「プラスハンディキャップ」の編集長。
生まれつき両足と右手が不自由な義足ユーザー。年間数十校の学校講演、企業セミナーの登壇、障害者雇用コンサルティング、障害者のキャリア支援などを行う。東京2020パラリンピック、シッティングバレーボール日本代表。

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