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障害者雇用における採用チャネルの選び方

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2021.6.17

2021年3月1日から法定雇用率が2.3%に、対象となる事業主の範囲は43.5人以上となりました。障害者雇用への注目が集まる中で、既に多様な人材により組織のイノベーションに成功する企業があれば、一方でようやく障害者雇用に向けて重い腰を上げる企業などさまざまです。前回まで障害者雇用で知っておくべき法律として(1)障害者基本法(2)障害者雇用促進法(3)障害者総合支援法(4)障害者差別解消法(5)障害者権利条約の5つを紹介しました。今回は、障害者雇用における採用チャネルついて解説したいと思います。

執筆:中塚 翔大 Shota Nakatsuka

はじめに

企業の存在価値を示す指標は、企業の歩みと共に変化します。

創業当初は自社の売り上げや利益を追求することで投資家や株主から評価されていたのに、企業規模、知名度の成長と共にSDGs(Sustainable Development Goals)、ESG(Environment Social Governance)など障害者雇用含め企業の社会的責任についても求められ始めます。

初めて障害者雇用に取り組む人事担当者は何から始めたら良いか、四苦八苦してしまいますよね。。。

まずは障害者雇用で知っておくべき法律を確認しておきましょう。

障害者雇用における目的・方針を決める

障害者雇用への取り組みを始める時、社会からの目、社会的評価を鑑みて、致し方なく重い腰を上げたという企業が少なくないという実態があります。

しかしながら、外的要因をきっかけとした障害者雇用に本質的な企業価値は生まれるのでしょうか。

社内への説明はどうすれば良いのか、目先の数値目標だけに焦点を当て、受け入れ体制は整備しなくても良いのか。

外的要因をきっかけとした障害者雇用は社内の不安や不満の温床となり、トラブルのきっかけとなってしまう可能性は否定できません。

障害者雇用に取り組む上で最も大切なのが、障害者雇用の目的・方針を協議して意識統一を図ることです。


体制に応じた採用チャネルの選定

障害者雇用の目的・方針が決定したら、次に知識や意識の浸透を図るための社内研修などを組み立てると共に採用チャネルを選定します。

障害者雇用における採用チャネルは大きく6つあります。

  • 自社ホームページに求人情報を掲載する
  • 求人媒体やハローワークに求人を出す
  • 特別支援学校と連携する
  • 合同面接会・就職フォーラムに参加する
  • 人材紹介会社を活用する
  • 就労移行支援事業所を活用する

それぞれの採用チャネルにおける特徴を解説したいと思います。

自社ホームページに求人情報を掲載する

障害者雇用に取り組む企業の多くは自社ホームページを所有していると思います。既存の採用情報ページに障害者採用ページも追加することで採用コストを掛けずに応募者の獲得が可能になります。

求人媒体やハローワークに求人を出す

有料の求人媒体は、掲載期間、記事サイズや配信対象など複数のオプションを選択することで費用には濃淡があり、正社員・契約社員採用であれば1人当たりの平均採用コストは50~70万円程度と言われています。

一方、無料で求人掲載できる媒体も存在しており、Indeed、求人ボックスなどが有名です。ハローワークもその一つと言えるでしょう。

無料の求人媒体の特徴としては、採用コストがかからない点が最大の利点と言えますが、掲載内容や範囲に制限があったり、多くの求人の中に埋もれてしまうため採用実績に繋がらないケースも少なくありません。

特別支援学校と連携する

特別支援学校とは、心身に障害のある生徒が通う学校のことで、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準じた教育に加えて障害のある生徒の自立を促すための必要な教育を受けることができます。

平成30年度時点で特別支援学校は全国47都道府県に1,141校あります。これまで「ろう学校」「盲学校」「養護学校」と区分されていましたが、現在は「特別支援学校」に一本化されています。

特別支援学校では、1年生、2年生から現場実習を行うため実習生の受入れを積極的に実現することで卒業生の採用が可能になり、採用コストがかからずに安定的な人材の確保を望めます。

合同面接会・就職フォーラムに参加する

合同面接会・就職フォーラムとは、集団で行う就職イベントでさまざまな業種、企業がブースを構え、来場する候補者をその場で選考できる仕組みです。

コロナ禍によりオンライン化されていますが、1日で複数名の候補者を選考できることが利点と言えますが、同時に出展する他企業と争うためイベント期間中は集客、説明会、面接に対する人員の導入が必要となります。

面談数など保証してくれる就職イベントも増えてきていますが、運悪く知名度の高い企業などと出展が被ってしまうと著しく費用対効果が悪くなってしまう可能性は否定できません。

出展費用は、ブースの大きさや位置、地域による集客数などにより異なりますが、最低でも50万円以上が相場ではないでしょうか。

人材紹介会社を活用する

人材紹介会社とは、求職者と企業側のマッチングを仲介するエージェントのことです。多くは成功報酬型を採用しており、求人掲載に費用はかかりませんが、採用または入社時に候補者に支払う想定年収の25~35%の人材紹介料が発生します。

特徴としては、主に転職やキャリアアップを目指す人材が登録するため、スキルや経験値に焦点を当てたピンポイント採用が可能となり、候補者との連絡を人材紹介会社が代行してくれるため、煩雑な作業を削減できることが利点と言えるでしょう。

一方で、人材紹介会社は人事担当者の代理ともなる存在のため、社風や求める人物像などの共通認識がずれていると全く採用に繋がらないという場合も少なくなく、人材紹介会社との相性が重要なポイントになります。

就労移行支援事業所を活用する

就労移行支援事業所とは、企業で就労したい障害のある方が働くために必要な知識や能力を最大2年間(最大1年の延長が可能)の期間を利用して訓練できる場所です。

特徴としては、自己の障害特性を理解し、受容した中で職務スキルや労働習慣など対処法を支援員と共に訓練しているため、就業後の定着率が高くなっています。

また、2018年からは就労定着支援が促進され、入社後も支援員による長期的なサポートも受けられるため、初めて障害者雇用に取り組む企業は安心できるでしょう。

就労移行支援は障害者の就労支援の枠組みで行われている行政サービスなので、企業の実質負担はほとんどありません。企業の積極的な活用が今後予測されています。


まとめ

いかがでしたでしょうか。

採用チャネルはさまざまですが、障害者雇用の目的・方針により人材ニーズは異なり、また、採用における人員リソースや採用予算、受け入れ体制の状況においても適切な採用チャネルは異なります。

全ての採用チャネルを駆使することができれば、採用確率は上がりますが、作業が煩雑になることで結果的に社内トラブルの温床となり、離職率も高まってしまうかもしれません。

障害者雇用の取り組みのステップに応じて採用チャネルを選定できるとWin-Winな関係性の中で企業価値を上げていくことができるでしょう。

1985年生まれ。多様性を推進するプロジェクト『パラちゃんねる』の管理人。人材派遣・人材紹介など就職・転職支援に精通し、延べ1万人以上のキャリア支援の経験を持つ。耳で聞くラジオ、目で読むコラム、自由な出会いの求人サイトを運営し、障害のある方々含め多様性の浸透に向け活動を続けている。

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