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筋ジストロフィーの私が経験した「体調」を大切にして「やりがい」で苦しんだ社会人生活~後編~

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2021.6.21

障がいと夢の間で悩み苦しんだ就職活動を終え、愛知の広告代理店に入社。理想通りの仕事ができ、周囲にも恵まれたにも関わらず、仕事と病気とのバランスをうまくとれず、わずか4年で退職。
転職活動、就職、失望、逃亡・・・今回は「やりがい」を感じられず働くのが嫌になってしまった、私の中で「暗黒時代」と名付けられている2社目の就労経験の後半をご紹介します。

執筆:高山 あっこ Akko Takayama

会社でもうまくいかない。親ともうまくいかない。イライラして過ごす日々。

「うつ状態」と診断された私は、「会社のせいで…」と言うために、すぐに上司に申告しました。

「文句を言ったぞ!」とつかの間のスッキリを味わったのは一瞬、私を取り巻く環境はさらに悪化しました。


ただでさえ「障がい者」として、どう接していいか分からない感じで扱われていた私でしたが、この報告で「うつ状態の障がい者」に発展。完全に腫れ物を触るような扱いになってしまいました。

誰と話しても表面的な会話だけで虚しさばかり募る日々。「もうここではかつてのような、やりがいのある仕事や豊かな人間関係は叶わないんだ」と悟った私は、会社に何かを期待したり、馴染もうと努力をすることを止めました。

始業2、3分前までトイレで時間をつぶしギリギリの出社、定時になったら誰よりも先に帰る。仕事がなくて暇な時間は、いつでも辞められるように引継ぎの資料を作るという日常を繰り返していました。

当時は常に微熱気味だったので、会社に行きたくない時はそれを利用して休むようになりました。あまりにも頻繁に休むので母親はイライラ、それに対して私もイライラするようになり家の雰囲気も悪くなりました。

「病気に生まれなければ、夢を捨てなくてよかったのに。1番行きたかった会社にも行けたのに」。

思い通りにならない状況を、全部周りのせいにして過ごすようになっていました。

辛くて長い1日の中で、唯一自分らしくいられる時間

会社でもうまくいかない、親ともうまくいかない。悶々とする日々、私を救ってくれたのは前の会社の友人と過ごす時間でした。

当時オンラインゲームにはまっていた私は、帰宅してから就寝までのほとんどの時間を前の会社の友人と一緒に、ゲームや電話をして過ごしていました。

他愛もない話からしんどい話まで、ありのままの自分で話せ常に味方でいてくれる友人との時間。辛くて長い1日の中で、唯一心から笑える時間でした。

休日はおいしいものを食べたり、映画を観に行ったり、旅行に行ったり。とにかく好きなことをして過ごすようにしました。「このために頑張っているのだ」と気持ちのバランスを取っていたのだと思います。



会社に行こうとアクセルを踏むと動悸がするように

プライベートを充実させることで平日の勤務を乗り切っていた日々でしたが、ストレスは確実に溜まっているようでした。

ある日を境に始まった通勤時の動悸。会社に行こうと車のアクセルを踏もうとすると、ドキドキと心臓が激しく鼓動し呼吸が激しくなるようになりました。

最初は発作的に起こる程度でしたが、次第に会社に着くまでの1時間ずっとになり、最終的には途中で休憩しなければ会社に行けなくなりました。

これはダメなサインだ。そう判断した私は「もう無理です。ここから抜け出したいです。」と当時付き合っていた人に助けを求めることにしました。

突然の打ち明け話にも関わらず「わかった。会社を辞めてこっちに引っ越しておいで」と驚くほど男気溢れる返答。結婚を理由に退職することになりました。

表面上では「遠距離恋愛中の彼氏との結婚による寿退社」というとても円満な形の退職。本当の理由を話し、会社の環境に一石を投じたかった気持ちもありましたが、自分もそこまで抗ったわけではないし、そこまでの権利はないなと思い止めておきました。

勤務期間は、わずか1年8か月でした。

終わりに

自分の中で「暗黒時代」と名付けた、思い出すだけでしんどくなる2社目の就労経験。当時の障がい者を取り巻く労働環境を、はっきり突きつけられたと感じる出来事ばかりでした。

辛い思いばかりでしたがこの経験があったからこそ、その後「自分に合った働き方」を真剣に考えられるようになったのだと思います。

障がい者を雇用している企業すべてが、このような労働環境ではありません。ただ、自分に合った働き方はどのようなものか、自分が働いている(働こうとしている)企業でその働き方を実現できるか、確認することは重要ではないかと思います。

Co-Co Life 女子部所属。進行性の難病筋ジストロフィーを抱えながら2人の娘を子育て中。コピーライター・フリーライター。地元でママライターとしても活動。現在、どの電動車いすが最適かをお試し中。

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