障がい者と健常者がともに働く時に必要なこと
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2021.6.25
私には、出生時のトラブルが原因で、脳性まひという障がいがあります。現在、障がい・難病のある女性向けのフリーペーパーを制作しているNPO団体で事務局業務をしていますが、これまで自分が働く中で感じた「障がい者と健常者がともに働く」ために大切なことをまとめました。
執筆:榎本 佑紀 Yuki Enomoto
はじめに
はじめまして。
今回から、パラちゃんねるカフェにてコラムを書かせていただくことになりました、榎本 佑紀(エノモト ユキ)と申します。
私には、出生時のトラブルが原因で、脳性まひという障がいがあります。
上下肢にマヒがあり、自分の意思とは関係なく体が動いてしまう「不随意運動(ふずいいうんどう)」が主な障がい特性です。
他にも、発言が不明瞭で初対面の方に聞き取りづらい「構音障害(こうおんしょうがい)」があります。
日常生活では、長時間歩くことが困難であるため、電動車いすの購入を検討しているところです。
現在は、障がい・難病のある女性向けのフリーペーパーを制作しているNPO団体で事務局業務をしております。
主な業務は、新規の読者さんに対する受付や病院・福祉施設などへの配送業務です。他にも、ライターとして誌面の制作にも参加しています。
このNPOの活動には、身体・知的・精神といった障がい種別もバラバラなメンバーが参加しています。他にも、今まで全く障がいのある人と関わったことのない、プロ編集の方まで、様々なバックグラウンドの人たちが集まっています。
どこか孤独を感じていた就労継続支援事業所時代
この活動を始める前は、就労継続支援A型事業所でWEBライターの仕事をしていました。
当時在籍していた事業所には、身体障がいの利用者は私一人しかいませんでした。周囲の利用者さんは、ほとんど精神障がいか、発達障がいの方々。そのため、どこか孤立しているような気分になってしまうこともありました。
最も苦労したのは、同僚とのコミュニケーションの取り方です。相手に強く言い過ぎてしまうと、深く相手を傷つけてしまうということもありました。またその逆に、自分が不快になってしまうことを言われた際に、どのように対処すればいいのか分からず、悩んでしまうこともありました。
他にも、床に大きな荷物が置かれていて、思うように歩けなかったり。
「障がい種別が異なると、分かり合えることはない」
その当時、私が強く思っていたことです。
また施設に「職業指導員」と呼ばれる職員さんがいて、私たちに指示を出していました。
「障がい者は健常者の指示を聞いて仕事するのみ」
そんな構図が私の頭の中に強く残っていました。
WEBライティング業務を行っていたものの、自分が書いた原稿が、どのような媒体でどのような方々に読まれているのかを知るすべもなく、いまいち仕事のモチベーションが上がらない状態が続いていました。
障がいの有無にかかわらず、フラットな場で仕事をする
結局、勤続3年を迎える前に就労継続支援事業所を辞めました。その後に、現在のNPO法人での活動に参加するようになりました。
これまでの活動を通じて、私は「障がいのある・なしに関係なく、フラットな場で仕事をする」という考えを意識づけることができました。
最初のころは、自分の意見を相手に伝えることもままならなかったのですが、企画会議などでは積極的に自分の意見を求められるため、次第にではありますが、自分の意見を伝えることができるようになりました。
次に感じたことは「できないことを補い合うのに、障がいの有無は関係ない」ということです。
具体例をあげると、私が遠方まで取材に出かけるときは、健常者のメンバーにサポートしてもらっていますが、その一方で、私がパソコン作業や事務処理が苦手なメンバーに対して、アドバイスすることもあります。
配慮されることもあれば、配慮することもある。障がい者も健常者も関係なく、できるひとがサポートするという構図ができあがっています。
かつての障害者雇用のように「障がい者は健常者の指示を待っているだけ・法定雇用率を満たすために、デスクに座っているだけ」というスタイルではなく、障がいの有無に関わらず、みんなが同じ目標に向かって仕事をしていく。そして、支え合う、助け合う。
これこそが、本来の障がい者と健常者がともに働く、ということなのではないでしょうか?