言いたいことが伝わらないーもどかしい構音障害とは
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2021.7.5
出生時のトラブルが原因で、私には脳性まひと構音障害という障がいがあります。現在、障がい・難病のある女性向けのフリーペーパーを制作しているNPO団体で事務局業務をしています。今回は構音障害による働くうえでの困りごと、解決するための工夫、そして障害との向き合い方をまとめました。
執筆:榎本 佑紀 Yuki Enomoto
はじめに
私の障がい特性の一つに「構音障害」があります。
適切な発音が出来ず、コミュニケーションで困ることがある状態を構音障害といいます。構音障害を引き起こす原因はさまざまで、原因によって、診療を行う診療科も異なります。
今回は、私の構音障害との向き合い方、働くうえでの困りごと、解決するための工夫をまとめます。
「エーキがたべたい??」カ行が言えなかった幼少期
生まれつき言語が不明瞭だった私は、幼少期から、言語療法に通っていました。
言語聴覚士の先生の後に続けて五十音を発声してみたり、シャボン玉を使って、肺活量を調整する練習をしていました。
特に印象に残っているのは、「カ行」の発音がとても苦手だったということ。
例えば「ケーキが食べたい」と言おうとした場合、どうしても「エーキが食べたい」となってしまうのです。綺麗に「け」の発音ができるようになったのは、小学校入学直前でした。
「お母さん、ケーキ食べたい」この一言を言えるようになったとき、母や言語療法の先生と喜びあったのを覚えています。
コロナ渦でコミュニケーションに不安が…
構音障害の私が仕事をする上で一番困難なのは、電話対応です。
対面で会話をしているときは、自分の言いたいことが相手に伝わらないときは身振り手振りを使って伝えているのですが、声だけのやり取りになってしまう電話、しかも直接お会いしたことのない人とのやり取りでは、上手く意思疎通が出来ない場合もあります。
そんな時は、何度も話したり、似た意味の違う言葉で伝えるようにしています。とはいえ、取材先とのお電話では相手の時間を取らせてしまうことになりかねないので、同僚に対応を交代してもらうこともあります。
昨年からのコロナ渦で、フリーペーパーの取材も対面ではなく、zoomなどのオンラインを使用することが増えました。
小さな画面では、自分の身振り手振りが上手く相手に伝わっているのか、伝えたいことがきちんと相手に伝わっているのか、不安になることが多くなりました。
そんなときは「チャット機能」を効率よく利用しています。
コミュニケーションを諦めたくない
今でも、親友や家族とのコミュニケーションでも自分の言いたいことが上手く伝わらないことがあります。
それでも私は「会話をすること」が好きです。
相手と同じ気持ちを共有することによって、お互いの仲をより深めることができると信じているからです。
小中学生のころは、「どうせ私が発言しても、聞き取ってもらえないし…。」とネガティブになることもありました。
しかし、大人になるにつれ、仕事の一環として講演会に参加するなどの経験を積むことにより、自分の発声にも自信が持てるようになりました。
不特定多数の前で自分の考えを伝えることができるようになったのは、私にとって大きな変化であったと思います。
「自分の声で自分の思いを正確に伝える」ーーそのために、自分ができる工夫や努力はこれからも最大限に取り組んでいきたいと思います。