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車いすユーザーから見た雨の日の困りごと。

2021.7.7

7月に入ったものの雨の日が多く、梅雨明けまでもうしばらく時間がかかりそうです。移動に困難を抱える車いすユーザーにとって、雨の日はさらに困りごとが多くなります。そこで今回は車いすユーザーの雨の日事情と、それらを解決するための工夫を紹介します。

執筆:中村 珍晴(ちん) Takaharu Nakamura

傘をさせない

車いすユーザーにとって、雨の日の外出はとても困難です。

まず、自走式車いすの場合、両手は車いすを漕ぐために使うので、傘をさしながら移動することができません。

上半身に麻痺がない車いすユーザーの中には、傘を左右の手に持ち替えながら、もう一方の手で車いすを漕ぐという方もいますが、私が真似した場合、車いすをコントロールできずに立ち往生すると思います。

一方、電動車いすユーザーは腕に麻痺がなければ、傘をさしながらの移動は可能です。なぜなら、電動車いすは片手でスティックを前後左右に動かして移動するため、もう一方の手は空いているからです。

しかし、電動車いすユーザーの多くは自走するほどの腕力がなく、傘をさすことができない方は少なくありません。このように車いすと傘は、相性が良いとは言えません。

では、レインウェアとの相性はどうでしょうか。レインウェアは両手を自由に使えるため、傘のような不便さは解消されます。

しかし、レインウェアの種類によっては足を覆うことができずに、膝から下がびしょ濡れになる可能性があります。

ズボンと上着に分かれているタイプのレインウェアは、膝から下が濡れないことに加え、動きを邪魔しないのでとても便利です。ただ、このタイプは着脱に時間がかかる点がデメリットです。

このようなレインウェアの課題を解決してくれる車いすユーザーに適したポンチョ型のレインウェアもあります。このタイプは頭の上から足先までカバーしてくれることに加え、着脱も簡単にできます。



雨の日の坂道は要注意

雨の日は交通事故が増えますが、車いすも例外ではありません。

車いすは後輪に付属しているハンドリムを漕いで移動します。雨の日は、このハンドリムが濡れてしまい非常に滑りやすくなるためコントロールしづらくなります。

特に気をつけないといけない場面が下り坂です。

下り坂では、スピードが出やすくなるため、リムを握り締めてもタイヤがスリップし、自分の意志で止まれない可能性が高くなります。事故は止まれないときに起きやすいので車いすユーザーにとって下り坂は非常に危険です。

そのため、経路に複数の選択肢がある場合は、多少遠回りになっても広く平坦な道を選ぶほうが無難です。

また、雨の日の危険は屋外だけではありません。雨の日に屋内のタイルで足を滑らせた経験はありませんか。

駅の構内やマンションの廊下などで使用されているタイルの中には、濡れると滑りやすいタイプがあります。そして、車いすでこのタイルの上を移動するとブレーキをかけていても止まれないことがあります。

雨の日は屋外だけでなく、屋内でも事故の危険があります。

車の乗り降り

下半身が麻痺している車いすユーザーは、腕の力で車に移乗します。

移乗後は車いすを車内に積み込む必要があります。移乗から車いすを積み込むまでの時間は速い人で1分、腕が不自由な場合は10分以上かかることもあります。

そのため、自宅の駐車場に屋根がない場合、雨ざらしの中で乗り移りをしなければなりません。

私の住んでいるマンションの駐車場には屋根がないため、雨の日にはドアに大きい傘を立て掛けて移乗しています。また、勤務先である大学の駐車場も屋根がありません。

「雨の日は車への移乗が大変です。」と大学に伝えたところ、荷物の搬入などで使用する屋根のあるピロティに駐車できるように手配してくれました。

現在は、仮に雨が降っていても濡れる心配をしなくてすむようになりました。また、大雨のときなどは介護タクシーを利用することもあります。



職場に配慮してもらえると助かること

以上のように、車いすユーザーにとって雨の日の外出は危険が多いです。緊急な用事がなければ、外出を控えることもあります。

しかし、仕事となると雨が降っているからといって休むわけにはいきません。その日の天候によって出勤するか、リモートワークにするかを選択できるようになると車いすユーザーの負担は軽減されます。

昨年、緊急事態宣言に伴いリモートワークが普及しました。私も大学の授業を自宅からオンラインで実施しました。オンライン授業特有の大変さはありましたが、雨の日の移動の心配がなく働けることは大きな恩恵でした。

感染拡大が収まり、気兼ねなく出勤できるようになっても、多様な働き方を目的として、リモートワークを維持してほしいと願っています。

まとめ

今回は車いすユーザーの雨の日事情をご紹介しました。

車いすユーザーにとって、雨の日は事故や怪我などの危険や、移動にかかる手間と時間が増えます。それでも、事前に雨が降ることを予測ができていれば、適切な準備ができます。

しかし、ゲリラ雷雨のような突然の大雨はそうもいきません。雷雨の中で立ち往生している車いすユーザーを見かけたらぜひ「何かお手伝いしましょうか」と声をかけてくださると助かります。

1988年生まれ。大学1年生のときにアメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し車椅子生活となる。その後、アメフトのコーチを6年間経験し、現在は、大学教員としてスポーツ心理学の研究とアスリートのメンタルトレーニングを実践しつつ、YouTubeチャンネル「suisui-Project」で車椅子ユーザーのライフスタイルを発信している。

このライターが描いた記事

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