PARA CHANNEL Cage

平均給与20万円以上を実現した障害者雇用、 凸凹が活きるデコボコベース株式会社 取締役副社長 松井清貴さん インタビュー

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2021.8.2

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障害者雇用に取り組む企業インタビュー。今回は、発達に凸凹があるお子さまから大人までを対象にした障害福祉事業(障害児通所支援、就労移行支援、自立訓練(生活訓練))を展開するデコボコベース株式会社 取締役副社長 松井清貴さんに障害者雇用の歩みと取り組みについてお話を伺いました。

執筆:デコボコベース株式会社

はじめに

デコボコベース株式会社は、児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」、放課後等デイサービス「ハッピーテラス」、就労移行支援「ディーキャリア」をはじめ、発達の凸凹があるお子さまから大人までを対象に全7業態を展開しています。

2014年7月に設立され、地域格差がなく質の高い教育・福祉の柔軟な支援体制づくりを目的に業界初のフランチャイズモデルを確立。現在は直営16拠点を含め全国186拠点(2021年6月現在)に広がっています。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた全国の福祉事業所支援など「発達に凸凹があっても、社会の一員として自然に受け入れられ、活躍できる」社会の実現を目指し福祉業界を盛り上げています。

今回は、ハッピーテラス株式会社 取締役副社長 松井清貴さんに障害者雇用の現状や採用における工夫など色々とお話を伺いました。

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障害者雇用に取り組む企業インタビュー。障害者雇用を推進している企業やこれから働こうとしている障害のある皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。


デコボコベース株式会社の事業紹介

合理的配慮の判断基準は「甘え」かどうか

-まずはデコボコベース株式会社における障害者雇用の現状について教えてください。


2020年の障害者雇用における法定雇用率2.3%、実雇用率2.15%に対して、デコボコベースにおける直近の自社の障害者実雇用率は6.9%です 。将来的には実雇用率10%を目指しています。「CSR企業総覧(雇用・人材活用編)」で公表される障害者雇用率ランキングを一つのマイルストーンとしているためです。


私たちは事業の特性上、発達に凸凹がある方でも能力を発揮し活躍される姿を常に間近で見ているため、その方の特性にあった環境さえ用意できれば、法定雇用率はあまり高いハードルではないと考えています。自社では発達障害のある方を中心に精神障害から身体障害の方まで幅広く採用しています。


-発達障害・精神障害のある方で自分の特性に合った職種や環境がわからず、安定的な就労が実現できていない方もいます。デコボコベース株式会社にいらっしゃる方々は具体的にどのようなかたちで就業されているのでしょうか。


全員ではありませんが、私たちが展開する就労移行支援事業「ディーキャリア」の卒業生も多くいます。「ディーキャリア」では、障害特性や強み、セルフケアの方法、配慮事項などの詳細を記載したナビゲーションブックを作成しているため、企業が求めているスキルと本人が持っているスキルのマッチング精度を高めることができています。


その方の特性を活かして活躍できる職種に就くことができれば、あとは環境的配慮をすることで問題なく業務に従事できますし、成果が期待できます。例えば、じっと座っていられない方であれば事務職より、普段の業務に動きのある支援員に配属をする、感覚過敏が強ければ在宅や就業時間を通勤ラッシュから避けるなどの配慮をしています。


-環境的配慮を整えるうえで、どこまでやるべきかの一定の判断基準が必要かと思います。合理的配慮は明確な判断基準や定義付けが見えづらく、結果的にコミュニケーションのズレを招く場面が散見されています。デコボコベース株式会社として合理的配慮の判断基準があれば教えてください。


合理的配慮の判断基準は「甘え」かどうかだと考えています。障害特性に起因するか否かが重要です。例えば、パニック障害があるから満員電車に乗れない、通勤時間をズラして欲しいというのは障害特性に起因しています。一方で単純に満員電車が嫌だからという理由では、「甘え」になります。後者においては、組織全体として生産性が落ちていれば改善を検討しますが、個々の状況に応じた合理的配慮とは異なります。


デザイン業務で働く様子

求める人材は障害者雇用か否かではなく、求めるスキルセットがあるかどうか

-合理的配慮の定義付けが難しい中で人材の定着と生産性の向上を考えると、採用段階での環境との相性マッチングも重要になると改めて実感しました。ところで、多くの企業が採用チャネルの選定に悩んでいることと思います。採用チャネルの選定方法についてアドバイスを頂けますでしょうか?


会社の受入れ体制から採用チャネルを選定することをオススメします。例えば、特例子会社のように業務の切り分けや受け入れ体制が整備されている場合、採用チャネルにこだわる必要はないのかもしれません。一方、これから障害者雇用を始めようと考えている会社など雇用経験の少ない会社にとっては、ノウハウを持った就労移行支援員などの支援があると安心できます。


-スキルマッチを前提とした場合、障害度合いが軽度の方を中心に採用するケースも見られます。貴社の採用に至るまでの経緯や考え方を教えてください。

私たちは、障害種別や障害度合いなど障害者雇用ありきの採用はしていません。エンジニア、デザイナー、事務職、営業や支援員など各部門に1名以上は配属されています。社内で不足するリソースと必要なスキルセットを満たす人材を選定したうえで、社風に適した人材を採用するようにしています。大切なのは障害特性と必要なスキルセットが合うかどうかで環境的配慮で補える場合は問題なく採用しています。そのため一般的な障害者雇用の給与相場が14.6万円(2019年6月時点)の中で、デコボコベース株式会社の平均給与は20万円以上を推移しています。


さいごに

-デコボコベース株式会社として今後の展望を教えてください。


既に多くのメンバーが重要な戦力として活躍していますが、さらに高みを目指して戦力の収益化を実現したいと考えています。また、従業員141名の中小企業ゆえに業務領域の幅に限りがあり、今まで知的障害のある方と一緒に働く機会を創出できていません。企業が成長した先により多くの方と一緒に働ける環境が整っていくと良いと思っています。


-今後の社会に出ていく生きづらさを抱える方にメッセージをお願いします。

大切なことは1人で悩まないことです。地域若者サポートステーション、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援や相談支援、行政、ハローワークなど社会の資源はたくさん存在しています。孤独は本当につらいので、1人で悩まずに社会資源をうまく活用できると良いと思います。

デコボコベース株式会社 取締役副社長 松井清貴さん

取材後記

インタビュー後にはフラットな組織作りや障害者と一般雇用の垣根のない評価制度についてもお話を伺いました。目指すべき1つの組織の在り方だと感じました。

初めて障害者雇用に取り組む企業では、社内への意識の浸透や採用チャネルの選定や受け入れ態勢の整備など、模索していることと思います。

目先ではなく長期的なゴールを見据え、法定雇用率ありきではなく、経営戦略としての障害者雇用を実現するためにも就労移行支援事業所のサポートを受けながら、ノウハウを蓄積していけると良いですね。

デコボコベース株式会社は、発達の凸凹がある子どもから大人を対象に児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」、放課後等デイサービス「ハッピーテラス」、就労移行支援「ディーキャリア」などを運営するソーシャルカンパニー。業界初のフランチャイズモデルを確立し、現在は直営16拠点を含め全国186拠点を展開している。
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