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どうすれば謙虚になれるのか。働くうえで大切だと考える「謙虚」について考える。

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2021.7.15

16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車いすに。会社勤め、起業、フリーランスとさまざまな働き方を経験してきた中で気づいた「謙虚」の重要性。どうすれば謙虚になれるのか。失敗を恐れない?とにかく手を動かし続ける?白黒思考を辞める?私自身が感じていることをまとめました。

執筆:豆塚 エリ Eri Mametsuka

はじめに

前回の記事では、仕事で求められる謙虚さとは何か?ということについて考えてみた。

謙虚は卑屈と傲慢の対極にあり、結論として、謙虚とは自分自身の立ち位置を正確に見極めることだと書いた。バランスそのものとも。

では、どうすれば謙虚になれるだろうか。

長らく親や上司から傲慢だの我が強いだの言われてときに卑屈になっていた私が考えることなので、正直なところあんまり当てにならないかもしれないが、そういったことは一切棚に上げたまま、こうありたいものだと理想を考えてみたい。



失敗を恐れない

仕事をする上でできればやらかしたくないこと、それが失敗だ。

誰しも好きで失敗なんてしたくない。お客様や同僚たちに迷惑をかけてしまうかもしれない。怒られるかもしれないし、評価が下がってしまうかも。周りから馬鹿にされるかも…。何よりそんな自分が不甲斐なく恥ずかしい。

けれども、失敗をしてしまったときこそ謙虚になれるチャンスだ。

まずは失敗してしまったこと、その事自体を認める。そして、どうして失敗してしまったのか、自分を見つめ直す。

「ごめんなさい、次はうまくやります、またやらせてください」ときちんと頭を下げることができれば、若いうちは大抵許してもらえる。ときには上司が的確なアドバイスをくれるかもしれない。二度とこんな失敗をしないように改善点を洗い出し、気をつける。

仕事を頑張っていれば誰しも失敗がある。だからこそ過度に落ち込まないで、これは大切な経験の一部なんだと割り切れば、失敗は無駄にはならない。

失敗を恐れて何も挑戦できない頭でっかちな人になるよりよっぽどいい。

とにかく手を動かす

案ずるより産むが易しとは言ったもので、考えるよりも先に手を動かしてみると案外仕事というものは片付いていく。

あまり頭を使わなくて済む単純作業ならなおのこと、我を忘れて没頭する。没頭もまた、謙虚の条件のひとつのように思う。

目の前のことに一生懸命になっている人間は、手元に集中しており、自然と頭を垂れている。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


上手くいかないことがあっても挑戦し続ける

計画通り物事が進まないことがあっても、イライラせずにしぶとくやっていく。

ときにはサボってしまうこともある。飽きたりうんざりしたり、他に気になることがあったりすることもある。

向いてないんじゃないかとか、なんて自分は怠惰な人間なんだと自分のことが嫌になったり責めたくなったりすることもあるが、あんまり細かいことは気にせずに、明日からまた頑張ろう。

もちろん、頑張ってみた結果、本当に向いてなかったことがわかることもある。そんなときは無理せず諦める勇気が必要なことも。

白黒思考をやめる

白黒思考とは、良いか悪いか、0か100か、など極端な考え方をすることを言う。

これを意識してやめるのはなかなか難しい。白黒思考は不安だからこそ陥る、心の防御反応のようなものだ。

しかし、100%の味方なんてプライベートならともかく仕事の場にはまずいない。

100%完璧に仕事を仕上げることは出来ないし、100%向いている仕事もないだろう。

こつこつ経験を積み、少々傷ついても死んだりしないことを体で理解し、グレーに慣れていくしかないのかもしれない。

とはいっても、この白黒思考こそ若者の持つ特権でもあると思う。理想を旗印に現状打破するパワーもきっとここにある。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


役職や肩書きに囚われずに対等な信頼関係を積み重ねる

組織内で役職をつけてもらって人の上に立てば気持ちがいいものだし、威張りたくもなる。逆に責任が重荷になる人もいるかもしれない。

こんな私だが、24歳のとき、株式会社の取締役の肩書を得て10人近い年上の従業員を擁したことがある。その後フリーランスに転向したが、所属がないと信用は簡単には得られない。

時には足元を見られる(文字通り見られることもある。車椅子なので……)。

所属とその中での地位というものは組織運営には便利だ。上司や先輩の命令に部下や後輩は従う。そこに人間関係が出来ていなくても、そういう決まりになっている。そうでなければ組織は回らない。

だから組織は「ルール」が好きだ。

ときには上司が「カラスは白い」といえば部下も「そうだ」と言わざるを得ないこともある。「正しさ」の価値観すらも組織内のルールに委ねた状態だ。そのほうが組織は安定する。

閉鎖的空間の中で支配と服従の関係を強めていけば、人は御しやすい。ルールによって異端を排除していけばなおのことだ。

しかし、本来の人間関係はそういったものではない。

もっと本質的な個々人の人間性に即したものであり、道義的な善悪はもちろん、さらにそれを越えて正しいか否かですらなく、いかに相手と良好な関係でいたいか、つまりお互いの信頼の積み重ねによるものだ。

信頼関係とは不安定なものでもある。他者は変えられないことをベースにした人間関係だからだ。

だからこそ、自分の意見を持ち、反対の意見は聞き入れはしても気にせず、自分を嫌って足を引っ張ろうとする人のために自分の時間を割かないようにする。それはときに組織のルールと相反するものになるかもしれないが、謙虚であることとは従順であることと同意義ではない。

まとめ

こうやって書いてみると、多くを経験し、失敗や挫折を味わい、傷つき、痛みを知ることによって己の限界を見極めていけば自然と謙虚になっていくのではないかという気がしてきた。

痛みは人を孤独にする。痛みはその人にしかわからないからだ。

そして痛みは自身が生身の肉体を持ったただひとりきりの人間であることを自覚させてくれる。「私」は「私」でしかないのだと。そうやって痛みと向き合って自分の輪郭をしっかり掴み取っていくことで、傲慢にも卑屈にもならずに客観的に自身を知っていくのではないか。

それは同時に、他者もひとりの人間であることを知ることに他ならない。

教条主義的に他者を裁くことが人と関係していくことにどれほど無意味なことであるか、痛みは教えてくれる。

1993年生まれ。詩人。16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車椅子に。障害を負ったことで生きづらさから解放され、今は小さな温泉街で町の人に支えてもらいながら猫と楽しく暮らす。
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