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あなたなりの良さを見つけることが障がい者雇用の働きやすい職場をつくる。セブン&アイ・ホールディングス特例子会社 株式会社テルべ インタビュー

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2021.9.16

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障がい者雇用に取り組む企業インタビュー。今回は、北海道北見市に本社があるセブン&アイ・ホールディングスの特例子会社、株式会社テルべの代表取締役社長藤本さん、現場で障がい者社員のサポートを行っている大石さんにお話を伺いました。テルベのこれまでの歩みや取り組みについてお話を伺いました。

執筆:株式会社セブン&アイ・ホールディングス

はじめに

セブン‐イレブンやイトーヨーカドーなどの店舗でお馴染みのセブン&アイグループ。全国各地に店舗が広がっていることもあり、企業規模もさることながら、働いている従業員の数は大きな数字となります。

グループ全体の障がい者雇用とノーマライゼーションの推進に向けた取り組みの一環として、1994年3月にイトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパン、デニーズジャパン(現セブン&アイ・フードシステムズ)、ヨークベニマルと北見市の出資で、特例子会社である株式会社テルべが設立されました。

椎茸栽培、印刷、コピーセンターという3つの事業を中心に、21名の障がい者が働いています。



ダイバーシティ&インクルージョンの実践


▲株式会社テルべ 代表取締役社長 藤本さん


株式会社テルべは、ハンディのある人もない人も高齢者も若い人もそれぞれの特色をいかして、平等な立場で就業可能な職場を設立するという創業理念のもと、1994年3月に設立されました。


藤本さん:当社では「ダイバーシティ&インクルージョン」を実践しています。障がいのある人とない人が一緒の空間で働いていることはもちろんですが、11名のシルバー人材センターの方にも働いて頂いておりまして、地域で暮らす障がい者や高齢者の方々が活躍できる場所を作っています。人は皆、何かしらのハンディを抱えているもので、だからこそ、お互いに支えあって、良さを伸ばしていくことが大切だと考えています。「めげず、たゆまず、ほがらかに」を合言葉に事業を推進しています。


椎茸栽培、印刷、コピーセンターという3つの事業の柱があり、それぞれの事業部門で障がい者社員の方々が活躍しています。中でも特徴的なのが、本社のある北海道北見市で進められている椎茸栽培です。


藤本さん:北海道は椎茸栽培が盛んな地域であり、また、私たちにはグループ各社の店舗があるので、流通・販売できるという強みもあり、チャレンジしました。原木からではなく、菌床から作って椎茸を栽培していることが特徴的で、手間暇かけた椎茸を生産しています。



椎茸栽培のそれぞれの工程では、障がい者社員の障がい特性にフィットした作業が多数あります。

藤本さん:菌床は、簡単に言えば、おが粉に椎茸の種菌を植え、栽培するために成形したブロックのことです。菌床作りは、撹拌・袋詰め・殺菌・冷却・菌の培養など、椎茸栽培は、間引き、浸水、温湿度調整など、非常に根気のいる作業の繰り返しで育てられるのですが、障がい者社員がそれぞれの工程で、その役割を果たしてくれています。また、収穫された椎茸はすべて同じ大きさではないので、品質や大きさの判断は知的障がいや聴覚障がいの方が担当してくれています。障がい特性に合った仕事を適材適所で任せています。


印刷の事業は、パソコンを使ったデザイン業務や印刷、製本加工や梱包など3つの部門に分けられ、得意な分野で障がい者社員が働いています。


藤本さん:入社1年目で断裁作業をはじめとする各種製本作業、慣れてきたら印刷機の操作というように、一人ひとりの業務スキルの習得状況によって、ステップアップできる体制を準備しています。また、技能の習得とモチベーションの向上を目的としてアビリンピックにも参加し、2019年は北海道で金賞を受賞、2020年には全国大会出場と、意欲的に挑戦し経験を広げる社員も出てまいりました。


コピーセンターは、東京のセブン&アイグループの本社ビルにあり、グループ各社のコピー業務や資料の電子化業務が進められています。



3つの事業を軸に21名の障がい者(2021年5月現在) が働いています。

全障協(公益社団法人全国障害者雇用事業所協会)から「障害者活躍企業」の認証を受け、また若者の採用・雇用に積極的、かつ若者の雇用管理の状況などが優良であるという「ユースエール企業」の認証を受けるなど、社会的な評価も高まっています。


藤本さん:北海道の特別支援学校と連携し、新卒での障がい者雇用を進めています。地方の特性上、障がい者が働く場所、活躍できる場所が少ないという社会課題もあります。「ダイバーシティ&インクルージョン」は障がい者のためだけの言葉ではないので、地域との連携や幅広い世代の方々との協業なども含めて、実践し続けていければと考えています。


あなたなりの良さを見つける。障がいのある方と共に働くやりがい


▲株式会社テルベ 大石さん


障がい者社員の方々と日常的に関わり、仕事の受け渡し等のやりとり、障がいや心身の状況把握の役割を担っているのが大石さん。常にそばにいるからこそ、やりがいを感じることもあれば、難しさを感じることもあります。


大石さん:一人ひとりの成長をそばで感じられることが一番のやりがいです。あなたなりの良さを見つけること、とも言えるかもしれません。一緒に働く私たちがそれぞれの良さを感じ取り、受け止め、尊重しなくては、成長につなげることができません。さらに、私たちの気持ちやスタンス、態度ひとつで、仕事の生産性もそれぞれの人間関係も大きく変わってしまいます。互いに認め合っている実感があるからこそ、やりがいがあるのかなと感じています。


一人ひとりの良さを見つけることは簡単ではありません。どのような視点で相手を観れば、どのように振る舞えば、あなたなりの良さを見つけることができるのでしょうか。


大石さん:「相手を尊重する気持ち」「一緒にこの仕事を乗り越えるんだという気持ち」でしょうか。「このやり方です」という言葉にはできないですね。苦手はどこにあるかな、どのような工夫ができるのかなと思って接していると、例えば、仕事の動きがパッと変わる瞬間があるんです。「今、何か変わったな」と肌で感じられるような。業務指示を出すにしても、ただ指示を出すのか、相手の状況を尊重してその場に合った指示を出すのかで、相手の動きが変わってきます。そのわずかな違いで見えてくるものがあるのかもしれません。


大石さんのお話は、障がい者社員に限らず、そして仕事の現場にも限らず、人と人との関わりの中で重要なことではないでしょうか。


大石さん:当社で働く知的障がいのある社員とのエピソードなのですが、私が慣れていない作業を一緒にやっていると、グッドタイミングで的確なアドバイスをくれるんです。いつ見てたの?と思うくらいで。また、台車に積んだ菌床が倒れそうな時にとっさに駆けつけてくれたこともありました。気遣いができるし、細やかに状況を見ているんです。



大石さん:その気遣いを見ていると、誰が障がいのある・ないを区別しているのだろうと感じました。知的障がい者だから、あれができない、これができないといった見方をするのはどうしてだろうと。こういう気づきが職場で増えてきて、最近、健常者という言葉があまり好きではなくなってきました。「健常者の私が」と伝えた時点で、こちらが指導する立場であるという枠にはめ込んでしまう気持ちになってしまうんです。お互いに目の前にいる相手を尊重しあえる関係が進めばいいなと思っています。


テルベのこれから



1994年の設立以来、セブン&アイグループのノーマライゼーション推進の役割を担い、3つの事業を中心に障がい者雇用を進めてきたテルべのこれからを、藤本さん・大石さんはどのように描いているのでしょうか。


藤本さん:ノーマライゼーション推進の役割としては、マジョリティとマイノリティはいろいろなシチュエーションによって変わることを周知できればと思っています。この啓発が、私たちのこれからの役割のひとつです。以前、いつもより早く出社したときに、聴覚障がいの社員の皆が楽しそうに手話と口語を組み合わせて話していたんです。私も入りたいなと思ったとき、同じようにコミュニケーションが取れない私は、その輪に入れないと感じました。この分断のようなものを感じたとき、マイノリティに属される人たちはこういう想いをしながら日常を送っているのかと改めて気づきました。このような気づきや体験を伝えていくことが、セブン&アイグループ全体のノーマライゼーション推進やダイバーシティ&インクルージョンの実践につながっていくのではないかと考えています。



大石さん:
長く一緒に働いていると、就労のかたちについて考えることがあります。当社で働き、40代・50代となっていく中で、体力の衰えや持病、これまでのプレッシャーやストレスなどから、一般的に言われている定年年齢と違う生き方・社会参画の仕方があるのではないかなと感じています。また、定年のタイミングが来たとき、何もない生活というか、朝起きてから行く場所がないという問題を抱えるかもしれません。個々の心と身体の状況に応じたタイミングで一般就労から福祉的就労に切り替わるなど、働く障がい者が「生涯笑顔で活き活きできる就労のかたち」について考えていきたいです。当社は地域ぐるみで障がい者雇用を進めている背景もあるので、地域の社会福祉法人などと連携しながら、未来の課題を考えていきたいと思っています。


取材後記

特例子会社というと障がい者雇用を推進しているイメージが先行しますが、テルべのホームページには「障がい者ならびに高齢者の雇用拡大のために」という文言があり、働きづらさを抱えやすい属性の方々の働く機会と中長期的なライフキャリアを想像されている印象を受けました。

「障がい者雇用=ダイバーシティ&インクルージョン」なのではなく「ダイバーシティ&インクルージョンにおけるひとつの分野が障がい者雇用である」という、このわずかな違いが重要なのかもしれません。


セブン&アイグループは、コンビニエンスストア、食品スーパー、GMS、百貨店、専門店など、多様な業態を通じて、お客様の生活ニーズに幅広く応え、障がい者雇用を積極的に進めており、グループ企業で採用実績がある他、北海道北見市には特例子会社のテルべもある。
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