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車いすユーザーの働き方にフリーランスという選択肢を加える

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2021.8.11

現在私は、大学教員として大学で勤務しつつ、休日に副業としてメディア運営やライター業をしています。正規雇用と個人事業主の二刀流を実践する中で、それぞれの働き方のメリット・デメリットを経験しました。今回は、車いすユーザーの方にフリーランスで働く選択肢を提案してみます。

執筆:中村 珍晴(ちん) Takaharu Nakamura

はじめに

前提として、この記事では車いすユーザーに「フリーランスとして働くべきだ」と意見を押しつけるわけではありません。会社員とフリーランスのそれぞれにメリット・デメリットがありますし、適切な働き方はその人によって異なります。

ただ、ここ10年でフリーランスとして働きやすい環境が徐々に整いつつあります。「働き方の選択肢を増やす」という視点で続きを読んでいただきたいです。

車いすユーザーにとってフリーランスのメリット

フリーランスとは、会社や団体などに所属せず、仕事に応じて自由に契約する人のことです。おもにライター、デザイナー、プログラマー、動画編集などの職種において、個人で仕事をしている人を指すことが多く、自分のスキルなどで仕事をしている人といえます。

私はフリーランスという働き方は、脊髄損傷をはじめとした車いすユーザーに適していると考えています。その理由は、フリーランスのメリットが車いすユーザーの困りごとを解決してくれる可能性が高いからです。


フリーランスのメリット①「通勤がない」

会社員であれば勤務時間に合わせて何かしらの手段で通勤する必要があります。一方でフリーランスの場合、自分が仕事を最も効率的に進められるようにコーディネートすることができます。業種によってはすべての仕事を自宅ですることも可能です。

車いすユーザーにとって通勤は働く上での困りごとのひとつです。公共交通機関を利用する場合は、多くの乗客がいる中で駅員さんに乗降車のサポートをお願いする必要があります。

また、自家用車で通勤するためには職場に駐車場が必要になります。通勤上の困りごとの詳細は以前の記事で解説しているのでそちらを参考にしてください。



通勤が困難な人は、自宅で仕事をできるようになると、解決できる問題が多いです。これは、フリーランスと限定するよりも、厳密には「場所に制限されない仕事を見つける」というイメージのほうが適切かもしれません。

フリーランスのメリット②「勤務時間を自分で決めることができる」

車いすユーザーの中には、私のように排泄障害を抱えている人もいます。排泄障害があると、排便を自分でコントロールできなくなるため、時間を決めて排便をする必要があります。

私の場合、週2回ほど約1時間半かけて浣腸液を使って排便をしています。排便を管理しながら会社員として週5回職場で働くことは容易ではありません。もし、8時に自宅を出発する場合は、5時までに起床して排便をする必要があります。

毎回の排便で十分な量が出ていれば、外出時に便が漏れることはほとんどありませんが、実際は、体調の変化や食事の内容(冷たいものや脂っこいもの)によって急に漏れてしまうことがあります。

そのため、会社員として働く場合には、朝に排便をしたあと、職場で残便が漏れてしまう可能性もあります。万が一、漏れてしまった場合は、帰宅を余儀なくされ、勤務時間に影響が出ます。

働く時間を自分でコントロールできる仕事であれば、万が一漏れたとしても自分の裁量で勤務時間をずらすことが可能となります。もちろん、仕事の種類や環境にもよるので、「フリーランスだと時間の自由度が高い」とは言い切れません。急な仕事に対応をしなければいけない場合もあるでしょう。それでも、会社員のように勤務時間が決められていないのはメリットです。

このように、車いすユーザーは、障害の特性上、働く場所と時間の自由度が上がると働きやすくなります。しかし、フリーランスはメリットばかりではありません。次はフリーランスのデメリットについて解説します。


フリーランスのデメリット①仕事や収入が安定しない

1つ目のデメリットは、仕事や収入が不安定であるという点です。フリーランスは仕事を獲得するために自ら行動する必要があり、月ごとの仕事量が安定しなければ、収入が上下してしまう可能性が高くなります。会社員のように安定した収入を得られるわけではありません。

また、それまでの経験やスキルが無いと、フリーランスとして仕事を得るのも難しいです。安定して仕事を得られるようになるまでのハードルは企業に勤めるよりも高く、上手くいかないリスクもあります。

フリーランスのデメリット②孤独を感じやすい

フリーランスは、一人で作業することが多いため、会社員として職場で勤務するときに比べると孤独感を感じやすいです。気がつくと誰とも喋っていない1日もあるでしょう。

車いすユーザーは移動に困難を抱えているため、外出を控えがちになります。さらに仕事をすべて自宅でおこなっていると人との交流の機会がさらに減る可能性があります。

自宅で働くことができるからこそ、それ以外の機会に人と関わる機会を作っていく必要があります。



まとめ

今回は、フリーランスの働き方について紹介しました。コロナ禍を通じて、リモートワークが以前よりは普及したものの、フルリモートの働き方ができる企業は限られています。

自分がもっとも仕事のパフォーマンスを発揮できる環境はどのようなものか。組織の中で実現できる環境整備もあれば、難しいものもあります。一度、ご自身の働き方を見直してみてはいかがでしょうか。

1988年生まれ。大学1年生のときにアメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し車椅子生活となる。その後、アメフトのコーチを6年間経験し、現在は、大学教員としてスポーツ心理学の研究とアスリートのメンタルトレーニングを実践しつつ、YouTubeチャンネル「suisui-Project」で車椅子ユーザーのライフスタイルを発信している。

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