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「発達障害でも活躍している人」って言われても

~ADHDの僕が知りたいのは、当事者のリアルな日常生活~

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2021.10.4

実はあの人も発達障害?
「織田信長、坂本龍馬、エジソン、アインシュタイン、黒柳徹子、スティーブ・ジョブズ…」

うーーん、そういう事じゃないんだよなー。

今知りたいのはそういう一握りの超飛び抜けた有名人や成功例じゃないんだよ。

発達障害がありつつも、どう社会と折り合い付けながら活躍している人がいるのか?

また、短所となる部分をいかに小さくして、長所を大きく伸ばす為の行動や工夫、環境を選んで働いている等身大の事例が知りたいのよ。

僕は本屋で立ち読みしたADHD関連本を軽くうなだれながら、そっと本棚に戻した。

執筆:マーチン Martin

社会人2年目の2013年夏
僕は発達障害(ADHD及び自閉症スペクトラム)と診断を受けた。

マルチタスクがからっきしで、スケジュール管理がめちゃくちゃ。内容に不備がある書類にお客さんからの確認事項を埋めて本店に提出しなきゃいけないのに、今日もお客さんに確認するの忘れてた。

時計を見ると20時半。もう電話は出来ない。また明日にしよ…。と、言いながら明日も連絡取らずに、同じことをやってしまう。ちなみに書類の提出日はとっくに過ぎている。

こないだなんか、毎日決まった時刻に本部へ提出しなきゃいけないデータの送信を忘れて(これで5回目くらい)、あまりの忘れっぷりに本店からお偉いさんがお叱りに来ていたらしい。運良く?その時は外出中だったので難を逃れたけれど。

帰ってきても、寝るに寝れない。寝たら明日がやって来る。でも、寝ないと睡眠不足でまた不注意が増える。

寝ようとしても、怒られた記憶や上司の呆れ顔がフラッシュバックする。

とりあえず、気分転換でスマホを取り出しゲームを始める。特にやりたくてゲームをした訳じゃない。ゲームをしてれば、その間だけでも怒られた事とか明日の仕事からは離れられる。

現実逃避か…。情けないやら恥ずかしいやらで泣けてくる。

時計を見たら、針は2時半を指す。いい加減寝よう。こんな時間に寝たら翌朝辛いよなぁと思いながら目を閉じる日々。

そんな中である日、ADHDという障害を知ることになる。ネットの簡易チェック項目を見てビックリした。これも、あれも、それも全部そうじゃん!!

自分はADHDだったんだ…。

そっから、県の発達支援センターへの相談電話から始まり、色々と進んでいく。そして紹介していただいたメンタルクリニックでADHDの診断を受ける。

自分の困りごとに対して原因が分かり、そのときは落胆よりもホッと安心した気持ちが強かった。怠けていたり、ヤル気が無いからじゃない。元々の障害が原因だったんだ。

原因が分かれば、次の行動を起こそう。でも、何したら良いんだろ?

ネットで調べたら、ADHDとは?とか、困り事についての説明だったり、発達障害35歳限界説やらネガティブな情報ばかり。

ネットがダメなら本屋に行ってみるかと、探して見つけた本に書いてあったのが、冒頭の「実はあの人も発達障害?」になる。

おぉ!坂本龍馬もADHDかもなんだ!

って、そうそう勇気付けられるかいっ!

ポジティブな感情を持つことも大切かもしれないけど、宝くじを買うと6億円当たるかもしれません。みたいな極端な成功例出されてもね。もちろん、本人の努力や時代が味方したのもあるけどね。

結局、2013年当時は自分の調べ方が足りなかったのか、ADHDをオープンにしつつも再就職を果たした先人や、職場で障害の対策をしながら働いている先人の情報や知識は、ほとんど得ることが出来なかった。

そして、前職の退職に至った。思い返しても、退職願を出してから、退職までの2か月の記憶が全く残ってない。どうやって辞めたんだろう?嫌すぎて脳がすぐ記憶から消去したんだろうな。

支援センターに通所、障害者手帳の取得を経て、手探りの結果、今に至る。

手探りだったことで遠回りもしたと思うし、要らぬ苦労や失敗も多くしただろう。もう少し知っていれば、多少は苦労も減ったのかな?

情報の発信という点では、本当にここ2、3年で大分改善されたんじゃないかな?

ADHDをカミングアウトした芸能人(有名人)や著名な医師ではなく、一般の当事者による「発達障害(ADHD)でも再就職を果たした人の体験談」や、「職場で円滑に働く為のコミュニケーション方法」、「うっかり防止のタスク管理法」など、改善策の紹介はめちゃくちゃ増えた。

もちろんこのパラちゃんねるカフェにおいても、ぴーちゃんさんの

とても参考になる!
あー!!7年前仕事ボロボロだった自分に見せてやりたかった…。

それとは別に、ここ2、3年で発達障害である有名人の顔触れも増えてきて、
「三木谷浩史、勝間和代、武田双雲、米津玄師…」ますます現代の日本で輝くスターや実業家の名前が出てきたり、

“ADHDには、別名「天才病」とも言われる一面があります"

そんな紹介までされちゃうなんて(苦笑)。
「お前はさすが天才やなぁ(半笑い)」って、言われたことありますよ、僕も。その時はさすがに嫌味で言ってんだろうなって分かったよ!!

確かに発達障害は大きな可能性の塊だと信じてるし、「今は上手くいかないけど、いつかは自分だって!」って、自分も思ってる。「発達障害だけど才能開花で逆転サヨナラ満塁ホームラン」的な人生には憧れるけど、発達障害者みんながホームランを打てるとは限らない。

それなら、厳しいコースでも食らい付いて渋いヒットに出来る様にトレーニングしておかないと。そして、ヒットを重ねていけば、いつかはホームランが打てるかもしれない。

欲や希望を捨てる訳じゃない。まずはコツコツと社会で活躍している名もなき当事者から学ぶことが大切だと思う。

そこからホームランへの道は繋がってくると僕は強く信じてる。

1989年生まれの33歳、生粋の岐阜県民。社会人2年目の時に発達障害(ADHD/ASD)と診断され、障害者雇用にて再就職。8年間勤務後、障害者の就労支援職に従事している。2019年に居場所作りや情報共有の場として岐阜市にて発達障害当事者会「発達ワークスぎふ」を立ち上げ、私生活では二児の父として、色々しくじりながらも奮闘中!!

このライターが描いた記事

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