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全盲の視覚障害者はどうやってパソコンを使うのか。

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2021.10.3

私は両目視力0の全盲の視覚障害者です。「視覚障害者もパソコンやスマートフォンを使える」ことは意外と知られていないかもしれません。今回は私が普段、どのようにIT機器を使っているのかをご紹介します。

執筆:小川 誠

私は、先天性の視覚障害者で、両目視力0の全盲です。色や形などはもちろん、光も感じることができませんが、普段は、視覚障害者を対象にIT情報機器のサポートを行う仕事をしています。

「え!目がまったく見えないのに、パソコンを使えるの?」

そう思われる方々が多いかもしれません。

今回は全盲の私がパソコンを使うようになったきっかけや、どうやってパソコンを操作しているのかについて書かせていただきます。

パソコンを使うようになったきっかけ

私がパソコンを使うようになったきっかけは、盲学校時代まで遡ります。今では、パソコンもずいぶんと手に入りやすくなりましたし、小学校などでも一人一台タブレットが支給されているようですが、私が学生だった1990年代はパソコンを持っている家庭の方が少なかったです。

思い返すと、パソコンを購入するためには、音声システムと合わせて100万円くらいかかる時代でした。

当時、パソコンは高価なことに加えて、使い方もむずかしく、誰もが使えるものではありませんでした。私も、買いたくてもなかなか手が出せませんでした。

私がパソコンに興味を持ったのは、盲学校にパソコンが導入されたことがきっかけです。学生のころは、学校のパソコンを使わせてもらい、生徒会の資料を作成したりしていました。

2003年、私が30代にさしかかった頃に、はじめて自分のパソコンを購入しました。障害者スポーツ関連のサークルに入ることになり、そこでの連絡手段としてメーリングリスト(リストに登録されている複数人に、一斉にメールを送信するシステム)を利用していたので、パソコンを使う必要性が出てきたのです。

パソコンの金額もだいぶ下がってきていたこともあり、画面読み上げソフトなどと合わせて30万円くらいで購入しました。もしかしたら、公的な助成金などを活用すれば、自分で全額負担しなくても大丈夫だったのかもしれません。私は、助成制度があること自体を知らなかったので、自己負担で購入しました。

最初から、スムーズに自分でパソコンを使えたわけではありません。盲学校時代にパソコンを使った経験があったとはいえ、盲学校にあったパソコンと、家電量販店で普通に売られているパソコンはだいぶ仕様がちがいました。



目が不自由な人のパソコンの使用方法

操作方法のちがいについて、少し皆さんにも知っていただきたいので、説明させてください。

盲学校で使っていたパソコンは、点字使用者向けのキーボードでした。点字は6点で文字を表すため、アルファベットやかな入力をするパソコンとはキーボードがちがいます。私は点字で読み書きをする前提でしか、パソコンを使ったことがありませんでした。

先輩方から「将来、パソコンを使うようになったときのためにフルキ―(点字使用者向けではないキーボード)でタイピングしておいた方がいいよ」とアドバイスをいただきました。

当時はまだ、視覚障害者向けのパソコン教室がとても少なかったので、私はパソコンに詳しい友達に分からないところを聞きながら、キ―ボードの練習をしました。

あの頃のおかげで、今もフルキ―で操作しています。キーボードや画面上の指のジェスチャーで入力し、自分が何を入力したかはスクリーンリーダーという画面読み上げソフトを使って確認しています。画面上にある情報や、自分が入力した情報は音声で教えてくれるのです。



使えるアプリって?

皆さんは、パソコンの機能を拡張するために、アプリをダウンロードすることがあるのではないでしょうか。これも技術が進歩していることもあり、スクリーンリーダーでだいたいのアプリは操作出来ます。中には、アプリによって使いづらくなってしまうものもあるので、注意が必要ですが。

基本的にスクリーンリーダーではキーボードを利用して操作しますので、マウスなどに頼って操作するアプリは全くと言ってもいいほど使えなくなってしまいます。しかし、キーボードで操作出来るアプリがたくさん揃っているので、そこまで不便には感じていません。

実際、私は仕事や趣味でパソコンを利用する際、スクリーンリーダーで音声ガイドを聞きながら、さまざまなアプリを活用しています。

まとめ

もともとパソコンには興味がありましたが、自分のパソコンを手に入れて、使えるようになるまではだいぶ時間がかかりました。

当時と比べると、テクノロジーの進歩によって、視覚障害者でもたくさんの情報を手に入れられるようになったと思います。今では視覚障害者向けのITサポートもありますし、音声読み上げソフトやアプリも発達して気軽に使えるようになりました。

趣味や仕事の幅も広がり、困っているときでも助けていただけるシステムが存在するおかげで、前向きに人生を歩んで行ける自信が持てているように思います。

Text by
小川 誠 twitter note

視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。

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