トランスジェンダー当事者が宿泊を伴う研修や出張の際に嬉しい配慮
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2021.10.10
トランスジェンダー当事者にとって、研修や出張、社員旅行などの宿泊の伴う仕事はハードルが高いものです。心理的、身体的にも他者との距離が近づきやすい分、入浴や部屋割など気になる点がいくつもあるからです。今回は、宿泊などの際に「あるとうれしい配慮」についてまとめました。
執筆:佐藤 悠祐 yusuke sato
はじめに
皆さんの会社には宿泊を伴う研修や出張はありますか?
現在のコロナ禍のような社会情勢からみると、積極的に他県に出ることや、複数人で一つの部屋に泊まるようなことは減ったかもしれません。それでも、仕事によっては遠方への出張が必須な方もいらっしゃるでしょう。
トランスジェンダー当事者の僕からすると、宿泊を伴う仕事は通常の勤務とはちがう困難があります。
今後もし研修や出張、社員旅行などがある際には、「こんな配慮があると嬉しいな」ということをまとめてみました。
①入浴はタイミングや個浴を選べるようにしてほしい。
トランスジェンダー当事者の僕にとって、集団旅行で一番困るのは「入浴」です。
大浴場しかない、カミングアウトをしていない人と一緒に入るしかない、といった選択肢が狭められた状態だと、安心して過ごすことができません。
学生の頃は、合宿や修学旅行の度に「生理が…」と言って教員の部屋で個別に入浴させてもらうことができましたが、男性として認識されている今、それはできなくなってしまいました。
現在は全員個別に部屋を取って、ということが主流になってきているようですが、今後はまた「大部屋で…」となる可能性を否定はできません。
その際には
- 個別で入れる部屋を用意する
- 浴場に人が少ない時間に入れるようにする
- 社員にどうしたいか聞く
などの配慮をしてもらえると嬉しいです。
トランスジェンダー当事者でなくても、他の人に体を見られたくない人はいるのではないでしょうか。
体に傷がある人や、体型にコンプレックスがある人、視線が苦手な人など様々な理由で「できれば、大浴場を避けたい」人も助かるかもしれません。
②書類の取り扱い
戸籍の性別を変更していない段階では、どうしても書類上に身体的性別を記入しなければならないものがあります。
特に宿泊を伴うイベントですと、保険や緊急時の対応など戸籍上の性別を把握している人がいないとトラブルになる場合もあるでしょう。
その際、普段は社内でカミングアウトをしている人だけが閲覧できるような書類(特に人事関係)が同法人の他者などに共有されてしまうケースがあります。
「え、あの人女性じゃないの?」
「この人性別欄"間違ってる"の?」
など悪気のない会話が、実は盛大なアウティングになる可能性があります。
個人情報を載せている書類を社外に見せることはほぼないと思います。それでも、相手が社内の人だと仲間意識からか少し気を許しガードが緩くなることもあるかもしれません。意図的に見せることはなくても、見えてしまう可能性があったり、別の人が間違えて手に取れるような管理方法だと安心して任せることができません。
一社だけではない、法人合同の研修の際には書類の取り扱いに十分気をつけましょう。
③カミングアウトを強要しない
私の周りで多いのは「これを機にみんなに言っちゃえば?」と上司や先輩に言われたという声です。
もちろん、言ってきた人に悪気はないことは分かっていますし、むしろ「カミングアウトをした方がすごしやすいのではないか?」という気持ちで言ってくれる人がいるのもわかります。
ただ、カミングアウトをするかしないか、どのように時間を過ごすかは本人の自由です。カミングアウトをせずに生きていきたい人もいますし、カミングアウトのタイミングを見計らっているのかもしれません。本人がどう感じているかは、外側からは見えません。
アドバイスしたい気持ちをグッと堪えてもらえると嬉しいです。
まとめ
以上、宿泊を伴う研修や出張の際にしてもらえると嬉しい配慮でした。
状況が変わると、必要な配慮も変わってきます。今回ご紹介した3つは、本人の工夫や努力では変えられません。安心して参加できるようになるためには、周囲の人の協力が必要です。
またいつか、気を使わずに社員旅行や出張に行ける社会になることを願っています!