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合理的配慮の実現には障害当事者の協力が不可欠

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2021.10.19

2021年5月に障害者差別禁止法が改正され、民間事業者においても合理的配慮が法的義務となりました(これまでは努力義務)。合理的配慮を実現するために、サービス提供者側と障害当事者側の両者に求められていることについて持論を紹介させてください。

執筆:中村 珍晴(ちん) Takaharu Nakamura

はじめに

みなさんは障害を理由に入店拒否・サービス利用拒否をされたことはありますか?

2021年5月に障害者差別禁止法が改正され、民間事業者においても合理的配慮が法的義務となりました(これまでは努力義務)。今後、障害のある人との関わり方は、より重要な案件となります。

そこで今回は合理的配慮を実現するために、サービス提供者側と障害当事者側の両者に求められていることについて、持論をお話します。

乗車拒否や入店拒否の背景を考えてみる

私は車いすユーザーであることを理由にバスの乗車や飲食店の入店を拒否された経験があります。では、なぜ乗車拒否や入店拒否が生じるのでしょうか?

それは、サービス提供者側に障害のある人との関わり方を知らない人が多いからだと考えています。

「車いすだと段差を越えられない」「掘りごたつ席は使えない」など一般的な車いすユーザーのイメージから「これはできないだろう」と決めつけてしまい、その結果、入店やサービスの利用を断ってしまうのです。

ただ、この人たちに「手助けをしたい」という気持ちがないかというと、そんなことはないと思います。むしろ「力にはなりたいけど、どうしたらいいのか分からない」という方が大多数ではないでしょうか。

この前提を踏まえた上でサービス提供者と障害当事者のそれぞれの立場から解決策を模索してみたいと思います。

「知る」ことから始める

サービス提供者側は「知る」ことからはじめてみてはいかがでしょうか?

障害のある人がどんなことに困っていてどのようなサポートを必要としているのかを知るだけでも、障害のある人との関わり方は大きく変わります。

例えば、私は3cm以上の段差があると一人で乗り越えることができません。しかし、車いすの後ろから少しサポートしてもらうだけで段差を越えることはできます。環境面のバリアがあっても、他人のサポートがあれば問題を解決することはできます。

個人的には環境面のバリアを100%解消することは限界があるため、その穴を人の力で補うという考え方が重要だと感じています。

「パラちゃんねるカフェ」の中でも、原稿が紹介されていますが、このような機会を利用して、ご自身の「知らない」を解消してみてはいかがでしょうか?

何ができるか考えるより先に、まず知ることが大事です。



相手の視点に立って、伝え方を考える

次に、障害当事者側について考えてみましょう。

改めて前提を確認すると「サービス提供者側は自分の障害の詳細はほとんど知らない」ということです。

日本の文化を全く知らないアメリカ人の知人が、あなたの家に来たときに土足で室内に上がったらどうしますか?きっと「日本では玄関で靴を脱ぎます」と説明すると思います。

私たちは「これくらい分かって当たり前だろう」とついつい思いがちになりますが、その思いは一旦、胸の奥にしまって、どのように説明したら理解してもらえるかを相手の視点から考え、伝えることが障害当事者に求められることだと思います。

例えば、飲食店に電話予約をする場面をイメージしてください。

「車いすですけど大丈夫ですか?」

経験上、このように伝えると断られるケースが多いです。なぜなら、この質問だけだと「相手の分からない」を解消できていないからです。

「車いすなんですが、数cmの段差は自力で越えられます。段差が数段あっても後ろから車いすを少し押してもらえたら越えることができます。」

このように自分が必要とするサポート方法を具体的に伝えてあげると、サービス提供者側の「分からない」を解消することができ、親身に対応してくれるようになります。

ここまで丁寧に伝えた上で対応可能かをサービス提供者側に判断してもらいましょう。もちろん100%うまくいくとは限りませんが、入店拒否をされることは減るでしょう。

このわずかな違いが大切です。



アメリカでの対応

最後に私が、アメリカ合衆国・ワシントンD.C.に行ったときにとても感動した飲食店の"不機嫌な対応"についてご紹介します。

その日、私は、夕食のためのレストランを探していました。インターネットでパスタが美味しそうなお店を見つけたので、電話予約をしました。予約自体はスムーズにできました。そして電話の最後に「車いすユーザーであることを伝えていた方がいいな」と思い「車いすですが大丈夫ですか?」と伝えると電話口から不機嫌そうに「問題ないよ」と返事をされました。

その後「車いすユーザーの客は面倒くさいのかなぁ」と思いながらお店に向かいました。店先に到着すると、なんと入口に5段ほどの階段がありました。「これはお店を変えないといけないかな」と頭によぎった次の瞬間に、店内から丸太のような腕をした屈強な男性が2名出てきて、僕を車いすごと抱えて階段を上ってくれました。とても丁寧な対応に驚いたことを今でも鮮明に覚えています。

後日、アメリカ在住の日本人の知人にこの話を伝えると「なるほど~」という答えが返ってきました。

アメリカでは法律により、障害者差別が禁止されているので、それなりのレベルのお店では車いすを理由に入店を断ることはまずないそうです。むしろほとんどのお店は車いすユーザーのお客が突然やってきても何事もなく対応できるそうです。

「車いすですが大丈夫ですか?」と聞くことは、むしろお店に対して失礼に値するらしく、このような理由から店員さんは予約時に不機嫌になったのかもしれません。

予約時に車いすユーザーであることを事前に伝えないといけない日本での生活に慣れている私にとって、文化の違いを実感した感動的な出来事でした。

まとめ

今回は合理的配慮についてサービス提供者と障害当事者の両者の視点から考えてみました。

私は、合理的配慮の実現には、サービス提供者側だけでなく障害当事者の努力も必要だと考えます。この記事をきっかけに「自分にできることはなんだろう?」や「うまくいかなかったときの理由」を考えていただけると嬉しいです。

1988年生まれ。大学1年生のときにアメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し車椅子生活となる。その後、アメフトのコーチを6年間経験し、現在は、大学教員としてスポーツ心理学の研究とアスリートのメンタルトレーニングを実践しつつ、YouTubeチャンネル「suisui-Project」で車椅子ユーザーのライフスタイルを発信している。

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