PARA CHANNEL Cage

「障がい者雇用とノーマライゼーション」2つの柱をグループ内で推進する 株式会社セブン&アイ・ホールディングス 人権啓発センターインタビュー。

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2021.2.16

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障がい者雇用を進める企業インタビュー。今回は、株式会社セブン&アイ・ホールディングス 人権啓発センターの久保村さんと有村さんにお話を伺いました。障がい者雇用を進めている企業やこれから働こうとしている障がい者の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

執筆:株式会社セブン&アイ・ホールディングス

はじめに

セブン‐イレブンやイトーヨーカドーなどの店舗でお馴染みのセブン&アイグループ。家の近所に店舗があれば、毎日のようにお世話になっていることもあるのではないでしょうか。

企業規模が大きくなればなるほど、それだけ障がいのある方々が働いている数は増え、任されている業務内容は多岐に渡ります。事実として、セブン&アイグループでは、店頭やバックヤードには障がいのある方が配属されており、グループ全体※で1,198人の障がい者社員が働いています。
*(2020年6月1日現在の数値。セブン&アイ・ホールディングス、テルベ(重度障がい者が働く特例子会社)、セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、セブン&アイ・フードシステムズによるグループ適用5社計の雇用者数。)

今回は、グループ全体の障がい者雇用とノーマライゼーションを推進する人事啓発センターの久保村さんと有村さんに、障がい者雇用のこれまでとこれから、そしてノーマライゼーションへの取り組みについて話を伺いました。

障がい者雇用のこれまでの歩み

セブン&アイ・ホールディングスの人権啓発、障がい者雇用やノーマライゼーションの業務を取りまとめ、推進している人権啓発センター。

現在、障がい者雇用の法定雇用率2.2%(2021年3月からは2.3%に引き上げ)に対し、セブン&アイグループ※全体での障がい者実雇用率は2.96%という数字を達成しています。
*(2020年6月1日現在の数値。セブン&アイ・ホールディングス、テルベ(重度障がい者が働く特例子会社)、セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、セブン&アイ・フードシステムズ5社によるグループ適用雇用率。)

過去を紐解くと、1991年11月にノーマライゼーション推進プロジェクトが立ち上がったことが始まりです。障がい者雇用に対する取り組みを推進するとともに、店舗での接客や店舗設備の観点でも、よりよいサービスを提供するために、ノーマライゼーションを掲げ、プロジェクトが始まりました。翌年には、新卒・中途採用それぞれの障がい者雇用を本格的にスタート、入社後3年間の定着フォロー体制を準備するなど、受け入れ環境も併せて整えていきました。1994年には特例子会社の「テルべ」を北海道北見市と連携して立ち上げ、重度障がい者を含めた雇用を推進しています。


2000年代には、パートナー社員も含めた障がい者雇用を通じ、イトーヨーカドーそれぞれの店舗で、当時の法定雇用率1.8%を達成するといった状況でしたが、2011年の法改正によって、障がい者雇用の難しさに直面しました。

法改正によって、短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)が障がい者雇用率制度の対象となったことから、雇用率が下がりました。そこで、特別支援学校の職場実習の受け入れを強化したり、ハローワークの面接会などにも積極的に参加したりと、攻めの採用活動に転換しました。首都圏を中心に特別支援学校に毎年お声掛けさせていただき、会社や仕事の紹介などを行うことで関係性を築き、毎年30名〜50名の採用に結びついています。


しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響によって、多くの企業の障がい者雇用があおりを受けました。これはセブン&アイグループも同様で、今まで実施していた学校へのお声掛けや職場実習が行えず、例年よりも苦しい採用活動になったといいます。

2021年4月入社予定の特別支援学校の生徒は、例年の半分にも満たない数字となっています。コロナ禍の影響は非常に大きかったです。ただ、今年度を契機として、改めて、グループ全体の魅力や仕事のやりがいを伝え、採用と定着につながる活動を進めなくてはならないと考えています。グループ23社全体では法定雇用率を達成していますが、直近に迫った法定雇用率の引き上げによって、グループ各社単体で見ると法定雇用率に届かなくなるケースも想定されます。企業の社会的責任を果たすためにも、障がい者の方が安心して働ける職場を改めて考えていかなければいけません。


特例子会社である株式会社テルべで働く皆さまの様子

社員教育の一環として標榜するノーマライゼーション

人権啓発センターでは、障がい者雇用に限らず、グループ全体でのノーマライゼーションの推進を図っています。

これは、従業員全体に障がい者雇用の背景や状況を理解推進するため、また、店舗に訪れる障がいのあるお客様への接客サービス向上のためといった目的があります。

当センターでは、新入社員や新任役職者を対象とした社内人権啓発研修を推進しています。研修のひとつであるノーマライゼーション体験研修では、車いす体験やブラインド体験などを通じて、特に身体の不自由な方の困りごとや困り感などを実感してもらっています。また、新店をオープンするときには、テナントとして入る店舗のスタッフの方にも同様の研修を行います。当グループの場合は、同僚として障がいのある方が働くだけでなく、お客様として来店されることを想定して、学びの機会を作っています。


2019年4月実施のノーマライゼーション体験研修の様子


研修はその性質上、一過性になるリスクをはらんでいますが、グループ各社へのアプローチとして、サポートガイドブックやDVDなどを作成し、配布しています。

ノーマライゼーションサポートガイドは2014年に作成し、配布しています。研修は節目のタイミングでの受講となるので、普段からこのサポートガイドを手に取って、知識や情報を振り返ってほしいと考えています。耳の不自由な社員に協力してもらい、手話の解説DVDを作ったり、特例子会社のテルべの広報活動を推進するプロジェクトを立ち上げたりと、さまざまなアプローチを行っています。


セブン‐イレブンやイトーヨーカドーといった店舗を運営していることを考えると、どうしてもバリアフリーやユニバーサルデザインといった店舗の設備面にも注意が傾きます。

1990年代に入り、イトーヨーカドーではノーマライゼーションの推進店舗として多目的トイレや点字表記、車いすの設置などを行っております。以後、開店した店舗にも、当グループのノーマライゼーションの観点から店舗設計されています。アリオなどの大型ショッピングモールなどを建設するときには、行政を通じて、近隣の障がい者団体や高齢者団体に声をかけ、ユニバーサルデザイン店舗見学会を実施して、オープン前に声を集めています。ただ、考え方や設備は日々新しいものが生み出されているので、私たちも常にブラッシュアップしています。


ノーマライゼーションサポートガイドや解説DVDなど


イトーヨーカドー店舗で働く障がい者スタッフの仕事内容

では、セブン&アイグループで働く障がいのある方は、どのような仕事に就いているのでしょうか。今回はイトーヨーカドーの店舗を事例としてご紹介いただきました。

2020年6月の数字ですが、イトーヨーカドーでは750名を超える障がいのある方が働いています。障害種別の比率としては、知的障がいの方が半数、身体障がいの方が4割、精神障がいの方が残り1割というところです。全体の約半数近くが一般食品や生鮮食品の商品陳列や補充の業務に従事しています。生鮮食品だと簡単な調理加工や商品の盛り付けも含まれます。ここでは、知的障がいの方が多く働いていますね。


BtoCのモデルだと、障がいのある方が配属される部署が限られてしまう場合があります。その点、スーパーマーケットのような業態であれば、さまざまな業務内容があるため、障がいのある方の特性や適性と重なる仕事を見出す機会が多いのではないでしょうか。

その通りかもしれませんね。伝票整理や入荷商品の検収などの商品管理の部門では事務的なスキルが求められますし、衣料品や住まいの品を扱う部門ではレジ業務もあるので接客スキルが必要となります。最近ではネットスーパーの利用が増えてきているので、売場から商品を見つけ、梱包・発送をスピーディーに行う仕事もあり、ここでは体力と手際の良さが求められます。それぞれの部門で働いている方の障がいにも特徴があるので、適材適所で働ける場所があることは、イトーヨーカドー店舗で働く上での強みかもしれません。


採用から定着という流れの中では、手厚いフォロー体制が組織化されていることもポイントです。

障害者職業生活相談員の選任義務(障害者を5人雇用する事業所ごとに選任が必要)があり、この相談員の役割は、障がいのある方の職場適応や人間関係の相談、適職の発見といったものです。管理統括マネージャー(人事採用担当)やシスター(厚生環境を整備)といった役職の方がその資格を持っているので、障がいのある方の働きやすさや定着への工夫改善、また不安点の早期発見などにおいて、連携が取りやすい体制になっています。なので、安心して働けますし、ぜひ当社に興味を持っていただいた場合には、まずはご応募いただければ嬉しいです。


株式会社セブン&アイ・ホールディングス 人権啓発センターの有村さん(左)と久保村さん(右)


取材後記

企業規模が大きくなればなるほど、障がい者雇用の歴史があり、軸となる考え方が存在しています。ノーマライゼーションを軸にしていることは、障がいのあるお客様が来店する機会が多いことを考えると「なるほど」と思えます。

障がいのある方が当たり前に働いて、当たり前に来店して、という現場は、少なくとも障がいに対する偏見や無理解は少ないと言えるでしょう。それは働く障がい者にとって公平なスタートラインが整っているとも言えます。

今後は、実際に働いている障がいのある方々にインタビューを進めていきます。お楽しみに!

セブン&アイグループは、コンビニエンスストア、食品スーパー、GMS、百貨店、専門店など、多様な業態を通じて、お客様の生活ニーズに幅広く応え、障がい者雇用を積極的に進めており、グループ企業で採用実績がある他、北海道北見市には特例子会社のテルべもある。
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