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小さな「できた」を集めよう。加点方式の考え方のススメ。

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2021.11.16

これまでたくさんの生きづらい当事者の方に会ってきて感じるのは「理想からの逆算で、自分のマイナスなところに注目する減点方式の考え方はしんどいのではないか」ということ。欲張らずに、基準を下げて「できた!」を数える方が生きるのが楽になるのでは?という考え方についてまとめてみました。

執筆:森本 しおり Morimoto Shiori

私は今年で福祉の仕事が9年目、ライターは5年目になりました。仕事柄、いろいろな生きづらさを抱える当事者の方のお話を聞く機会があります。

壮絶な経験をしていても今はケロっと楽しそうにしている人もいれば、「かなり恵まれている気もするけれど、なぜそんなに大変そうなんだろう?」と首をかしげたくなる人もいます。

生きづらさを抱えている人には共通点があるようにも見えます。それは、理想が高く、自分と他人に厳しく、過去を悔んでいる人が多いのではないか、ということです。

もし、障害がなければ。
この病気さえ治れば。
あのとき、別の選択をしていれば。

一般的に、向上心を持ち、高い目標を設定することは推奨されていると思います。そして、みんな、心のどこかで「今よりもっといい未来」になって欲しいと願うはず。希望があるからこそ、しんどい毎日を乗り切れる側面もあります。

しかし、高すぎる理想や期待は時にして自己否定につながります。理想の自分と現状を比べて「どうして、これくらいできないんだ」と厳しい目を向けることになるからです。



理想の自分を100としたときに、現在の自分がどれだけ"できていない"のか、に注目すると「あれもできていない、これもダメだ」と、減点方式の考え方になってしまいます。

生きづらさを抱えている人は、完璧主義で理想が高いからか、減点方式で考えている人が多いように感じます。あくまでも主観ですが。

初めての挑戦でも上手くいかないと自信を無くしてしまったり、一回休んだり失敗したり、「完璧にできない」と分かった瞬間にやる気をなくしたり。ちょっと注意をされたり、嫌なことがあったりしたときに「もうダメだ。」と諦めてしまう人が多いのです。

どこかに自分をそっくりそのまま受け入れてくれる完璧な職場や優しい人がいて、それを探しているようなイメージもあります。そのイメージと少しでも違うと、自分や環境や相手を否定してしまいます。

もしかしたら、「一度、様子を見てみよう」と時間を置くことや「この部分は嫌だけど、この部分は好きだな」と一歩引いた目線で見ることが苦手なのかもしれません。

理想や完璧な状態を基準にして、そこから引き算をしていく考え方はけっこうしんどいです。

自分にムチを打ちながら、いつまでも手に入らない理想を追いかけ続けているようなもの。どんどん自分が嫌いになって、燃え尽きる危険性も高いです。

そこで、減点方式ではなく、加点方式で考えられるようになれば、気持ちが楽になる確率が高くなるのではないでしょうか。加点方式は、基準値を低めに設定した上で自分のできたことを一つずつ確かめていく考え方です。

私の福祉の仕事の職場に、口癖が「よかった、今日も誰も死ななかった」という人がいます。私はこの人が大好きなのですが、この言葉を聞くたびに、ハッと気づくことがあります。

今日も誰も死ななかった。怪我もしなかった。みんなが無事で過ごせた。それは全然当たり前のことじゃありません。職場の人達が必死に連携したからこそ、守れた日常です。

極論を言ってしまえば、私たちは全員いつか死ぬので、「誰も死ななかった」すら、達成し続けることはできません。

私たちはついつい「あれも、これも」と欲張ってしまいます。もっと、もっと。できて当たり前。そう加速していくと、いつまでたっても満足できません。

であれば、自分の足元を見て、小さな「できた」を数えていく方がいいのではないでしょうか。自信にもつながりますし、日々のことに感謝もできると思うのです。これが、加点方式の考え方です。



加点方式は、トラブルが起きなかった日に「今日も無事に過ごせた」と数えるようなものです。低気圧が苦手な人なら「台風が近づいているのに頭痛がしていない!ラッキー!」です。

減点方式だと、上手くいかないときは延々と考え続けるのですが、できていないことに目が向きやすいので、うまくいったときには検証をしていないイメージがあります。成功の要因を分析したり、再現したりすることが失敗を減らす近道じゃないでしょうか。

加点方式は「何も当たり前じゃない」という一種の謙虚さからスタートする考え方です。朝、起きられた。電車に乗れた。職場の人にあいさつできた。今日もご飯を食べられた。誰も死ななかった。そうやって、一つずつマルを積み重ねていくことが大切です。

思考のクセは急には変えられません。「加点方式にしよう」と心がけても、無意識のうちに、減点してしまうことはあります。急に劇的な変化を狙うことは現実的ではないので、行きつ戻りつしながら、地道に一つずつマルを増やしていければいいのです。

加点方式で考える方が生きやすいはず。少し余裕が出てきたら、自分だけでなく、家族や職場の人、周囲の人のいいところも探してみてください。自分も接しやすくなる上に、相手も喜んでくれるかもしれません。

日々の中で一つだけでもマルが増えれば、今よりも生きづらさがちょっと減っているのではないでしょうか。

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。

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