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障害者雇用で知っておくべき基礎知識5選(2)障害者雇用促進法とは➃~障害者雇用納付金制度~

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2021.3.29

ここでは障害者雇用に初めて挑戦する人事担当者のために分かりやすく、(1)障害者基本法(2)障害者雇用促進法(3)障害者総合支援法(4)障害者差別解消法(5)障害者権利条約の5つに絞り障害者雇用に関連する知識を法律と実態を照らし合わせながら紹介していきたいと思います。

前回は(2)障害者雇用促進法における合理的配慮の提供について解説しました。今回は、障害者雇用納付金制度について解説したいと思います。

執筆:中塚 翔大 Shota Nakatsuka

障害者雇用促進法は大きく分けて4つ

障害者雇用促進法は、障害者の均等な雇用機会の提供と待遇の確保含めた雇用の安定、能力を有効に発揮するための措置など職業生活において自立することを促進することを目的としています。

大きく以下4つのカテゴリーで構成されています。

  • 職業生活における自立を図るための職業リハビリテーション
  • 障害者の雇用を義務とする障害者雇用率制度
  • 障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供
  • 障害者雇用の経済的側面のアプローチである障害者雇用納付金制度

ここでは特に人事担当者が知っておくべき障害者雇用納付金制度について解説したいと思います。

障害者雇用納付金制度とは

障害者雇用納付金制度は、障害者雇用において作業スペースや設備、職場環境の改善や雇用管理の見直しなど雇用義務を履行する企業側(事業主)へ伴う経済的負担によるアンバランスの解消として「納付金」「調整金」「報奨金」が設けられており、企業側(事業主)が共同して障害者雇用を進めていかなければならないという社会的連帯責任の理念に基づき成り立っています。

第53条 機構は、第四十九条第一項第一号の調整金、同項第一号の二の特例給付金及び同項第二号から第七号までの助成金の支給に要する費用、同項第八号及び第九号の業務の実施に要する費用並びに同項各号に掲げる業務に係る事務の処理に要する費用に充てるため、この款に定めるところにより、事業主から、毎年度、障害者雇用納付金(以下「納付金」という。)を徴収する。

2 事業主は、納付金を納付する義務を負う。

引用元:第二款 障害者雇用納付金の徴収(障害者雇用納付金の徴収及び納付義務)


平成30年度版 事業主と雇用支援者のための障害者雇用促進ハンドブック


また、障害者雇用促進法では、障害者雇用に伴う経済的負担の調整とその雇用の促進および継続を目的に「納付金関係業務」として掲げられ、当該業務の実施主体は、独立行政法人 高齢・障害者・求職者雇用支援機構とされています。

障害者雇用調整金・報奨金

障害者雇用納付金制度では、雇用義務を履行する企業側へ伴う経済的負担の調整を図るため調整金・報奨金を給付しています。

1.障害者雇用調整金
常時雇用している労働者数が100人以上の事業主で、法定雇用率2.3%を超えて障害者を雇用している場合は、超過1人当たり月額2万7千円が支給されます。

2.報奨金
常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の障害者雇用数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数、または計72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合は、超過1人当たり2万1千円が支給されます。

3.在宅就業障害者特例調整金
障害者雇用納付金申告もしくは障害者雇用調整金申請事業主であって、前年度に在宅就業障害者又は在宅就業支援団体に対し仕事を発注し、業務の対価を支払った場合は、「調整額(2万1千円)」に「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額(35万円)で除して得た数」を乗じて得た額が支給されます。
※法定雇用率未達成企業については、在宅就業障害者特例調整金の額に応じて、障害者雇用納付金が減額されます。

4.在宅就業者特例報奨金
報奨金申請事業主であって、前年度に在宅就業障害者又は在宅就業支援団体に対し仕事を発注し、業務の対価を支払った場合は、「報奨額(1万7千円)」に「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額(35万円)で除して得た数」を乗じて得た額が支給されます。

5.特例給付金
週所定労働時間10時間以上20時間未満の障害がある労働者を雇用する事業主に対して1人当たり月額7千円または5千円の特例給付金が支給されます。

▶独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構はこちら


障害者雇用納付金

障害者雇用納付金は、雇用義務を履行する企業側へ伴う経済的負担を調整するための調整金、報奨金、特例調整金、特例報奨金、特例給付金および各種助成金の支給に係る費用並びに各種業務に係る費用に充てる財源として法定雇用率の未達成企業から徴収されるものです。

常時雇用している労働者数が100人以上の事業主で障害者雇用の法定雇用率が未達成の場合は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人当たり月額5万円の納付が義務付けられています。

障害者雇用納付金制度には、追徴金や延滞金についても明記されていますので、決して軽視することがないようにしましょう。

(追徴金)
第五十八条 機構は、事業主が第五十六条第五項の規定による納付金の全額又はその不足額を納付しなければならない場合には、その納付すべき額(その額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)に百分の十を乗じて得た額の追徴金を徴収する。


(延滞金)
第六十条 前条第一項の規定により納付金の納付を督促したときは、機構は、その督促に係る納付金の額につき年十四・五パーセントの割合で、納付期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。ただし、督促に係る納付金の額が千円未満であるときは、この限りでない。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金・報奨金の申請期限は毎年決まっていますので、予め計画的な運用が求められます。

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構


現場の人事担当者からすると納付金は罰則と同じと言われてしまいがちですが、障害者雇用納付金制度は前述のとおり、社会全体の連帯責任と捉え、雇用義務を履行する企業側だけの一方的な経済的負担を調整する目的であり、法定雇用率の未達企業に課する罰則という位置づけではありません。

障害者雇用納付金が雇用する障害者数に応じて減額されることからもその点は明らかと言えるでしょう。

果たすべき責任として能動的に取り組むか、企業負担と捉え受動的に取り組むか。

適切な知識が社内に浸透しているかどうかで活動方針は大きく異なるのではないでしょうか。

初めて障害者雇用に取り組む企業においては、まずは基礎知識を社内で共有した上で能動的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

1985年生まれ。多様性を推進するプロジェクト『パラちゃんねる』の管理人。人材派遣・人材紹介など就職・転職支援に精通し、延べ1万人以上のキャリア支援の経験を持つ。耳で聞くラジオ、目で読むコラム、自由な出会いの求人サイトを運営し、障害のある方々含め多様性の浸透に向け活動を続けている。

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