PARA CHANNEL Cage

障害者雇用で知っておくべき基礎知識5選(5)障害者権利条約とは

2021.6.4

2021年3月1日から法定雇用率が2.3%に、対象となる事業主の範囲は43.5人以上となりました。障害者雇用への注目が集まる中で、既に多様な人材により組織のイノベーションに成功する企業があれば、一方でようやく障害者雇用に向けて重い腰を上げる企業などさまざまです。

ここでは障害者雇用に初めて挑戦する人事担当者のために分かりやすく、(1)障害者基本法(2)障害者雇用促進法(3)障害者総合支援法(4)障害者差別解消法(5)障害者権利条約の5つに絞り障害者雇用に関連する知識を法律と実態を照らし合わせながら紹介していきたいと思います。

前回は(4)障害者差別解消法について解説しました。今回は、(5)障害者権利条約について解説したいと思います。

執筆:中塚 翔大 Shota Nakatsuka

(5)障害者権利条約

障害者権利条約は、2006年12月13日に国際連合総会にて採択され、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とした障害者に関する初めての国際条約です。

※正式名称:障害者の権利に関する条約

日本では2007年9月28日に条約に署名、2008年5月3日に発効され、障害者基本法の改正、障害者総合支援法の成立、障害者差別解消法や障害者雇用促進法の成立へと繋がっています。

この条約は、障害者の間で使われるスローガン「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」を重んじ、障害者が自身に関わる問題に主体的に関与するとの考え方を反映して日本からも延べ200人にのぼる障害者団体が関与しており、国際社会の総意の表れと言えます。

その内容は、条約の原則(無差別、平等、社会への包容等)、政治的権利、教育・健康・労働・雇用に関する権利、社会的な保障、文化的な生活・スポーツへの参加、国際協力、締約国による報告などと幅広くなっています。

また、条約は従来の「医学モデル」の考え方ではなく、障害や社会的障壁による不利益・困難の原因は、障害の無い人を前提に作り出された社会(モノ、環境、人的環境等)に原因があるという「社会モデル」の考え方が反映されています。


労働及び雇用

条約では、障害者が平等に労働の権利を有することを認め、利用しやすい労働市場及び労働環境において自由な選択、又は承諾する労働によって生計を立てる機会が約束されています。

締約国は、以下項目において適当な措置を講じ、権利が実現されることを保障し、及び促進する必要があります。

  • 雇用に係る全ての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること。
  • 公正かつ良好な労働条件、安全かつ健康的な作業条件(嫌がらせからの保護を含む。)及び苦情に対する救済についての障害者の権利を保護すること。
  • 障害者が他の者との平等を基礎として労働及び労働組合についての権利を行使することができること。
  • 職業紹介サービス並びに職業訓練及び継続的な訓練を利用する効果的な機会を有すること。
  • 雇用機会の増大を図り、その昇進を促進すること並びに職業を求め、これに就き、これを継続し、及びこれに復帰する際の支援を促進すること。
  • 自営活動の機会、起業家精神、協同組合の発展及び自己の事業の開始を促進すること。
  • 公的部門において障害者を雇用すること。
  • 適当な政策及び措置を通じて、民間部門における障害者の雇用を促進すること。
  • 職場において合理的配慮が障害者に提供されることを確保すること。
  • 開かれた労働市場において障害者が職業経験を得ることを促進すること。
  • 障害者の職業リハビリテーション、職業の保持及び職場復帰計画を促進すること。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

障害者権利条約が日本国内の障害者に係る全ての法律の基礎になっていることを理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、国際条約にも関わらず認知度は低く、内閣府の調査では77.9%の方が「知らない」、17.9%の方が「内容は知らないが、条約ができたことは聞いたことがある」と回答をしています。

障害者雇用に取り組む人事担当者は国際社会の総意を捉えた上で、障害者雇用のあるべき姿、今後の進むべき方向性を改めて検討してみてはいかがでしょうか。

1985年生まれ。多様性を推進するプロジェクト『パラちゃんねる』の管理人。
人材派遣・人材紹介など就職・転職支援に精通し、車いすバスケットボール日本代表のキャリア支援や障害者関連ラジオ番組のパーソナリティとして情報発信を務めるなど障害のある方々含め多様性の浸透に向け活動を続けている。

このライターが描いた記事

関連記事

会員限定記事やコラムの裏側など、登録者限定の情報をお届けします!『多様性のある社会を実現する』ための一歩を踏み出そう。メルマガ登録して応援!