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セルフアドボカシーのすすめ

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2021.12.13

今回のコラムは以前、「自分のオールは自分で担う~医師や支援者とのかかわり方について~」に書いた内容の具体的な実践法です。

以前のコラムは医療者、支援者への対応の仕方でしたが、今回は雇用主(会社)に配慮をお願いする方法を検討していきます。

執筆:大河内 光明 Komei Okouchi

1. セルフアドボカシーとは

セルフアドボカシーとは、「自己権利擁護」のことで、簡単に言えば、自らの障害を周囲に説明し必要なサポートをお願いできるようになることです。

発達障害の場合は特に、困りごとが本人によって全く違うことも少なくありません。感覚過敏の有無、コミュニケーション上の留意点など、医療者や支援者も十分には把握できておらず、雇用主に十分に伝えきれていないまま就職してしまう、ということも多いかもしれません。

今回は参考までに、私が実際に実践した方法をお伝えしたいと思います。

2. 自分の障害を理解する

私の場合、まずウェクスラー知能検査の結果を自己分析するところから始めました。
以下が私の検査結果です。

簡単に説明すると、言葉で説明したり理解することは得意だが、実際の作業的な能力が低いという結果でした。マルチタスクにも難があり、注意の切り替えにも時間がかかります。

こちらの結果をそのまま提出するのも悪くないと思うのですが、これでは具体的な仕事のシーンでどういった困りごとが出てくるのか分かりにくいと思います。

そこで、「仕事そのものの困りごと」「コミュニケーション上の困りごと」「障害の説明」という三つの資料に分けて、A4コピー用紙数枚の簡単な資料(これは長くなりすぎない方がいいです)と、書籍に付箋をつけて、人事面談で障害を説明する機会を設けていただきました。

3. 障害を説明できるようになる

私が説明の際に使用した資料の一部です。

「できない」ばかりが羅列されてしまっているので、実際には口頭で「簡単な旅費交通費計算程度、補助的な業務ならできると思います」等適宜捕捉を入れています。

また、実際にしてほしい支援の具体例には書籍のコピーを添えました。以下、そちらの書籍をご紹介致します。

『日本版WISC-IVによる発達障害のアセスメント-‐代表的な指標パターンの解釈と事例紹介‐』(日本文化科学社)には、検査の各項目が意味する認知特性や、つまずきやすいポイント、そして支援の具体例が明示してあります。発達障害をお持ちの方はぜひ一冊お持ちになっていた方がいい本です。

また、コミュニケーション上のつまずきに対する説明には、『発達障害の人のための上手に「人付き合い」ができるようになる本』(実務教育出版、吉濱 ツトム)を使いました。困っていることには黄色い付箋、特に困っていることには赤い付箋と重要度でわけ、こちらは書籍ごとお渡ししました。

4. 配慮を提案できるようになる

困りごとだけを説明できるようになっても、それではどのように配慮すればいいのか、というのは雇用主も頭を抱える問題です。

こちらに関しては、支援者や医療者と相談して2~3ほどのポイントにまとめるのがいいと思います(あまり多くになりすぎると支障になります)。私の場合はマルチタスク、職場環境、業務内容などに絞ってお願いしました。

配慮をお願いするまでいかなくとも、「とりあえず知ってもらえているだけで安心して仕事ができる」ということもあります。そういう点もあわせてお伝えしても問題ないと私個人は思っています。

焦らず、じっくり時間をかけて身につける

セルフアドボカシーの能力は一朝一夕で身につくものではありません。

自分の失敗を分析し、どの特性がどの失敗に結び付いているのか特定し、それを説明できるようになるにはかなりの労力と時間がかかると思いますし、率直に言って、それを適切に支援できる支援者も本当に少ないと思います。

上に挙げたような書籍を使いつつ、うまく会社側とつきあっていけるようにじっくり時間をとってみるのがよいでしょう。

参考文献
セルフアドボカシーとは : 株式会社Kaien

1994年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、web出版社、裁判所職員を経てライター。発達障害(ADD、ASD)当事者。

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