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私は普通の人だと思われたい

仕事では障害を隠してしまうのはなぜ?

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2022.4.4

私はフリーランスでWEBライターを営んでいますが、実はほとんどの仕事は別名義で行っており、障害のことも体調を崩しがちなこともクライアントには伝えていません。

その理由は、どうやら「普通だと思われたいから」のようです。
自分のことなのに「のようです」って?と思われそうですが…実際のところなぜ普通だと思われたいのか、最近まで深く考えたことがありませんでした。

執筆:和泉屋(いずみや) izumiya

じゃあ改めて、なぜ私は仕事では障害を隠して「普通だと思われたい」んでしょう?
フリーランスでライターをはじめた頃は、クライアントに障害をカミングアウトするということすら思い付かなかったんです。
いや、フリーランスをはじめた頃じゃなく、今までずっと。
障害者手帳を取得したのは20代後半の頃ですが、それまでもうつやパニックで体調を崩しがちなのに仕事先にそのことを打ち明けるという発想がありませんでした。

今年になり、こちらのパラちゃんねるさんでコラムを書かせてもらうことになり、初めてクライアント、いわゆる仕事先に自分の症状などを詳細に打ち明けました。

その時になぜ今まで話してこなかったのかな?と、自分の気持ちを掘り下げてみたのですが…

  • この人は障害があるから厳しいことを言うと落ち込んでしまうのでは、と思われたくない
  • 障害のせいで普通の人のように、ルールや納期を守れないと思われたくない
  • 他に働いている人たちと同じステージで見てもらえなくなるのが怖い
  • 腫れ物に触るように扱われたくない
  • 私はみんなと同じように普通に仕事ができると思われたい

こんな理由で、素の自分を隠しています。

結果無理をしてどこかで不安やパニックや極度の疲労、不眠などの皺寄せが来るのですが、そうまでしても“普通”でありたいと無理をしてしまいます。

打ち合わせに出かける時などは特に、メイクをしてそれなりの服装に着替え、髪の毛にアイロンをかけてバッグの中身を整理して…クライアントさんと笑顔でやり取りをして帰宅すると、その夜から漠然とした不安に襲われて、次の日起き上がるのもしんどい…なんてこともしょっちゅう。

それだけがむしゃらに前だけ見て、頑張ってきたんだと思うんです。“普通”の人と同じように働いて、“普通”に自立して、“普通”に家庭を維持して。

でも40歳を過ぎ、子どもが小学生になり人生のステージが変わった時に、働き方も変わりました。

夫に「子どもの学費や塾代は、私が捻出したい」と申し出て、自分がもらったギャラは全て子どもの教育に費やしています。

そうするとさらに「子どものためだから」と無理をしてしまったんですね。そして去年、盛大に体調を崩しました。

その時に、もう若くないのにこんなに無理したら、子どもの長い学生生活を支えられないなあ…と思いました。

そして、なんで私はクライアントたちに素直に「ちょっと辛いのでもうちょっとペースを落としてください」と言えないんだろう?と考えるに至りました。

その理由は上記のように、障害や病気の症状がわかると腫れ物に触るように扱われ、「あの人には他の人より簡単な仕事をやってもらったほうがいい」と思われるのではないかと。

「私だって普通に仕事できるのに!」、そう考えてしまう。

そこに気がつけたので、今度はそこから「自分の障害をネタに文章を書いてみたい」と書かせてもらえるところを必死で探しました。素の自分を出せたら、何かが変わるんじゃないか?と思ったから。

そしてパラちゃんねるさんに出会い、障害と向き合いながらコラムを書くことに。

障害があるということをあらかじめ知っていてくれるクライアントと出会えた事で、コラム作成についても自分の芯を見直せた気がします。

私は、疲れやすいし不安になりやすいし、すぐに寝込んでしまう。
それは変わらないんだな、無理をしても変わらない。障害を打ち明けて働いても、その事実は変わらない。
でも“知っていてくれる”って、こんなに楽なんだなという事にも同時に気づけました。
圧倒的に楽なんです。

現在はまだ体調により、パラちゃんねるさんに納期の変更をお願いしたりしたことはないのですが、いざとなったら「今は体調がよくなくて」と相談できる。そのことだけでも、かなり気が楽になっています。

今はまだ、これまで作ってきた“自分”の全てを変えることは難しいし、他のクライアントやママ友、知り合いなどに障害のことをカミングアウトはできないです。

特に別名義での仕事先では、ハンドメイドが好きなキラキラママというようなイメージで執筆しているところも多いので、これからも打ち明けることはできないのかな…と思っています。

でも一つでも、素の自分で仕事ができる場が確保されているというだけですごく安心できています。

いざとなったら相談できる働き先があるという事実を持てたのは、キラキラママライターの方の自分も、少し気分が楽になっているのではないでしょうか。そっちの自分、かなり無理してそうなので。

「相談できる」「辛いと言ってもいい」という働き方が、こんなに精神にも体にも楽なのかと知ったので、もしもいつかライター以外の仕事をするならば、障害者雇用という選択肢もアリなんじゃないかな?と思い始めています。

世間では“普通”に見える人たちも、精神ではなくても実は内臓に疾患があるかもしれない。体の一部に不自由を感じているかもしれない。病気とは言えなくても、ひどく悩んで不眠の人もいるかもしれない。

そう思うと“普通”は、単純に私が理想としている働き方ができているお母さん像なのかもしれません。

まだまだ自分の中の“普通”と折り合いをつける事は難しいのかもしれないけど、一つでも、一歩でも障害を持っている自分と仕事をしてくれる場を確保できた事で、“普通”への緊張感がやわらいだ気がします。

これからも子どもの教育のために働かなくてはいけない私ですが、“普通”にこだわり続けず障害者雇用などにも目を向け、自分を解放しながら働いていける将来を描きたい。

「“普通”を目指すよりも、ありのままの自分で仕事できる方がいいじゃん」

今はそう思っています。

フリーランスのWEBライター。父親からの虐待を受けて育ち、パニック障害・鬱・不眠などの精神疾患があり手帳3級所持。現在はワンオペ育児をしながら、在宅ワーク中。23年一緒に暮らした猫を看取ってからは3人暮らし。母親業と仕事と家事でいつも疲労困憊。パンを焼いたりミシンを使ったり、手仕事が好き。「障害がありながら母として働く」ことの現実を綴っていきたい。

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