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ダブルワークってどうよ?重度障害者がやってみた

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2022.6.28

16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車いすに。最近、ダブルワークを始め、メリットとデメリットを感じつつ、体力面や人間関係の面での疲労を感じつつ…という状況。とはいえ、やりがいをもって臨めていることも本音なので、障害があるからこそ多様な働き方を経験できているという気概を持って楽しんでいきたい。

執筆:豆塚 エリ Eri Mametsuka

最近、ダブルワークを始めた。

フリーランスとして働いていて、コロナ禍で仕事が全く来ない状況が半年以上続いた経験から、やはり安定した定期収入がほしいと考え、とはいえ会社勤めは難しいと悩んでいたところに、運良く会社役員になる機会を与えられた。

車いすの人間が、会社勤めが難しい理由として、通勤やトイレの問題がまずあるが、もうひとつ、勤務時間の問題がある。日常的にヘルパーを利用して生活しているのだが、勤務時間中にはヘルパーを利用できないため、例えば残業があってヘルパーの訪問時間にかぶる場合には、時間をずらしてもらうか断るかして毎回調整しなければならない。

しかし、それでは生活が立ち行かなくなる。とはいえ収入がないと生活ができないし…というジレンマを抱えている。役員であれば勤務時間に縛りがないために、より柔軟に働けると考えた(社会保険に入れるのも嬉しい)。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


ダブルワークとは2つ以上の仕事を掛け持ちしている状態を指す。本業を持っている人が休日や空き時間に別の仕事を行う副業とはちょっとニュアンスが異なり、兼業とほとんど同意義なんだとか。

従来、企業では副業や兼業を就業規則で禁止している場合が一般的であったが、近年ダイバーシティという言葉が出てきたように多様な労働者が増え、働き方も多様化しており、柔軟な働き方がしやすい環境整備のうちの一つとして、2018年、働き方改革で副業・兼業が解禁された。

政府は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、副業や兼業を明確に推進している。副業・兼業の効果として、イノベーションの促進、人材確保、人材育成、所得の増加など、経済成長につながると聞こえの良い文句が並ぶが、要は終身雇用制度の実質的崩壊のため、収入を増やすのもキャリアアップも会社頼みでなく自分たちでしなさいよ、ということだろう。

とはいえ、そもそも組織というものから弾かれがちな障害者にとってみれば、ダブルワークは悪くない、と私は思っている。

どうしても周りに負荷をかけてしまうことから、居場所は多い方が依存も分散できるし、不安定な体調面から言っても、稼げるうちに稼いでおけて、もしものときに仕事をすべて失ってしまうことも防ぐことができる。フリーランスで積み上げてきたキャリアは会社でも活かせる。収入が安定すればフリーランスとしての活動もより自由になる。いいことづくめじゃん、と思った。

しかし、現実はそう甘くはない。

平日、忙しい時期はフルタイムに近い時間を会社に取られてしまい、そのうえ1日4時間ほどヘルパーを使って生活をすると、とにかく時間がない。

疲れが溜まった状態で在宅の仕事を短時間で仕上げようとすると、当たり前のことだが、仕事のクオリティが下がる。在宅ワークはほとんどが成果主義だ。時間がなかったから、疲れていたからは言い訳にならない。自分でも納得のいっていない仕上がりのものを、納期だからと仕方なく先方に渡すのはとても心苦しい。

障害を負った体は体力がなく、すぐにへばってしまう。絶対に体を壊すわけにはいかず、効率よく回復するために、とにかく時間があれば寝るようにしているが、そうすると自分の時間がない。

たくさんの仕事を同時にこなしていくため、頭の切り替えが難しい。特に会社の人間関係でトラブルが発生してしまうと、ついそのことに気を取られてしまう。いらいらを大切な人にぶつけそうになってしまったり、自分事がおろそかになってしまったりと余裕がない。

SNSをチェックする暇がなく、知り合いや友人とのやり取りが減ってしまう。障害者になってから多忙というものを初めて経験するので、これほどまでに思考力が低下するのかと愕然としている。

働き方改革って確か長時間労働の是正も掲げていたと思うが、副業・兼業推進はそれに矛盾するのでは?もしも過労で倒れた場合、労災認定はどうなるのだろう?と頭をよぎった。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


もちろん、やりがいも感じている。というか、やりがいがモチベーションとなり、頑張れている。

組織で仕事をすると、ひとりでコツコツ仕事をしているのと違って、推進力がある。企画した大きな仕事があっという間に片付いていく様は見ていて快感だ。それぞれの立場や専門分野から多様なアイディアや意見が出てくるのは新鮮で、日々勉強になる。

毎日顔を合わせ、同じ空間でフォローしあって仕事をしていかなければならないため、意見が対立しても粘り強く関係していくことになる。タフでドライな人間関係というのも、なかなか悪くない。

まだまだ駆け出しだが、障害があるからこそ多様な働き方を経験できているとも言える。困難もやりがいもしっかり味わって楽しめるようになりたいものだ。

1993年生まれ。詩人。16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車椅子に。障害を負ったことで生きづらさから解放され、今は小さな温泉街で町の人に支えてもらいながら猫と楽しく暮らす。
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