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白杖にはどんな役割がある?視覚障害者が一人で歩くこと。

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2022.7.16

私は、全盲の視覚障害者で白杖を使用しながら一人で歩行をしています。今回は、白杖にはどのような役割があるのか、私が白杖を使えるようになるまでどのような練習をしてきたのかについて、お伝えしていきます。

執筆:小川 誠

皆さんは、街中で白杖を持ち、点字ブロックの上を歩いている人を見かけたことがありますでしょうか?

見たことはあっても、白杖にはどのような役割があるのか、どのくらい種類があるのかはよく知らない方が多いかもしれません。

今回は、全盲で実際に日常生活の中で白杖を使用している私が白杖についてご紹介します。その役割などをお伝えしつつ、私自身がどうやって白杖を使って一人で歩けるようになったのかを振り返ります。


白杖には主に3つの役割がある

白杖とは、視覚障害者が歩行をする際の道具です。白杖を使うことで、より安全に歩くことができるようになります。

ちなみに、白杖を使っているからと言って、全く目が見えないとは限りません。中には視力が弱い方や、視野が狭い方など様々な見え方の人もいます。

白杖には、大きく分けて3つの役割があります。安全の確保、情報の収集、視覚障害者としてのシンボルです。ここからは、それぞれについてご説明していきます。

①安全の確保

1つ目は「安全の確保」です。

自分の前方を白杖で叩いたり、スライドさせたりすることで、安全に進むことができるかを確認しています。

自分が次に足を運ぶ場所に触れることで、道路にある障害物を避けたり、壁に衝突することを避けたり、段差があることを知ったりすることができます。身体をぶつけたり、つまずいたりする危険性を下げる役割があります。

②情報の収集

2つ目は「情報の収集」です。白杖で叩いたり、地面をスライドさせたりして手に伝わってくる感覚から、点字ブロックや路面の変化といった道路の情報を集めます。

白杖は、障害物を避けるなどの安全の確保だけでなく、歩行をする際に役に立つ情報を収集するためにも使用します。進行方向を確認することも重要な役割となります。

③視覚障害者としてのシンボル

3つ目は「視覚障害者としてのシンボル」です。白杖を介して、周囲の人たちに対し、視覚障害者であることを伝えています。

視覚障害があることを、自動車の運転手、自転車、歩行者など周囲の人に知らせておくことで、衝突を避けるように配慮してくれたり、困っているときには援助をしてもらいやすくなったりします。


私が白杖を使えるようになるまで

約40年前、私は盲学校小学部のときに白杖を使いながら一人で歩く練習を始めました。

最初は白杖の持ち方を教わり、次に白杖を左右に振って地面を確認します。その後、学校の敷地内を歩き、学校の敷地の周辺、そして、信号を渡る練習、学校と最寄り駅の往復と、徐々に歩行範囲を広げていくのです。

個人差はありますが、だいたい中学部の修了の頃には、一人で歩く練習の授業が終わり、高校からは一人で外出するようになりました。

白杖を使っていても、視覚障害者の一人歩行は危険と隣り合わせ

一人で歩く練習をするときに難しかったことは、危険度の高い場所での練習です。具体的には、信号を渡るときと、駅のホームを歩くときでした。

信号を渡る練習は、一歩間違えると、車にひかれる危険性があります。

当時は、青になった瞬間にメロディや音で知らせてくれる音響式信号機が今ほど普及していなかったため、信号が青になったかどうかは、近くの車の走行音などをもとに判断していました。

自分が渡りたい方向と同じ方向の車が発進しているときは、歩行者の信号も青になるはずですが、自分の感覚に自信が持てずに何度も信号を見送りました。

横断歩道を渡っている途中で、いつの間にか自分の進路がずれていって車道に近づいてしまい、車にはねられてしまうのではないかという恐怖が大きかったです。

また、駅の構内では、ホームから転落してしまう危険性があります。

先生につかまって駅のホームの横幅を確認したり、ホームにある自動販売機や柱を確認しながら安全を確認して歩く練習をしました。先生がついてくれてはいてもかなりの恐怖感がありました。


外出の支援を受けるという方法もある

「視覚障害者の外出がそれほど危険なのであれば、他の人に手伝ってもらった方が安全なのではないか?」と思う方もいるかもしれません。

実際、同行援護と呼ばれる視覚障害者向けの外出の支援の制度はあります。

環境や状況によっては、白杖を使っても一人では歩行ではどうにもならないこともあります。最初から他の人の力を借りた方がいい場合もあると思います。

白杖を使っての一人歩行と、他の人の力を借りることのとのバランスは、これからも生活をしていく中で考えていきたいことのうちの一つです。

ただ、私は福祉制度は様々な状況によって左右されてしまうものだと思っています。必要なときにいつでも、充分なだけ頼れるとは限りません。

だからこそ、私は白杖を使いながら一人で歩く練習の重要性は高いと思っています。


まとめ

白杖を使っていても、視覚障害者の一人歩行は危険と隣り合わせです。特に慣れないうちは、かなりの恐怖感がありました。

今でも、一人で外出するときには、いろいろなことに気をつけなければいけません。細心の注意を払っていても、いろいろなアクシデントに遭遇することもあります。

それでも、白杖の練習をしたおかげで、徒歩や公共交通機関を利用する範囲であれば、一人で外出ができるようになりました。周囲の方々の親切に助けられながらも、一人で外出をして、外出の目的を達成できたときには本当にうれしいです。

一人で街を歩く視覚障害者が増えれば、世の中の人たちに白杖を使う人のことを知ってもらう機会が増えます。白杖使用者のことを知ってもらえれば、外出先でのサポートは受けやすくなっていくかもしれません。

どうやったら、白杖についての理解がもっと広まり、定着していくのか。これからも、考え続けていきたいと思っています。

Text by
小川 誠 twitter note

視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。

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