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好きになった相手は健常者

「持病」はいつ・どうやってカミングアウトすべき?

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2022.8.17

持病があると、恋をすることにためらいが生じてしまうことがある。カミングアウトはいつ、どんな風にしたらいいんだろう…。そう悩む人の心が少しでも晴れるよう、今回は私がしてきた「カミングアウト法」を紹介したい。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

マッチングアプリで出会うとカミングアウトがしづらい

好きになった人に持病のカミングアウトをするのが、怖い…。目に見えない内部疾患を持つ人は、そんな不安を抱くことも多いはず。相手のことが好きであればあるほど、「持病がある」という事実を、どう受け止められるか考えてしまい、伝える勇気がなかなか出ない。

実際、私も誰かを好きになるたびに、そうしたモヤモヤを抱えてきた。SNSを介して、同じ病気の人から「いつ、どうやってカミングアウトしたらいいのか悩んでいます」という相談を、何度か受けもした。

近ごろはマッチングアプリでの出会いが主流になっているので、持病の話を余計に切り出しにくくなっているように思う。

私は23歳の頃に一度結婚し、29歳で離婚したバツイチだ。現在は、婚約者と事実婚のような形で一緒に暮らしている。

元夫や現在のパートナーは、健常者。持病の話を切り出す時は、勇気が必要だった。特に、現在のパートナーはマッチングアプリで知り合ったため、どのタイミングで、どんなテンションで告げたらいいのか悩んだ。

人それぞれ使い方は異なると思うが、私はアプリ内のプロフィールに持病があることを一切記したくなかった。それは病気があるという先入観を持たず、ひとりの人として私を知ってほしいという気持ちがあったからだ。

持病があることを彼に言えたのは、告白を受けた1ヶ月後だった。自分を偽ったまま付き合っていてはいけないと思っていたけれど、彼女が障害者って嫌かもしれないと思うと、嫌われたくなくて、重荷にもなりたくなくて、なかなか言うことができなかった。

意を決して、涙ながらに先天性心疾患があることや長くは生きられないかもしれないことを告げると、彼は長く一緒にいられないかもしれないことがショックだと言いながらも、「もしも、持病があることを知っていたとしても付き合ってた。それに、どれだけ生きられるか分からないのは誰しも同じだから、諭香だけが特別なわけじゃないと思う」と言ってくれた。

彼は今も私を「障害者」としてではなく、「健康面に不安を抱えている人」だと表現し、扱ってくれる。その温かい気遣いが、私は嬉しい。


持病抜きで「私」をジャッジしてもらう

病気のカミングアウトを、どう捉えるかは人によって様々。私はこれまで病気を理由に「やっぱり別れよう」や「付き合えない」と言われたことはないが、やはり気にする人や抵抗感を持つ人は一定数いるとは思う。

けれど、最初から「持病がある」ことを前面に押し出さず、自分という人間を知ってもらってから恋愛関係に至れるかをジャッジしてもらうのも、私はありだと思っている。

特に、マッチングアプリなど不特定多数の目に触れる場での出会いでは「持病がある」という事実を必要以上にネガティブに捉えられることもあると思うので、直接会って何度かデートを重ねてからや、相手から告白を受けたとき、または自分から告白する時などに話すと良いのではないかと思う。

その際は、どこがどんな風なのか、日常生活はどれくらいできるのか、将来的にどんな治療が必要となる可能性があるのかなど、細かな情報もできる限り伝えると、相手も未来を想像しやすいだろう。

私は現在のパートナーには涙ながらに打ち明けてしまったが、重い話であるからこそ、過去の相手には泣いたり悲観的になりすぎたりせず、「病気も私の一部」と、あえて凛と伝えていた。

自分がそういう態度で伝えると、相手も重く受け止めにくくなるように感じたので、重たい空気になることが怖い方は、そういう伝え方を選ぶのもありだと思う。

なお、マッチングアプリでの出会いでは相手が理想とする未来がプロフィールを介して知れるので、持病が理由で、その未来を築いてあげられない場合は最初からマッチングしないようにするのも大切なことだと私は思っている。

例えば、私の場合は妊娠が難しいため、マッチングアプリのプロフィールで「子どもは絶対に欲しい」や「パパに早くなりたい」と記載している人には自らアピールせず、「いいね」を貰っても反応しないようにしていた。

理想の未来が違っていると、互いに辛い思いをしてしまう。子どもに関することは特に、各々の人生に大きな影響を及ぼす事柄であるので、相手がプロフィールで触れていない場合は、直接会った時にさりげなく理想の形を尋ねてみるのも良いだろう。

病気があると、人を好きになる気持ちにブレーキをかけてしまったり、1歩踏み込む勇気が持てなかったりすることがある。けれど、誰かを好きになる気持ちは自由であっていい。「持病がある」以前に、あなたにはきっと、あなたにしかない魅力的な部分もたくさんある。だから、そうした自分の一部を知ってもらってから、パートナーになれるか考えてもらったり、一緒に考えていけたりしたらいいなと私は思う。

もし、付き合うことができなかったとしても、それはあなたが悪いのではなく、求める未来の形が互いに違っただけ。だから、どうか自分や持病があることを責めないでほしい。

抱えている重荷や不安感、そして乗り越えてきた「これまで」も含めて、生涯、添い遂げたいと思える人と多くの障害者が出会えることを願う。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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