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視覚障碍者と健常者とのコミュニケーションの中での認識の行き違い

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2022.7.30

私は全盲の視覚障碍者ですが、見えている人から声をかけてもらったり、説明をしてもらったりするときに、コミュニケーションの行き違いが生まれてしまうことがあります。今回は、どんな風に接してもらえるとうれしいのかについてまとめてみます。

執筆:小川 誠

私は全盲の視覚障碍者ですが、視覚障碍のない晴眼者から周囲の状況を教えてもらったり、声をかけてもらったりする機会があります。

一人で外出しているときに「何かお手伝いしましょうか」とお声かけをしてもらうこともあれば、飲食店で店員さんからお皿の位置を教えてもらうこともあり、日々助けられています。

おそらく、初対面の人に対して見えている情報を言葉だけで説明することは難しいだろうと思います。何をどんな風に説明したらいいのか、分からなくて戸惑う方もいるのではないでしょうか。

今回は、全盲の私が晴眼者とのコミュニケーションの中であった行き違いと、その解消法についてです。


物の位置の説明の仕方①時計の位置での説明は分かりやすいのか?

飲食店に行くと、店員さんが食器の位置を教えてくれることがあります。

その際に「6時の位置にご飯があって、4時の方向にお味噌汁があります」など時計に見立てる、いわゆるクロックポジションで料理の説明をして下さる方もいます。

「ここは視覚障碍者に対して配慮されているお店だ。」と感動します。しかし、私自身クロックポジションで説明されるのは、少し苦手なのです。

置いてある食器が向こう側に二つ、手前に二つという感じに並んでいるときに、クロックポジションで説明されるとかえって分かりにくくなってしまいます。どちらかというと、一番手前の左がご飯、右がお味噌汁ですと説明していただいた方が分かりやすいです。

たまに「料理の位置をご説明いたしましょうか」と尋ねられることがあるのですが、そのときは「右の方に何々、左の方に何々という感じに教えて下さい」とお願いしています。

その結果、自分にとって分かりやすい説明になりますので置いてある物の認識がうまくいくことになるのです。

もちろん、クロックポジションで説明をしてほしい視覚障碍者もいるでしょうし、どのような伝え方だと助かるかは人によってちがうはずなので、本人に聞いてもらうことが一番だと思います。食器を一例にしましたが、物の位置の分かりやすい説明は人によってちがうのです。

物の位置の説明の仕方②どちらにとっての左?右?

晴眼者と向かい合って座って話をしているとき、私がテーブルに置いた物を探していると、「右の方にありますよ」と教えていただくことがあります。

そのとき、テーブルの右の方を一生懸命探していても見つからなかったとき、慌てて「ごめんなさい、私から見て右でした」と言われることがあります。

つまり、自分から見て、左に探している物があるということなのです。

視力があれば、左右に目を走らせればすぐに確認できますが、全盲である私では言葉通りに信じるしかありません。そのような経験をしてからは、「私から見て右の方ですか?」と尋ねるようにしています。

物の移動へのお願い

視覚障碍者にとって、自分で分かりやすい所に物を置くことは重要です。

晴眼者からすると、散らかっているように見えても、本人にとって分かりやすいポジションに置いていることが多いのです。

特に、家族にこのポジションを崩されることが多くあります。家族に、「何々がないんだけど」と尋ねてみると、「散らかっていたから片付けておいたよ」と返事が来ます。

物の場所を勝手に変えられてしまうと、また探し当てるのに大変な労力を要することになります。散らかっているように見えても、それはその人にとって物の定位置なのかもしれません。物の管理の仕方は人によってちがいます。

今回は、家族を例に書きましたが、職場でもあることだと思います。ぜひ、いつも置いてある物を移動させたときは、一言声をかけていただけるとありがたいです。

外出先での誘導する際のお願い

一人で外出していて迷っていると、「何かお手伝いしましょうか」とお声をかけていただくことがあります。

もし、このコラムの読者で、視覚障碍者を目的地まで誘導された経験のある方がいらっしゃいましたら、心よりお礼を申し上げます。

ほぼ初対面であることが多く、詳しい情報を説明しながら誘導することはなかなかむずかしいかと思います。私からお願いしたいのはひとつだけで、何かしらの障害・障壁が近づいてきたときには気づいたときにはお伝えしてほしいということです。

誘導の際には、自動改札や段差に差し掛かる10mくらい手前で教えていただきたいということです。事前に教えていただけると、こちらも心の準備ができます。

段差の情報の中には、上りか下りかも併せて教えていただけると更に安心します。


まとめ

視覚障碍者にとって、状況説明や誘導していただいているとき、言葉一つで認識の違いがうまれてきてしまいます。

また、私は視覚障碍当事者の方から、しっかりとした意思を伝えることも大事だと思っています。

たとえば、援助依頼をしようとして、「すみません」と声をかけたら相手はぶつかりそうになったと勘違いして「いいえ、大丈夫ですよ」と言ってその場からいなくなってしまうことがありました。

そのようなことがあってから、「よろしいでしょうか、助けていただきたいのですが」と声をかけるようにしています。

このコラムをお読みの皆様が視覚障碍者を見かけて声をかける際は、いきなり腕をつかんだり、身体に触れたりするのではなく、「何かお手伝いしましょうか」と横から声をかけていただけるとうれしいです。

視覚障碍者と晴眼者とのコミュニケーションの行き違いを解消していくためには、お互いに頻繁に交流できる環境が必要になってくるはずです。

長い年月を要することになりますが、いろいろな場面で行き違いを繰り返しながら、解消して行けたら良いのではないかと思います。

Text by
小川 誠 twitter note

視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。

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