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子どもを産めない苦しみ

~障害が原因で「我が子がかわいい」という幸せを作ってあげられない~

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2022.9.16

「子どもがいなくてもいい」
「夫婦二人で生きていけばいい」

そんな優しい言葉をパートナーから言われても、自身の病気が原因で子どもを持てないと、相手に負い目を感じてしまうことがある。現に、私はその苦しみが離婚に繋がってしまった。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

「産めない人生」を共に歩もうと決意したけれど…

18歳の頃、主治医に「妊娠や出産は避けたほうがいい」と言われてから、私の未来図から子どもの姿は消えた。

その5年後、産めない事実を「そうなんか」と納得し、受け入れてくれた彼と結婚。2人とも、もともと子どもが特別好きなわけではなかったため、子どもがいない人生に苦痛を感じることはないだろうと思っていた。夫婦2人での生活を楽しんでいけばいい。そう言い合い、明るい未来に胸を弾ませていたのだ。

だが、「我が子がかわいい」と言える人生を歩めないという事実は、徐々に私たちを苦しめていった。

例えば、夫が甥っ子と遊んでいる時。一緒にゲームをしたり、公園でブランコを押したりする夫の笑顔を見るたび、私は心が傷つくようになった。

私は一生、夫にこういう幸せを与えてあげられない。優しいから言わないけれど、本当はあの人は子どもが欲しいじゃないか…。そう考え、自分を責める日が増えた。

酔った夫が、ある日溢した「会社で子ども作らないの?って何度も聞かれるんだよなあ」という愚痴も心に刺さった。子どもを持たない女性への風当たりもまだまだ強いが、男性は「やることやってんの?」「夫婦仲はいいの?」など下世話なお節介をされることを、私は夫との会話で初めて知り、自分のせいで生きづらい思いをさせていることに申し訳なさがこみ上げてきた。

理解ある夫がいても「産めない罪悪感」は消えなかった

そんな日々の中でも、夫は優しかった。「夫婦2人で楽しく生きていけばいいじゃない」と、悩む私に言ってくれた。

けれど、優しい言葉を言われるたびに、私と結婚しなければ、夫も悲しい思いをしなくてすんだのに…と、余計に落ち込んだ。

せめて、子ども以外のことでは、夫にとにかく幸せになってほしい。そう思い、どんなに仕事が忙しくても夫が帰宅する時間に温かい料理が出せるようにしたり、なるべくレトルト品を使わず、グラタンなど手のかかる料理も全て手作りしたりと、家事を頑張った。

将来、私が入院したり先に死んだりしても、夫が困らないようにしたいと思い、貯蓄も頑張った。

けれど、そうした努力をいくらしても、「親子」という形を作ってあげられないことへの罪悪感は消えなかった。どれだけ他のことで頑張っても、自分と結婚したことで背負わせてしまった重荷を取り除いてはあげられないように感じて苦しかった。

私ではない相手と、もし一緒になっていたら、夫は子どもを持てる可能性があったのに。甥っ子を全力でかわいがれる人だから、我が子ならばより一層、愛情を注ぎ、いいパパになっていただろう。そんな「あったかもしれない幸せ」は、私が全部潰してしまったんだ…。

子どもを持たない人生を共に歩んでいくことを互いに納得し、結婚したけれど、そんなモヤモヤが自分の中でどうしても消えず、やがて夫とどう生きていいのか分からなくなった。

気持ちを話せば、優しい夫はきっと「そんなことは考えなくていい」と言ってくれただろう。けれど、何度その温かい言葉で包まれたとしても、自分の罪悪感が消えないことは分かっていたから、気持ちを伝える機会は設けなかった。

すると、次第に夫婦の溝が開いていき、私たちの関係は終わった。

直接的な原因は別にあったけれど、私は自身の罪悪感を上手く整理できなかったことが離婚に繋がったと思っている。

私のように、自分が理由で子どもを持てない人生を歩むことになると、パートナーが理解してくれても、相手に対して申し訳ないと思ってしまう人は少なくないと思う。むしろ、パートナーが理解を示してくれるほど、子どもを持てない自分を責めてしまうこともあるのではないだろうか。

正直、私は今でもこの道を選ばなければならなかったことに対して、上手く気持ちの整理をつけられてはいない。

けれど、自身の経験を通して、子どもが持てないからといって他の何かでパートナーを幸せにしようと頑張りすぎるのは違うのだと思えるようにはなったから、

「子どもを持てない自分を卑下しすぎない」

を目標に生きていこうと思っている。

産めない人生も悪くなかった。そう言えるように、ちゃんと胸を張っていきていきたい。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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