抗うつ剤アモキサンの製造中止に思うこと
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2022.10.31
アモキサン、または一般名・アモキサピンという薬をご存知でしょうか。
アモキサンはうつ病、うつ状態に効果がある抗うつ剤で、三環系と呼ばれる、比較的古くからある抗うつ剤です。
執筆:藤森 桂 Kei Fujimori
***編集部より***
薬の作用・副作用については個人差があります。
服用にあたっては、必ず主治医や医療機関での診察の指示に従ってください。
このコラムは、あくまでもライター個人の経験に基づくお話です。
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アモキサンは本来、うつ病・うつ状態の治療薬で、私がかかっている双極性障害では使われない薬なのですが(双極性障害では本来抗うつ剤そのものを避けるべきですが、アモキサンは特に強すぎて躁になりやすいと言われます)私のうつ病相に効くのがこれしかなかったのです。
これなしではやる気が落ちてしまい、責任を持って仕事が出来ないというのが気持ちの上で大きかったです。
2022年、9月の末に診察を受けた時、最後に主治医がこう言いました。
「アモキサンが来年2月に製造中止になるから、離脱症状が出ないように、今から量を減らしていきましょう」
「はあ」
突然言われてわけが分かりませんでしたが、製造中止なら仕方がありません。
それにしても、何故製造中止になったのでしょう?
待合室でネットを繋いで調べてみると、販売元の製薬会社のサイトに行き当たり、そこにはこんなことが書いてありました。
アモキサンから「N-ニトロソアモキサピン」という物質が検出されたそうです。N-ニトロソアモキサピンはニトロソアミン類に分類される化合物で、長期間にわたって許容範囲を超えて摂取した場合、発がん性のリスクを高める可能性があるとされています。
ニトロソアミン類は自然界にも存在する物質ですが、それはごく微量だそうで「長期間にわたり継続して摂取することにより、がん発症リスクが増加するおそれがあります」とのことです。
正直に言うと、何でもっと早く分からなかったのか、という思いがありました。途中で中断もしていますが、約20年も飲み続けてきた薬です。
「私は将来がんになるのかな……(まだあくまで「可能性がある」という段階です!!)がんは苦しいらしいしなあ……」
こんなことを考えていると、心気妄想のような状態(未診断)になり、アモキサンのことばかりが気になって仕方がなくなってしまいました。
3週間後の診察で、私は主治医に開口一番に言いました。
「離脱症状は出ていないので、アモキサンを完全にやめたいです」
主治医は、これは調べて知っているな、というような雰囲気でしたが、中止にしてくれました。
私は発病から8年うつ病と診断されていたこともあって、過去には覚えているだけでもトフラニール、ルボックス、ドグマチール、ワイパックス、ジェイゾロフトなどといった抗うつ剤が交代で処方されていました。なぜかストラテラ(ADHDの薬)が出ていたこともありました。
それで、自分のうつ状態に合った薬がアモキサンとサインバルタだけだったので、本来の双極性障害の薬(リーマスなど)と併用する形で、そのまま飲んでいました。
私の場合、今回はアモキサンの代わりに、同じ三環系のトフラニールが出されることになりました。
今はトフラニールがまだ十分効いていないようで、うつ状態が続いています。うつだと仕事も遅れ気味で、非常にまずいです。幸いフリーランスなので、比較的調子が良い時でやりくりしています。
これからどうなるのか不安ではありますが、必要以上に恐れないで、新しい薬と共に、日々の生活を心穏やかに過ごすことを目指しています。
今回のことで、薬と毒は紙一重、というのを改めて感じさせられました。
もしアモキサンの中止が進んでいない当事者の方がおられたら、出来るだけ速やかに主治医と相談して、代わりの薬を見つけて、アモキサンの離脱症状が出ないように服用中止を目指されるのが、肉体的にも精神的にも良いと思います。
いずれにせよ、アモキサンは2023年2月には製造中止になります。でも主治医に無断で止めてしまうのはリスクが高いです。主治医とよく相談して、離脱症状を減らすようにしてください。
アモキサンを服用していた全ての当事者に、安全でご自分に合う抗うつ剤が見つかることを心から祈っています。
Text by
Kei Fujimori
藤森 桂
双極性障害II型と双極性障害急速交代型の間で様子見中のフリーライター。障害者手帳2級、厚生年金2級。仕事で社会参加し、障害の中でも人生を楽しみたい。私の唯一の職能であろう、ライターのお仕事は常時募集中。別ペンネームで書籍、電子書籍、雑誌、新聞、WEBなどで活動中。ここでは自分が当事者である、双極性障害のことを中心に発信していきたいです。