秘密にできない、自由に動けない！目の見えない私を困らせる切実な問題
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2022.11.29
「目が見えなくて一番困っていることは何ですか？」全盲歴の長い私は、そんな質問をよく受けます。今回は具体的に私がどんな場面でどのように困っているのか、紹介します。
執筆：山田 菜深子
「目が見えなくて一番困っていることは何ですか？」
全盲歴の長い私は、そんな質問をよく受けます。
便利な世の中になり、見えなくて困ることは少なくなってきました。それでも確かに、まだまだ壁にぶつかることはよくあるのが現実。この辺りについて伝えることには大きな意味があるかもしれません。
ということで、具体的にどんな場面でどのように困っているのか、紹介します。
それは口に出したくないんだけど……
昔に比べると、私たちの生活は確実によくなっていると思います。スマホなどの便利グッズや便利な制度がさまざまな問題を解決してくれるからです。
それでもまだまだ、悩みの種はいたるところに転がっているんですよねー。中でも大きいものを挙げるとすれば、「紙の書類問題」というのがあります。
ある日のこと。お世話になっているヘルパーさんに、突然聞かれたんです。「体重、何kgかな？」と。
た、体重？なんでそんなこと聞くの？私はうろたえました。そんなの秘密ですよ、秘密。
でも、言わなきゃいけなかったんです。紙の書類に記入する必要があったから。
紙の書類。これは厄介です。ペーパーレス化が進んできてはいますが、今でも少なくありません。
紙の場合、私は自分の手で記入することができないため、誰かに情報を伝えて代筆してもらうことになります。罰ゲームのように、恥ずかしいことだろうと何だろうと口に出さなければいけないわけです。
年齢を聞かれる、これくらいならまだいい。私は何歳になっても年齢は隠さないつもりだし。でもあんまり大きな声で「○○kgです」なんて口にしたくない。いや小さな声でも口にしたくない。
百歩譲って体重は我慢するとしても、それ以上にデリケートなこととなったらもうどうすればいいのか……。
オンラインで記入できる書類がどれほどありがたいか。そうつくづく思う私なのです。
思い立ったそのときに動き出したい
悩みの種はこれだけではありません。「困っていることは？」と聞かれて一番力強くアピールしたいのは、何と言っても「移動問題」です。
今日はいい天気。お出かけ日和だなあ。予定もないし、こんな日は1人でブラッと散歩したいなあ。知らない場所に行って、面白いものを探したりして。そうだ、京都、行こう！
私はそういう旅にあこがれています。でも、できない。思い立ったそのときに思い立った場所へ行く、それはなかなか手の届かない夢なんです。
1人で外を歩く。これはどうにかできます。地獄のような厳しい歩行訓練を受け、子どもの頃から白杖の使い方などを叩き込まれてきたから。ただ、安心して歩けるのは慣れた場所だけです。
それに、「慣れた場所であれば絶対大丈夫」とは言い切れない。体調がよくないとか、工事などで周囲の状況がいつもと違うとか、そういう些細なことですぐ、進むべき方向がわからなくなります。ちなみに私は迷子常習犯です。
また1人で歩いていると、あまり情報が得られないというのも残念なところ。「あ、いい匂い！」と近くにあるパン屋さんを発見することはできても、何という名前のパン屋さんなのか、どんな雰囲気のお店なのかなどはわからない。ちょっと損した気分になるんですよね。
仕方がないので1人での移動はあきらめて、ヘルパーさんなどにお願いする。そういう手もあります。
買い物でも、散歩でも、ヘルパーさんが一緒なら安心です。気になるパン屋さんを見つけたときには、そのお店について詳しく教えてもらえます。
ただその場合は、数日前には予定を立てておかなければいけない。「今すぐ来てください」というわけにはいきません。
もちろん、安心感など求めず「慣れない場所だけど迷いながら1人で行こう、冒険を楽しんじゃえ！」と思い切る選択肢もあるにはあります。ところが、これにはかなりの勇気とエネルギーが必要になります。私も10年前ならそれぐらいできたかもしれないけど、今はちょっと気が進まないんですよねー……。
技術の進歩に期待
心に秘めておきたいことを口にしなければいけないとしても、自由に移動ができないとしても、命に関わるというわけではありません。とは言っても私にとっては切実な問題。
近い将来、紙の書類に遭遇しない、見えなくても気軽に一人旅できる、そんな環境が整うことをただただ願っています。それに向けて、技術がさらに進歩しますように。
困っていること。小さなことを挙げ始めたらまだまだ出てきそうですが、今回はこれくらいにしておこうと思います。ここまで私の愚痴にお付き合いいただきありがとうございました。
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