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精神疾患者は子育てすべきでない!?産む、産まないの選択

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2023.1.18

SNSで「統合失調症の人は子供を持つべきでない」という意見を見かけました。

子供を産む・育てるのは健常者でも大変ですので、ハンデのある精神疾患者は尚更です。

果たして精神疾患者は子育てできない?すべきでないのでしょうか?

私は統合失調症を持つママで2人の娘がいます。今回は私の子育ての体験から考えたことをお話します。

執筆:大福 麦子 daifuku mugiko

夫は私に心の病があることを承知の上で結婚しました。

当時、私の統合失調症の症状は落ち着いており、妄想や幻聴といった症状も、意欲の低下や怠さなどの症状もありませんでした。

結婚してしばらくして、私は「自分は治ったのかもしれない」と勘違いし、医師と相談もせずに通院や服薬を勝手に辞めてしまいました。

今思うとなんて浅はか。若くて何も考えていなかったです。

そんな調子で、子供を持つことに対しても何の疑問も抱かず、順調に妊娠・出産しました。

大変さに気が付いたのは長女を産んで10ヶ月ほど経った後…。

私は慣れない育児から統合失調症を再発してしまったのです。

統合失調症の大変さを思い知った長女の育児

育児も家事も自分の世話すらできなくなり、長女を連れて実家で静養することになりました。通院と投薬も再開しました。

両親のいる実家と夫のいる自宅を行ったり来たりしながら、合計で2年程両親に支援してもらいながら育児をしました。ほとんど寝たきりの自分、何もしてやれない自分が情けなく悲しかったです。

何もできなくなった中で、一つだけ決めていたのはおむつ替えだけは自分でやること。

療養が必要な時期でしたが、娘の為にできることはやってあげたいと考え、集中力がなくても手が動作を覚えているおむつ替えだけならできると自分で決めました。

主人も仕事が休みの度に実家へ来てくれて、娘の世話を手伝ってくれました。

寝ている時間が多かったですが、私は家族の支援を受けて徐々に回復していきました。

幻聴や妄想の症状がようやく治まった頃、両親から離れて自宅で過ごすことに。

自宅に戻ってからは主人に家事を手伝ってもらいながら、私は長女の育児全般を担い、専念しました。

妄想や幻聴は治まりましたが、意欲の低下や、怠さ、気持ちの落ち込みなどの症状がある不安定な時期でした。十分なことはできなかったかもしれません。

洗濯物を干すだけでも大変で、洗濯物ハンガーの下に布団を敷いて、一つ干しては休み、一つ干しては休みを繰り返していたのを憶えています。

できることはなるべくやり、できないことは無理をしないで周りに助けを乞いました。

夫・両親・姉・親族・医師・保健師・友人…、いろいろな人に支えられながら、薄紙を剥ぐように少しずつ回復していきました。

そんな環境でも長女は元気にすくすくと成長しました。

決して完璧でも良い母でもなかったですが、両親や主人と共に長女の育児を乗り越えられたことが、私の中で大きな体験となりました。

産むべき?産まないべき?覚悟を決めた次女の出産

長女の出産から5年の間に、私は再び元気を取り戻しました。

長かった意欲の低下も治まり、病状も安定した頃、夫と相談して2人目を考えるようになりました。しかし、長女の時に統合失調症を再発した私です。2人目を考えて良いのだろうか?

自分の病気のことを調べ、病識を深めた私は「精神疾患で子供を持つ」ということは覚悟が必要だと考えるようになりました。

病気は遺伝するの?
薬の影響は大丈夫なの?
また再発したらどうするの?

それら一つ一つのことを主治医によく相談しました。夫や両親とも話し合いました。

2人目を考えるとしたら、絶対に病気を再発させないようにしなければなりません。

最悪のことを考えて、再発したとしても必要な助けや支援を受けられるように、家族や医師とよく話し合って、最善の準備をしました。

実母にもお願いして、産前産後合わせて2ヶ月間、私の住む家に来てもらうことにしました。

次女がもし健康に生まれてこなかったらということも考えました。

でも、思ったのです。

私だって健康な身ではありません。障害がある子を否定することは、自分自身を否定することになるのではないだろうかと。

我が子には幸せになってもらいたいし、苦労することを望んでいるわけではありません。

でも、私がそうであったように、たとえ障害があったとしても周りに支えられながら、幸せを得ることは可能ではないでしょうか。私たち夫婦がその支えになれば良いのではないかと考えました。

そうして、覚悟を決めて2人目を望みました。

精神疾患者の子育てに必要なもの

子育ては楽ではありません。

でも、精神疾患があっても症状が落ち着いていて、周りの支援があれば産むことも育てることも可能です。

自分の病気のこと、体調のこと、子育てのこと、子供を望んでいる人は是非自分の主治医によく相談してもらいたいです。そして、あらゆる支援の方法を考えてみてほしいです。

病気により育児や家事ができなくなった場合を考え、あらゆる手段を用意しておく、周りの理解と協力を得ておくことが必要だと思います。

大変になってしまうのは、何の協力も得られずに1人で抱え込んでしまう時です。

病気が悪化しても通院・投薬せず、周りに相談もできずに、育児を放棄したり虐待することにならないように。周りの支援と理解があれば、たとえ一時的に大変になってもきっと乗り越えていけます。

必要なのは「産むべきでない」という批判ではなく、適切な支援なのです。

そして、完璧な育児を目指す必要はありません。

できることをできる範囲で工夫をしながら、支援を受けながら、周りに相談しながらやっていけばよいのです。

そうして考えてみて「やっぱり私には産むのは無理」となっても、それは仕方ないことだと思います。

「産まない」選択をしてもあなたの価値は下がらない

様々な理由で「子供をつくらない」選択をすることもあると思います。

それもまた、自分の体調や周りの環境、そして子供のことを考えて決めた「母としての選択」だと私は思います。

精神疾患がある方がいろいろな事情を考えて「産まない」選択をしても、それは後ろ指をさされることではありません。本人たちが考えて決めることが大事です。

「産まない」選択をしたとしてもあなたの価値は下がらないと言いたいです。

家族の在り方や幸せの形は人それぞれです。家族の多様な在り方が受け入れられる世の中になってほしいと思います。

私の育児は病気のこともあって、大変でした。でも産んで後悔したことはありませんでした。

子供を望んでいる精神疾患者の多くが、「子育てできるだろうか?」「産んで良いのだろうか?」と悩んでいると思います。人によって病気の重い・軽いも様々だし、環境も違います。

周りの人は批判をするのではなく、子供を望む精神疾患者が安心して子育てできるように応援してあげてほしいです。

どんな人にも子供を望む権利があります。

障害の有無に関わらず、全ての人が幸せな育児ができるよう、必要な支援が必要な人に届くことを願っています。

統合失調症を患う2児の母です。日々病と向き合いながら、不登校の長女、境界知能の次女、健常者の夫と暮らしています。他に心疾患があり、少ない体力とバイタリティの中で何ができるか模索中。趣味はカフェ巡りと映画鑑賞。2022年9月よりwebライターの仕事をゆる~く始めました。

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